関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
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第一章『ヒナギク』partB
自分の唇に、他人の唇が重なっている。
一般的には「キス」や「接吻」と呼ばれる行動。
(そんなことは分かってるって!)
しかし、ハヤテの頭の中は絶賛混乱中だ。
だってそうだろう。
初対面の、しかも美少女にいきなり唇を重ねられたのだから。
状況がさっぱり分からない。
思考の整理がつかぬまま、互いの唇が離され、ヒナギクの照れ隠しのような上ずった声が響く。
「―――終わりましたぁ!!」
ヒナギクの顔は、相変わらず真っ赤である。
コルベールはそんなヒナギクに笑みを浮かべると、
「うむ。コントラクト・サーヴァントはきちんと出来たみたいだね」
そう、嬉しそうに言った。
「……私だってたまには上手く出来ます」
赤い顔のまま、ヒナギクが呟く。
「ホントにたまによね。ゼロのヒナギク」
それを見て、金髪巻き髪とそばかすを持った少女がヒナギクを嘲笑った。
「ま、平民だから『契約』出来たんだと思うけど」
その言葉に、ヒナギクは激昂した。
「ミスタ・コルベール! モンモランシーが私を侮辱しました!」
「何よ、ホントのことでしょ?」
「何がホントよ!?」
「まさか自覚してないの? うわ、ヒナギクアンタ、頭の中も『ゼロ』なんじゃない?」
「何ですって!?」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ」
コルベールが、言い争う二人を宥める。
その様子を、ハヤテはじっと見つめていた。
何が何だか未だに理解出来ないが、だからこそ、見ることしか出来ない。
そんなハヤテを、今まで体感したことのない程の熱が襲った。
「――――っ!?」
何の予兆もなくやって来た熱さに、混乱の最中にあった思考が止まった。
何だこれは。熱い、熱い。
その熱は、どうやら左手から発しているようだ。
「『ルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるから我慢して」
「ルーン……っ!?」
ヒナギクの言葉の意味はわからない。
しかしそれよりも、この左手の異常なまでの熱さの方がわからない。
「……あ」
原因不明の熱に悶えること数分。
その熱が、消えた。
終わった、のか……?
「何だったんだ一体……」
恐る恐る左手を見る。
今の熱がまるで嘘だったかのように、自分の左手はいつもの通りだった。
いや、正確には『いつもの通り』ではなかった。
左手の甲で、見たことのない文字が光っていた。
「? なんだこれ?」
「ふむ…。珍しいルーンだな」
気づかぬうちに傍に来ていたコルベールと呼ばれる男性が、ハヤテの左手を見ながら呟く。
「ルーン……?」
「まぁいいか……。さて、ミス・ヴァリエールの儀式も終わったし、教室に戻るぞ」
聞きなれない言葉にハヤテがコルベールに尋ねたが、コルベールは応えなかった。
生徒全員に言葉をかけると、ヒナギクを除く全員が宙に浮いた。
「―――――――は?」
無視されたことに苛立ちを覚えるよりも、眼前の状況にハヤテは再び混乱する。
人が、飛んでいる。
「ヒナギク、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
生徒たちは皆、各々にヒナギクに言葉を吐いて飛んでいく。
残されたのは、ヒナギクとハヤテだけになった。
「――――はぁ……」
二人きりになると、ヒナギクは小さくため息をついてハヤテに向き合った。
「迷惑かけたわね」
「は? ……え?」
いきなりそんなこと言われても、ハヤテの頭の中は混乱中だ。
「あの……いきなりそんなこと言われても、何が何だかもうさっぱりで……というか、ここ、どこですか? 天国?」
その混乱を少しでも治めようと、とりあえずハヤテはヒナギクに尋ねる。
そもそもここはどこで、自分はどうなったのか。
「ここはトリスティン。で、この建物は有名なトリスティン魔法学院」
「トリスティン……魔法学院?」
一度も耳にしたことのない地名だった。
そして……魔法。
「魔法……」
「うん」
「じゃあさっき人が飛んでったあれも…」
「魔法よ。 当たり前じゃない」
「じゃあここはやっぱり天国じゃない……」
「テンゴク? それ何処の国?」
「……マジですか」
どうやら本当に、本当に信じられないが、ここは死後の世界でもなければ、自分は死んでもいないらしい。
そんなハヤテを、ヒナギクが不思議そうに見つめる。
「貴方どこの平民? どこの出身? というか、本当に平民なの?」
「平民といえば平民ですけど……」
借金だらけ、という付加価値がつくが(実際は付加ではなく『負荷』である)。
「でも、多分貴女の思っている平民と、僕が思っている平民は違うと思いますよ」
「ふぅん……そうなんだ。でも確かに、見たことない服を着てるし……」
ハヤテの言葉にヒナギクは「まぁいいわ」と相槌を打つと、自分と唇を重ねた後とは思えないほど毅然としながら、己の名前を言った。
「私の名前はヒナギク・ル・フォーン・ド・ラ・ヴァリエール。今からあなたの主人になるわ」
自分がどうなったのか、これからどうなるのか、ハヤテには何も理解できなかったが。
その姿、その美しさに。
「よろしく」
思わず―――見蕩れていた。
「あ……よろしく……お願いします……」
これが、ハヤテの。
死ぬはずだった綾崎ハヤテの、不思議で騒がしい、第二の人生の始まり。
そしてかけがえの無い存在との出会いだった。
第二話へ
自分の唇に、他人の唇が重なっている。
一般的には「キス」や「接吻」と呼ばれる行動。
(そんなことは分かってるって!)
しかし、ハヤテの頭の中は絶賛混乱中だ。
だってそうだろう。
初対面の、しかも美少女にいきなり唇を重ねられたのだから。
状況がさっぱり分からない。
思考の整理がつかぬまま、互いの唇が離され、ヒナギクの照れ隠しのような上ずった声が響く。
「―――終わりましたぁ!!」
ヒナギクの顔は、相変わらず真っ赤である。
コルベールはそんなヒナギクに笑みを浮かべると、
「うむ。コントラクト・サーヴァントはきちんと出来たみたいだね」
そう、嬉しそうに言った。
「……私だってたまには上手く出来ます」
赤い顔のまま、ヒナギクが呟く。
「ホントにたまによね。ゼロのヒナギク」
それを見て、金髪巻き髪とそばかすを持った少女がヒナギクを嘲笑った。
「ま、平民だから『契約』出来たんだと思うけど」
その言葉に、ヒナギクは激昂した。
「ミスタ・コルベール! モンモランシーが私を侮辱しました!」
「何よ、ホントのことでしょ?」
「何がホントよ!?」
「まさか自覚してないの? うわ、ヒナギクアンタ、頭の中も『ゼロ』なんじゃない?」
「何ですって!?」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ」
コルベールが、言い争う二人を宥める。
その様子を、ハヤテはじっと見つめていた。
何が何だか未だに理解出来ないが、だからこそ、見ることしか出来ない。
そんなハヤテを、今まで体感したことのない程の熱が襲った。
「――――っ!?」
何の予兆もなくやって来た熱さに、混乱の最中にあった思考が止まった。
何だこれは。熱い、熱い。
その熱は、どうやら左手から発しているようだ。
「『ルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるから我慢して」
「ルーン……っ!?」
ヒナギクの言葉の意味はわからない。
しかしそれよりも、この左手の異常なまでの熱さの方がわからない。
「……あ」
原因不明の熱に悶えること数分。
その熱が、消えた。
終わった、のか……?
「何だったんだ一体……」
恐る恐る左手を見る。
今の熱がまるで嘘だったかのように、自分の左手はいつもの通りだった。
いや、正確には『いつもの通り』ではなかった。
左手の甲で、見たことのない文字が光っていた。
「? なんだこれ?」
「ふむ…。珍しいルーンだな」
気づかぬうちに傍に来ていたコルベールと呼ばれる男性が、ハヤテの左手を見ながら呟く。
「ルーン……?」
「まぁいいか……。さて、ミス・ヴァリエールの儀式も終わったし、教室に戻るぞ」
聞きなれない言葉にハヤテがコルベールに尋ねたが、コルベールは応えなかった。
生徒全員に言葉をかけると、ヒナギクを除く全員が宙に浮いた。
「―――――――は?」
無視されたことに苛立ちを覚えるよりも、眼前の状況にハヤテは再び混乱する。
人が、飛んでいる。
「ヒナギク、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」
生徒たちは皆、各々にヒナギクに言葉を吐いて飛んでいく。
残されたのは、ヒナギクとハヤテだけになった。
「――――はぁ……」
二人きりになると、ヒナギクは小さくため息をついてハヤテに向き合った。
「迷惑かけたわね」
「は? ……え?」
いきなりそんなこと言われても、ハヤテの頭の中は混乱中だ。
「あの……いきなりそんなこと言われても、何が何だかもうさっぱりで……というか、ここ、どこですか? 天国?」
その混乱を少しでも治めようと、とりあえずハヤテはヒナギクに尋ねる。
そもそもここはどこで、自分はどうなったのか。
「ここはトリスティン。で、この建物は有名なトリスティン魔法学院」
「トリスティン……魔法学院?」
一度も耳にしたことのない地名だった。
そして……魔法。
「魔法……」
「うん」
「じゃあさっき人が飛んでったあれも…」
「魔法よ。 当たり前じゃない」
「じゃあここはやっぱり天国じゃない……」
「テンゴク? それ何処の国?」
「……マジですか」
どうやら本当に、本当に信じられないが、ここは死後の世界でもなければ、自分は死んでもいないらしい。
そんなハヤテを、ヒナギクが不思議そうに見つめる。
「貴方どこの平民? どこの出身? というか、本当に平民なの?」
「平民といえば平民ですけど……」
借金だらけ、という付加価値がつくが(実際は付加ではなく『負荷』である)。
「でも、多分貴女の思っている平民と、僕が思っている平民は違うと思いますよ」
「ふぅん……そうなんだ。でも確かに、見たことない服を着てるし……」
ハヤテの言葉にヒナギクは「まぁいいわ」と相槌を打つと、自分と唇を重ねた後とは思えないほど毅然としながら、己の名前を言った。
「私の名前はヒナギク・ル・フォーン・ド・ラ・ヴァリエール。今からあなたの主人になるわ」
自分がどうなったのか、これからどうなるのか、ハヤテには何も理解できなかったが。
その姿、その美しさに。
「よろしく」
思わず―――見蕩れていた。
「あ……よろしく……お願いします……」
これが、ハヤテの。
死ぬはずだった綾崎ハヤテの、不思議で騒がしい、第二の人生の始まり。
そしてかけがえの無い存在との出会いだった。
第二話へ
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皆様こんばんわ。
関ヶ原です。
七夕から四日も過ぎた今頃に、七夕ネタをうpしようと思います。
深夜のテンションで書いたので、ひょっとしたら誤字脱字があるかもしれません。
それ以上に、内容が、文章が……分かり辛い(個人的に)。
分かってもらえるように書いたとは思うんですが、自分でも激しく心配です。
日本語でおk、とか書かれてたらアワワワワってなります。
そのぐらいに不安です。
短冊に願い事書くなら『文章力が欲しい』と『就活のときちゃんと内定貰えます様に』で決まりです。
作中でも書いたんですが、願いって自分で叶えるから願いなんで。
自力で叶えちゃろうと思います。
それでは久方の更新になってしまいましたが、よければ見てやってください。
コメントとかあると嬉しいです。
それではどうぞ~☆
『願うこと、叶えること』
七月七日。
七月の初旬。
節日。
織姫と彦星が年に一度会うことの出来る日。
七夕。
だからといって本日、七夕にクラスで笹に短冊を吊るしましょう、なんてイベントは白皇学院にはない。
いや、正確には、高校生にもなっては、ない。
白皇学院の初等部や中等部でも、短冊に願いごとを書いて吊るしているクラスなど数えるくらいらしい。
にも関わらず、ここ桂雪路が担任を務めるクラス――ハヤテとヒナギクのクラスだ――では、何を血迷ったのか、クラス全員が短冊に願いごとを書いている真っ最中であった。
「……高校生にもなって短冊にお願い事だなんて……何考えてるんだ雪路は」
「にゃはは……でも面白そうじゃない?」
「それはお前だけだ、泉」
美希と理沙のため息交じりの言葉も、頷きたくなる。
わざわざ世界史の授業を一時間潰し短冊に願い事など、ゆとり教育にも程がある。
ゆとりの代表といっても過言ではない生徒会の三馬鹿娘、そのうち二人もがうんざりするのだから、雪路の所業は相当なのだろう。
授業が潰れる嬉しさよりも、恥ずかしさが勝る。
「願い事なんて何も思い浮かばないぞ……」
「奇遇だな、私もだ」
「夢がないなぁ二人とも」
そんな三人娘が短冊にそれぞれの思いを述べる傍ら、ヒナギクとハヤテも各々の願いに頭を悩ましている最中であった。
「悩むわね……」
「悩みますね……」
短冊に願い事を書くこと自体に不満があるわけではない。
ただ、何を書けばよいのかわからないのだ。
「願い、ねぇ……ハヤテ君は何かある?」
「そうですねぇ……これと言っては何も……」
ヒナギクの言葉にハヤテが答え、二人そろって溜息を吐く。
元々そんなに欲のない二人だけに、急に願いごとを書けと言われても困るのであった。
「いきなり願いごとを書けって言われても難しいんですよね」
「私も。願うくらいなら自分で叶えるわ」
「あはは。ヒナギクさんらしいですね」
ふん、と(悲しいくらいに小さな)胸を張るヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは伊澄たちと共にいるナギの方を見た。
「お嬢様たちはどうなんでしょうかね?」
「ナギ?」
「はい。お嬢様ならどんなこと書くのかな、と思いまして」
「なるほど。確かにちょっと気になるかも」
「ええ。それにほら、参考になるかもしれないじゃないですか、願い事の」
そう言って、ハヤテとヒナギクはナギたちの方に耳を傾ける。
それほど距離が離れていないためか、楽しそうなナギたちの会話が耳に入ってくる。
『伊澄はなんて書いたんだ?』
『え? 私は……母がもっとしっかりしますように、って……』
『……その願い、家族全員が、ってのに直したほうが良いと思うぞ』
『? 私はしっかりしてるから大丈夫……。それよりナギは? なんて書いたの……?』
『私か? 私は勿論、私の漫画が一兆冊売れますように、だ!』
『それなら願わなくても叶うと思う……。ナギの漫画面白いから……』
『む? そうか! でもまぁこれで良いや。願っておいて損はないしな』
『そうね……』
「…………」
「…………」
耳に入ってくる会話に、二人の反応は、無言。
ひたすら、無言だった。
「…………」
「…………」
ボケ役二人によるボケボケな楽しげな様子に、ツッコむことが出来ないのである。
「……参考にはならなさそうね」
「ですね……」
長い無言の後分かったことは、他人の願いは参考にならない、ということだった。
「結局自分で考えるしかないみたいですね」
「まぁそれが普通なんだろうけど」
短冊と向き合い、二人はまた溜息を吐いた。
眼前の細長い紙には、相変わらず何も書かれていない。
右手のペンを徒に動かすだけ。
「本当、なんて書けばいいのかしら?」
ヒナギクの呟きに、そうですね、とハヤテが口を開く。
「お嬢様が真人間になりますように、とか?」
「あの子たちが真面目に仕事をする、とか?」
「…………」
「…………」
二度目の沈黙。
「……それは願っても無駄な気がします」
「奇遇ね。私も同じこと思った」
そして三度目の溜息。
どうしよう。願い事が何もない。
余りにも願いのない自分自身に、ハヤテとヒナギクは段々頭痛がしてきた。
「私達ってこんなに願望がない人間だったのね……」
「僕はともかく……ヒナギクさんは願わずとも自力で叶えますからね」
「そんなことないわよ。私だって出来ないこと、一杯あるんだから」
買い被りすぎよ、と言ったところで、ヒナギクはふと、思った。
「自力で叶える……?」
「? どうしました?」
「いや、さっき私、願うくらいなら自力で叶えるって言ったじゃない?」
「ええ、言ってましたね」
そういえば、とハヤテは頷く。
「それが?」
「願うくらいなら自力で叶えるって、なんか矛盾してると思ったのよ」
「矛盾?」
「うん。自分で叶えるって言ってる時点で、もう願ってるわけなのよ」
ヒナギクの言葉にハヤテは、なるほど、と納得する。
『叶える』という言葉は『願いなどを自分の力で実現する』という意味だ。
つまり、『願い』がなければ、『叶える』という行動は出来ない。
『叶える』という言葉を用いるには、『願い』という大前提が必要なのだ。
「じゃあつまり……」
「そう。私たちが『叶えよう』と思ったことが願いなのよ」
「……なんだか凄く当たり前のことのような気がしてならないですね」
「奇遇ね。私もよ……というか、物凄く当たり前のことよね、実際」
ヒナギクは苦笑する。
「凄く馬鹿なことに頭抱えてたみたいね、私たち」
「そうですね」
その苦笑交じりのヒナギクの言葉に、ハヤテは笑って答えた。
「叶えようと思ったことを書けばいいんですもんね」
「そういうことね」
先ほどより、随分と頭が軽くなった気がする。
「叶えたいこと……」
「私は……うん、これしかないわ」
「え? もう決めたんですか?」
「勿論よ」
力強く頷いたヒナギクの願いが気になって、ハヤテはヒナギクの短冊を覗いた。
先ほどまで何も書かれていなかったその紙には―――。
『ハヤテ君とずっと一緒にいる!』
「――――はは」
「何よその笑いは」
「いえ、これは……最高の願いごとだな、と。ただ」
ならば、自分の願いもこれしかない。
すらすら、と意味もなく動かすしかなかった右手を、今度はしっかりと意味をもってハヤテは動かす。
白紙の短冊に、ようやく、力強い文字が書かれた。
その短冊をヒナギクへ見せ、笑顔でハヤテは言った。
「―――その願いは、一人では叶えられないでしょう?」
『ずっとヒナギクさんの傍にいる』
それが、ハヤテの短冊に書かれていた宣言とも言える願い。
ヒナギクの願いはヒナギク一人では叶えられない。
自分がヒナギクの傍らにいることで初めて、『一緒にいる』というヒナギクの願いが叶うのだから。
太陽がなければ月が輝けないように。
太陽があるからこそ、月は輝ける。
自分が傍にいる限り、ヒナギクは『ずっと』一緒にいられるよう努力する。努力出来る。輝ける。
そしてハヤテの願いも、ヒナギクがいなければ叶えることが出来ないし、叶えるための努力をすることが出来ない。
「二人で、二人の願いごとを叶えましょう」
「……あは。そうね、そうよね」
年に一度しか会うことの出来ない織姫と彦星のような関係では駄目なのだ。
遠く離れていても心は……そんな事では満たされない。
心も身体も常に傍に。
永久に傍に。
「ふふ。長い願い事になりそうね」
「叶えても終わらない願い事ですからね」
「『ずっと』、だからね」
「『ずっと』、ですからね」
そう言ってハヤテとヒナギクは互いに顔を見合わせると、笑った。
随分と気の遠くなる願いをしたものだ。
死ぬまで、ではなく、ずっと。
死後以降も続く、永遠の願い事。
終わりのない願い事。
「取り敢えず、短冊を吊るしてきましょうか」
「そうね、行きましょう」
「はい」
その願い事が書かれた短冊を手に持ち、ハヤテとヒナギクは笹の方へと歩き始める。
「死んだ後も願い事が続くなんて……とんだ人生縛りプレイよね」
「全くですね」
寄り添うように会話する二人のその姿は、
「まぁ、クリアする自信はあるんですけど」
「あら奇遇ね。私もクリアする自信があるわ」
今夜、幾度目の再開を遂げるであろう彦星と織姫のように、幸せそうだった。
End
関ヶ原です。
七夕から四日も過ぎた今頃に、七夕ネタをうpしようと思います。
深夜のテンションで書いたので、ひょっとしたら誤字脱字があるかもしれません。
それ以上に、内容が、文章が……分かり辛い(個人的に)。
分かってもらえるように書いたとは思うんですが、自分でも激しく心配です。
日本語でおk、とか書かれてたらアワワワワってなります。
そのぐらいに不安です。
短冊に願い事書くなら『文章力が欲しい』と『就活のときちゃんと内定貰えます様に』で決まりです。
作中でも書いたんですが、願いって自分で叶えるから願いなんで。
自力で叶えちゃろうと思います。
それでは久方の更新になってしまいましたが、よければ見てやってください。
コメントとかあると嬉しいです。
それではどうぞ~☆
『願うこと、叶えること』
七月七日。
七月の初旬。
節日。
織姫と彦星が年に一度会うことの出来る日。
七夕。
だからといって本日、七夕にクラスで笹に短冊を吊るしましょう、なんてイベントは白皇学院にはない。
いや、正確には、高校生にもなっては、ない。
白皇学院の初等部や中等部でも、短冊に願いごとを書いて吊るしているクラスなど数えるくらいらしい。
にも関わらず、ここ桂雪路が担任を務めるクラス――ハヤテとヒナギクのクラスだ――では、何を血迷ったのか、クラス全員が短冊に願いごとを書いている真っ最中であった。
「……高校生にもなって短冊にお願い事だなんて……何考えてるんだ雪路は」
「にゃはは……でも面白そうじゃない?」
「それはお前だけだ、泉」
美希と理沙のため息交じりの言葉も、頷きたくなる。
わざわざ世界史の授業を一時間潰し短冊に願い事など、ゆとり教育にも程がある。
ゆとりの代表といっても過言ではない生徒会の三馬鹿娘、そのうち二人もがうんざりするのだから、雪路の所業は相当なのだろう。
授業が潰れる嬉しさよりも、恥ずかしさが勝る。
「願い事なんて何も思い浮かばないぞ……」
「奇遇だな、私もだ」
「夢がないなぁ二人とも」
そんな三人娘が短冊にそれぞれの思いを述べる傍ら、ヒナギクとハヤテも各々の願いに頭を悩ましている最中であった。
「悩むわね……」
「悩みますね……」
短冊に願い事を書くこと自体に不満があるわけではない。
ただ、何を書けばよいのかわからないのだ。
「願い、ねぇ……ハヤテ君は何かある?」
「そうですねぇ……これと言っては何も……」
ヒナギクの言葉にハヤテが答え、二人そろって溜息を吐く。
元々そんなに欲のない二人だけに、急に願いごとを書けと言われても困るのであった。
「いきなり願いごとを書けって言われても難しいんですよね」
「私も。願うくらいなら自分で叶えるわ」
「あはは。ヒナギクさんらしいですね」
ふん、と(悲しいくらいに小さな)胸を張るヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは伊澄たちと共にいるナギの方を見た。
「お嬢様たちはどうなんでしょうかね?」
「ナギ?」
「はい。お嬢様ならどんなこと書くのかな、と思いまして」
「なるほど。確かにちょっと気になるかも」
「ええ。それにほら、参考になるかもしれないじゃないですか、願い事の」
そう言って、ハヤテとヒナギクはナギたちの方に耳を傾ける。
それほど距離が離れていないためか、楽しそうなナギたちの会話が耳に入ってくる。
『伊澄はなんて書いたんだ?』
『え? 私は……母がもっとしっかりしますように、って……』
『……その願い、家族全員が、ってのに直したほうが良いと思うぞ』
『? 私はしっかりしてるから大丈夫……。それよりナギは? なんて書いたの……?』
『私か? 私は勿論、私の漫画が一兆冊売れますように、だ!』
『それなら願わなくても叶うと思う……。ナギの漫画面白いから……』
『む? そうか! でもまぁこれで良いや。願っておいて損はないしな』
『そうね……』
「…………」
「…………」
耳に入ってくる会話に、二人の反応は、無言。
ひたすら、無言だった。
「…………」
「…………」
ボケ役二人によるボケボケな楽しげな様子に、ツッコむことが出来ないのである。
「……参考にはならなさそうね」
「ですね……」
長い無言の後分かったことは、他人の願いは参考にならない、ということだった。
「結局自分で考えるしかないみたいですね」
「まぁそれが普通なんだろうけど」
短冊と向き合い、二人はまた溜息を吐いた。
眼前の細長い紙には、相変わらず何も書かれていない。
右手のペンを徒に動かすだけ。
「本当、なんて書けばいいのかしら?」
ヒナギクの呟きに、そうですね、とハヤテが口を開く。
「お嬢様が真人間になりますように、とか?」
「あの子たちが真面目に仕事をする、とか?」
「…………」
「…………」
二度目の沈黙。
「……それは願っても無駄な気がします」
「奇遇ね。私も同じこと思った」
そして三度目の溜息。
どうしよう。願い事が何もない。
余りにも願いのない自分自身に、ハヤテとヒナギクは段々頭痛がしてきた。
「私達ってこんなに願望がない人間だったのね……」
「僕はともかく……ヒナギクさんは願わずとも自力で叶えますからね」
「そんなことないわよ。私だって出来ないこと、一杯あるんだから」
買い被りすぎよ、と言ったところで、ヒナギクはふと、思った。
「自力で叶える……?」
「? どうしました?」
「いや、さっき私、願うくらいなら自力で叶えるって言ったじゃない?」
「ええ、言ってましたね」
そういえば、とハヤテは頷く。
「それが?」
「願うくらいなら自力で叶えるって、なんか矛盾してると思ったのよ」
「矛盾?」
「うん。自分で叶えるって言ってる時点で、もう願ってるわけなのよ」
ヒナギクの言葉にハヤテは、なるほど、と納得する。
『叶える』という言葉は『願いなどを自分の力で実現する』という意味だ。
つまり、『願い』がなければ、『叶える』という行動は出来ない。
『叶える』という言葉を用いるには、『願い』という大前提が必要なのだ。
「じゃあつまり……」
「そう。私たちが『叶えよう』と思ったことが願いなのよ」
「……なんだか凄く当たり前のことのような気がしてならないですね」
「奇遇ね。私もよ……というか、物凄く当たり前のことよね、実際」
ヒナギクは苦笑する。
「凄く馬鹿なことに頭抱えてたみたいね、私たち」
「そうですね」
その苦笑交じりのヒナギクの言葉に、ハヤテは笑って答えた。
「叶えようと思ったことを書けばいいんですもんね」
「そういうことね」
先ほどより、随分と頭が軽くなった気がする。
「叶えたいこと……」
「私は……うん、これしかないわ」
「え? もう決めたんですか?」
「勿論よ」
力強く頷いたヒナギクの願いが気になって、ハヤテはヒナギクの短冊を覗いた。
先ほどまで何も書かれていなかったその紙には―――。
『ハヤテ君とずっと一緒にいる!』
「――――はは」
「何よその笑いは」
「いえ、これは……最高の願いごとだな、と。ただ」
ならば、自分の願いもこれしかない。
すらすら、と意味もなく動かすしかなかった右手を、今度はしっかりと意味をもってハヤテは動かす。
白紙の短冊に、ようやく、力強い文字が書かれた。
その短冊をヒナギクへ見せ、笑顔でハヤテは言った。
「―――その願いは、一人では叶えられないでしょう?」
『ずっとヒナギクさんの傍にいる』
それが、ハヤテの短冊に書かれていた宣言とも言える願い。
ヒナギクの願いはヒナギク一人では叶えられない。
自分がヒナギクの傍らにいることで初めて、『一緒にいる』というヒナギクの願いが叶うのだから。
太陽がなければ月が輝けないように。
太陽があるからこそ、月は輝ける。
自分が傍にいる限り、ヒナギクは『ずっと』一緒にいられるよう努力する。努力出来る。輝ける。
そしてハヤテの願いも、ヒナギクがいなければ叶えることが出来ないし、叶えるための努力をすることが出来ない。
「二人で、二人の願いごとを叶えましょう」
「……あは。そうね、そうよね」
年に一度しか会うことの出来ない織姫と彦星のような関係では駄目なのだ。
遠く離れていても心は……そんな事では満たされない。
心も身体も常に傍に。
永久に傍に。
「ふふ。長い願い事になりそうね」
「叶えても終わらない願い事ですからね」
「『ずっと』、だからね」
「『ずっと』、ですからね」
そう言ってハヤテとヒナギクは互いに顔を見合わせると、笑った。
随分と気の遠くなる願いをしたものだ。
死ぬまで、ではなく、ずっと。
死後以降も続く、永遠の願い事。
終わりのない願い事。
「取り敢えず、短冊を吊るしてきましょうか」
「そうね、行きましょう」
「はい」
その願い事が書かれた短冊を手に持ち、ハヤテとヒナギクは笹の方へと歩き始める。
「死んだ後も願い事が続くなんて……とんだ人生縛りプレイよね」
「全くですね」
寄り添うように会話する二人のその姿は、
「まぁ、クリアする自信はあるんですけど」
「あら奇遇ね。私もクリアする自信があるわ」
今夜、幾度目の再開を遂げるであろう彦星と織姫のように、幸せそうだった。
End
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