関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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どうもこんばんわ、関ヶ原です。
新作が出来ました。
ちょっと早めの更新に自分でも驚きです。
今回のネタは特になく、本当フィーリングで書いてます。
夜中、部屋の窓を開けて浮かんだ小説なので……。
アイカは今回出てこないのですが、設定上の関係で部類をあやさきけにさせていただきました。ご了承ください。
所々不明な点があるかもしれませんが、もう皆さん慣れましたよね(笑
早く自信をもって紹介出来る小説を書きたいです……道は遠いなぁ。
そんな感じなのですが、良かったら読んでやってください。
ではどうぞ~ ノシ
『九月夜』
虫の声につられるように、部屋の窓を開けてみた。
蒸し暑い風ばかりが入ってきた八月に比べ、開いた窓の外からは、涼しげな虫の声と、肌寒さを感じるくらいの涼しい夜風が入ってきて私の頬を撫でる。
「随分と涼しくなったわね……」
私の呟きは、虫の声に紛れて消えた。
それが少しだけ、面白い。
「ん? どうしたのヒナギク」
私だけにしか分からないことで小さく笑っていると、ハヤテが話しかけてきた。
寝室は一緒なのだけど、まだ起きていたらしい。
「ハヤテ……まだ起きてたんだ」
「まだ十二時だよ?」
「『もう』の間違いじゃなくて?」
「執事の夜は遅いんだよ」
「あら? 執事の妻の夜は早いけど?」
「そう言っておきながら、まだ起きてるじゃないか」
私の言葉にハヤテは苦笑を浮かべると、窓枠に身体を寄せる私の隣に来た。
「で? 何一人で笑ってたの?」
どうやら私の笑い声を聞かれてたらしい。
ちょっぴり恥ずかしい。
「いや……大した理由はないんけどね」
「そうなの?」
「ええ」
大した理由はないけれど、つまらない理由はあった。
それをハヤテに言っても、ハヤテは分かってくれるのだろうか。
言うか言うまいか迷って、ハヤテを見る。
「でも……本当に涼しくなったよね。虫の鳴き声も綺麗だ」
「ええ、その通りだわ」
私と同じように窓に目を向け、私の感じた夜風を、ハヤテも感じているのだろう。
「…………」
その横顔を見て、つまらない理由を口に出そう、と思った。
「……あのね、ハヤテ」
「ん?」
「さっき私が笑った理由なんだけど」
聞いてくれる?
そんな視線をハヤテに向けると、いいよ、とハヤテは微笑んだ。
「本当につまらないことなんだけどね」
「うん」
「私、窓を開けて『涼しい』って言ったのよ。笑う前に」
「それで?」
「その私の声がね、虫の声より小さかったから、思わず笑っちゃったのよ」
それでお仕舞い。
本当につまらない理由。
人間よりもちっぽけで儚い存在である虫たちが、私の呟きよりも大きな声で鳴いていることが、なんだか私には面白かったのだ。
「あんなに小さいのに、鳴き声だけは私よりも大きいなんて面白いじゃない」
……いや、違う。
「ね、ハヤテもそう思わない?」
「……そうだね」
本当に可笑しいと思ったのは。
「でもね、もっと可笑しいのはね」
小さな身体を精一杯揺らして、自分の声よりも大きな音を奏でる。
なんだかそれを、羨ましいと思ってしまった自分だった。
「私、虫に『負けた』って思っちゃったのよ」
いくら負けず嫌いでも程度ってものがあるでしょ、と私は苦笑を浮かべた。
「それが馬鹿らしくてね、つい笑っちゃった」
「へぇ……。でも」
私の言葉にハヤテは納得したように頷くと、
「良いんじゃないかな、別に負けても」
そう言葉を続けた。
「え?」
「確かにさ、虫に負けたらまぁ屈辱的な気持ちにはなると思うよ。誰でもさ」
「いや……そこまでは言ってないけれど」
「まぁいいから聞いて」
私の言葉には答えず、ハヤテは私の肩に手を置いて、視線を再び窓の外へと向ける。
「でも、さ」
その仕草に年甲斐もなく胸を高鳴らせていると、ハヤテは私の方を向いて、言った。
「こんなに綺麗な音に負けるなら、負けることも別に悪くないんじゃないかな」
「…………」
考え方の違いもあるだろうが。
「ヒナギクはそう思わない?」
本当にどうしてこの人はそういう事を、そんな顔で言えるのだろうか。
「……えぇ」
そんな顔で言われたら、頷くことしか出来ない。
「本当にハヤテって……」
「ん?」
「なんでもない」
本当に、私の夫は最高だ。
こうして結婚できて本当に幸せだと思う。
「それよりハヤテ、もう少し窓開けててもいい?」
でもその言葉だけは、言わないでおこう。
返しの言葉でどんな恥ずかしいことを言われるか知ったものじゃないから。
だから虫の声よりも小さな、もっと小さな私の心の声でだけ言っておくことにする。
「僕は全然構わないよ」
「良かった」
それよりも、今は。
私は身体をハヤテに預けながら、言った。
「もう少しだけ、この虫たちの声を聞いていたいから」
「……その意見には凄く同感」
意識を外へ向けると、虫たちの涼やかな声が再び耳に入ってきた。
思わず羨んでしまうくらいの、綺麗な音。
その音をその身で感じながら、私は思う。
この音に負けるのならそれは……それは確かに悪くない気分だと。
すっかり涼しくなった九月の夜。
虫たちの小さな演奏会を聞きながら、私とハヤテの静かな夜は更けていく。
End
新作が出来ました。
ちょっと早めの更新に自分でも驚きです。
今回のネタは特になく、本当フィーリングで書いてます。
夜中、部屋の窓を開けて浮かんだ小説なので……。
アイカは今回出てこないのですが、設定上の関係で部類をあやさきけにさせていただきました。ご了承ください。
所々不明な点があるかもしれませんが、もう皆さん慣れましたよね(笑
早く自信をもって紹介出来る小説を書きたいです……道は遠いなぁ。
そんな感じなのですが、良かったら読んでやってください。
ではどうぞ~ ノシ
『九月夜』
虫の声につられるように、部屋の窓を開けてみた。
蒸し暑い風ばかりが入ってきた八月に比べ、開いた窓の外からは、涼しげな虫の声と、肌寒さを感じるくらいの涼しい夜風が入ってきて私の頬を撫でる。
「随分と涼しくなったわね……」
私の呟きは、虫の声に紛れて消えた。
それが少しだけ、面白い。
「ん? どうしたのヒナギク」
私だけにしか分からないことで小さく笑っていると、ハヤテが話しかけてきた。
寝室は一緒なのだけど、まだ起きていたらしい。
「ハヤテ……まだ起きてたんだ」
「まだ十二時だよ?」
「『もう』の間違いじゃなくて?」
「執事の夜は遅いんだよ」
「あら? 執事の妻の夜は早いけど?」
「そう言っておきながら、まだ起きてるじゃないか」
私の言葉にハヤテは苦笑を浮かべると、窓枠に身体を寄せる私の隣に来た。
「で? 何一人で笑ってたの?」
どうやら私の笑い声を聞かれてたらしい。
ちょっぴり恥ずかしい。
「いや……大した理由はないんけどね」
「そうなの?」
「ええ」
大した理由はないけれど、つまらない理由はあった。
それをハヤテに言っても、ハヤテは分かってくれるのだろうか。
言うか言うまいか迷って、ハヤテを見る。
「でも……本当に涼しくなったよね。虫の鳴き声も綺麗だ」
「ええ、その通りだわ」
私と同じように窓に目を向け、私の感じた夜風を、ハヤテも感じているのだろう。
「…………」
その横顔を見て、つまらない理由を口に出そう、と思った。
「……あのね、ハヤテ」
「ん?」
「さっき私が笑った理由なんだけど」
聞いてくれる?
そんな視線をハヤテに向けると、いいよ、とハヤテは微笑んだ。
「本当につまらないことなんだけどね」
「うん」
「私、窓を開けて『涼しい』って言ったのよ。笑う前に」
「それで?」
「その私の声がね、虫の声より小さかったから、思わず笑っちゃったのよ」
それでお仕舞い。
本当につまらない理由。
人間よりもちっぽけで儚い存在である虫たちが、私の呟きよりも大きな声で鳴いていることが、なんだか私には面白かったのだ。
「あんなに小さいのに、鳴き声だけは私よりも大きいなんて面白いじゃない」
……いや、違う。
「ね、ハヤテもそう思わない?」
「……そうだね」
本当に可笑しいと思ったのは。
「でもね、もっと可笑しいのはね」
小さな身体を精一杯揺らして、自分の声よりも大きな音を奏でる。
なんだかそれを、羨ましいと思ってしまった自分だった。
「私、虫に『負けた』って思っちゃったのよ」
いくら負けず嫌いでも程度ってものがあるでしょ、と私は苦笑を浮かべた。
「それが馬鹿らしくてね、つい笑っちゃった」
「へぇ……。でも」
私の言葉にハヤテは納得したように頷くと、
「良いんじゃないかな、別に負けても」
そう言葉を続けた。
「え?」
「確かにさ、虫に負けたらまぁ屈辱的な気持ちにはなると思うよ。誰でもさ」
「いや……そこまでは言ってないけれど」
「まぁいいから聞いて」
私の言葉には答えず、ハヤテは私の肩に手を置いて、視線を再び窓の外へと向ける。
「でも、さ」
その仕草に年甲斐もなく胸を高鳴らせていると、ハヤテは私の方を向いて、言った。
「こんなに綺麗な音に負けるなら、負けることも別に悪くないんじゃないかな」
「…………」
考え方の違いもあるだろうが。
「ヒナギクはそう思わない?」
本当にどうしてこの人はそういう事を、そんな顔で言えるのだろうか。
「……えぇ」
そんな顔で言われたら、頷くことしか出来ない。
「本当にハヤテって……」
「ん?」
「なんでもない」
本当に、私の夫は最高だ。
こうして結婚できて本当に幸せだと思う。
「それよりハヤテ、もう少し窓開けててもいい?」
でもその言葉だけは、言わないでおこう。
返しの言葉でどんな恥ずかしいことを言われるか知ったものじゃないから。
だから虫の声よりも小さな、もっと小さな私の心の声でだけ言っておくことにする。
「僕は全然構わないよ」
「良かった」
それよりも、今は。
私は身体をハヤテに預けながら、言った。
「もう少しだけ、この虫たちの声を聞いていたいから」
「……その意見には凄く同感」
意識を外へ向けると、虫たちの涼やかな声が再び耳に入ってきた。
思わず羨んでしまうくらいの、綺麗な音。
その音をその身で感じながら、私は思う。
この音に負けるのならそれは……それは確かに悪くない気分だと。
すっかり涼しくなった九月の夜。
虫たちの小さな演奏会を聞きながら、私とハヤテの静かな夜は更けていく。
End
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