関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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東京都練馬区に、広大な土地がある。
その土地に足を踏み入れれば、まるで外国にいるかのような錯覚に陥り、しかし表札をみればやはり日本に自分はいるのだ、と何故か安心を覚えてしまう。
そんな土地の所有者の名は、表札には『三千院』と書かれている。
そう、ここは世界でも指折りの大富豪、三千院家の屋敷。
まるで一つの国のように馬鹿でかい土地。城のような豪邸。
何故かある湖。そして森のような庭。
そんな中、三千院家の豪邸から少し離れた所に、三千院家の豪邸とは雲泥の差もある一軒家があった。
表札には『綾崎』。
これからお話するのは、そんな『あやさきけ』の平凡な物語である―――。
その土地に足を踏み入れれば、まるで外国にいるかのような錯覚に陥り、しかし表札をみればやはり日本に自分はいるのだ、と何故か安心を覚えてしまう。
そんな土地の所有者の名は、表札には『三千院』と書かれている。
そう、ここは世界でも指折りの大富豪、三千院家の屋敷。
まるで一つの国のように馬鹿でかい土地。城のような豪邸。
何故かある湖。そして森のような庭。
そんな中、三千院家の豪邸から少し離れた所に、三千院家の豪邸とは雲泥の差もある一軒家があった。
表札には『綾崎』。
これからお話するのは、そんな『あやさきけ』の平凡な物語である―――。
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久々の更新、書いたのはやっぱりハヤヒナでした(笑)
ひな祭りである昨日、本当はUPしたかったんですが、事情により本日に。
一応ヒナギクの誕生日記念というわけで。
それから、コメントを下さっている方々、いつもありがとうございます。
拙い私の文章ですが、これからもよろしくおねがいします!
それでは、どうぞ~♪
『ひな祭りの誕生日』
【ひま祭り祭り】
一見、ただのひな祭りに聞こえるが、学院の生徒の話では『学力査定での結果が悪くて学校を去らなければならない者の最後の楽しい思い出作り』と、なかなかシビアなものである。
しかし実際に体験してみると、それもあながち間違いではないように思える。
ひな祭り祭りでは、私たちが元来知っているひな祭りのお雛様などは一切見られない。
見られるのは、数多い出店だ。
そこへ一歩足を踏み入れたとき、初詣と夏祭りが合わさったような光景が目の前に広がる。
時折、出店の者を泣きながら食べている者が見られて、思わず目を背けたくなってしまう。
さて、そんなひな祭り祭りではあったが、去年は出店を楽しむだけではなかった。
昨年度入学した生徒の誕生日が、三月三日であったのを機に、その生徒の誕生日会を兼ねて開いたのである。
しかし白皇学院が何故、一端の生徒の誕生日を開いたのか?
誰もが抱く疑問は、該当する生徒の名前を口にするだけで納得に変わる。
その名を聞けば誰もが言った、『彼女なら当然か』と。
何故なら『彼女』は、入学早々に学院全体からの絶大な支持を受ける、生徒会長だったのだから。
そんな彼女の名は―――
…
遠くから、皆の賑やかな声が聞こえる。
ひな祭り祭りの会場から少し遠くにある時計塔の最上階、生徒会室。
その生徒会室のソファに、祭りの喧騒をBGMに仲良く寄り添って座る男女が一組あった。
「賑やかねー」
「そうですねー」
月明かりがテラスから差込み、その男女を照らす。
その光が照らし、映したのは、美しい『空』と『桜』だ。
「でも良かったんですか?」
青空のような髪の少年が、気遣うように少女に言葉をかける。
「? 何が?」
少年の言葉に、肩まで流れる桜色の美しい髪を靡かせて、少女が聞き返した。
少年は続ける。
「誕生会、今年も花菱さんたちが企画してくれていたんですよね?」
どうやら少女は今日が誕生日らしい。『今年も』という辺り、去年も行われたのだろう。
少女は少年の意図を汲み取ったらしく、「ああ」と短く言葉を発し、
「誕生会なんて名前だけよ、あれは。どうせ私が恥ずかしい衣装で歌わされた後で、何事もなかったかのようにカラオケ大会が始まるだけよ」
昨年のそれを思い出してか、恥ずかしさに頬を染めながらため息とともに呟かれた言葉に、少年は苦笑を返すしかない。
昨年、とある事情から少年はその誕生会に参加できなかった。
彼女の表情を見る限り、余程恥ずかしい格好をさせられたのだろう。
誕生会の主役を弄ぶ、あの悪戯好きの三人娘の様子が目に浮かんでくる。
「あー…成るほど。でも見てみたかったなぁ…」
残念そうに呟く少年に、少女が顔をさらに赤く染めて、
「ダメッ!あんな恥ずかしい姿、ハヤテ君には見せられないんだからっ!」
「でも、その……。か、彼氏としては彼女の可愛い姿は見ておきたいなと…」
ハヤテと呼ばれた少年はそう言ったが、彼女が泣きそうな顔でそう訴えてくるものだから、渋々諦めた。
去年の彼女の姿を目に納めた男子生徒のリストを挙げなければ、と思ったのは秘密である。
「それに」
ハヤテが不穏な事を思っていると、傍らの少女が口を開いた。
「それに…、今年の誕生日は…、大好きな人と一緒にいたかったから」
ゆっくりと、放たれた告白に少年の顔は真っ赤になった。
「そ、それは…その…」
「それとも、誕生会に出たほうが良かった?」
「い、いやっ!」
彼にとって正に不意打ちだった。恥ずかしさと嬉しさで、上手く言葉が出てこない。
そんな彼を、少女が赤い顔のまま楽しそうに眺めていた。
「そりゃ、もちろん嬉しいですよ」
数分あたふたしたハヤテが発した第一声が、これだった。
「その、『大好き』って直球で言われて恥ずかしかったですけれど、僕も……大好き、ですから」
「ハヤテ君…」
「だから、僕も本当は誕生会に行って欲しくなくて、二人きりで過ごせたらいいな…、って思ってたんです」
「―――!」
「わっ」
鼻の頭を掻きながら照れくさそうに言った少年に、少女は思わず抱きついていた。
小さく驚いたハヤテだったが、すぐにその愛しい存在を優しく抱きしめる。
「……両想いね」
「そうですね」
付き合っているのだから元々両想いだ、とは思ったが、当然口にする事はしない。
ただ、愛情を込めて、少女の頭をハヤテは撫でる。
そこで、ハヤテは思い出した。
「そういえば」
「え?」
ハヤテの声に、少女が顔を上げてハヤテを見る。
「どうしたの? ハヤテ君」
「いえ、そういえばまだ言ってなかったな、と思いまして」
その少女に微笑みながら、ハヤテは、言葉を続けた。
「誕生日おめでとうございます、ヒナギクさん」
そう言って、ハヤテは再び少女を抱きしめる。
少女の顔はハヤテの胸に埋まる形になったが、その顔は、
「………ありがとう、ハヤテ君」
その顔は見えないけれども、少女の顔は間違いなく、幸せそうに笑っていただろう。
…
白皇学院が何故、一端の生徒の誕生日を開いたのか?
誰もが抱く疑問は、該当する生徒の名前を口にするだけで納得に変わる。
その名を聞けば誰もが言った、『彼女なら当然か』と。
何故なら『彼女』は、入学早々に学院全体からの絶大な支持を受ける、生徒会長だったのだから。
そんな彼女の名は、桂ヒナギク、十七歳。
彼女の誕生日は、
遠くからひな祭り祭りの喧騒が聞える中、
二人きりの生徒会室で、
愛する人と、
幸せとともに過ぎていく。
End
ひな祭りである昨日、本当はUPしたかったんですが、事情により本日に。
一応ヒナギクの誕生日記念というわけで。
それから、コメントを下さっている方々、いつもありがとうございます。
拙い私の文章ですが、これからもよろしくおねがいします!
それでは、どうぞ~♪
『ひな祭りの誕生日』
【ひま祭り祭り】
一見、ただのひな祭りに聞こえるが、学院の生徒の話では『学力査定での結果が悪くて学校を去らなければならない者の最後の楽しい思い出作り』と、なかなかシビアなものである。
しかし実際に体験してみると、それもあながち間違いではないように思える。
ひな祭り祭りでは、私たちが元来知っているひな祭りのお雛様などは一切見られない。
見られるのは、数多い出店だ。
そこへ一歩足を踏み入れたとき、初詣と夏祭りが合わさったような光景が目の前に広がる。
時折、出店の者を泣きながら食べている者が見られて、思わず目を背けたくなってしまう。
さて、そんなひな祭り祭りではあったが、去年は出店を楽しむだけではなかった。
昨年度入学した生徒の誕生日が、三月三日であったのを機に、その生徒の誕生日会を兼ねて開いたのである。
しかし白皇学院が何故、一端の生徒の誕生日を開いたのか?
誰もが抱く疑問は、該当する生徒の名前を口にするだけで納得に変わる。
その名を聞けば誰もが言った、『彼女なら当然か』と。
何故なら『彼女』は、入学早々に学院全体からの絶大な支持を受ける、生徒会長だったのだから。
そんな彼女の名は―――
…
遠くから、皆の賑やかな声が聞こえる。
ひな祭り祭りの会場から少し遠くにある時計塔の最上階、生徒会室。
その生徒会室のソファに、祭りの喧騒をBGMに仲良く寄り添って座る男女が一組あった。
「賑やかねー」
「そうですねー」
月明かりがテラスから差込み、その男女を照らす。
その光が照らし、映したのは、美しい『空』と『桜』だ。
「でも良かったんですか?」
青空のような髪の少年が、気遣うように少女に言葉をかける。
「? 何が?」
少年の言葉に、肩まで流れる桜色の美しい髪を靡かせて、少女が聞き返した。
少年は続ける。
「誕生会、今年も花菱さんたちが企画してくれていたんですよね?」
どうやら少女は今日が誕生日らしい。『今年も』という辺り、去年も行われたのだろう。
少女は少年の意図を汲み取ったらしく、「ああ」と短く言葉を発し、
「誕生会なんて名前だけよ、あれは。どうせ私が恥ずかしい衣装で歌わされた後で、何事もなかったかのようにカラオケ大会が始まるだけよ」
昨年のそれを思い出してか、恥ずかしさに頬を染めながらため息とともに呟かれた言葉に、少年は苦笑を返すしかない。
昨年、とある事情から少年はその誕生会に参加できなかった。
彼女の表情を見る限り、余程恥ずかしい格好をさせられたのだろう。
誕生会の主役を弄ぶ、あの悪戯好きの三人娘の様子が目に浮かんでくる。
「あー…成るほど。でも見てみたかったなぁ…」
残念そうに呟く少年に、少女が顔をさらに赤く染めて、
「ダメッ!あんな恥ずかしい姿、ハヤテ君には見せられないんだからっ!」
「でも、その……。か、彼氏としては彼女の可愛い姿は見ておきたいなと…」
ハヤテと呼ばれた少年はそう言ったが、彼女が泣きそうな顔でそう訴えてくるものだから、渋々諦めた。
去年の彼女の姿を目に納めた男子生徒のリストを挙げなければ、と思ったのは秘密である。
「それに」
ハヤテが不穏な事を思っていると、傍らの少女が口を開いた。
「それに…、今年の誕生日は…、大好きな人と一緒にいたかったから」
ゆっくりと、放たれた告白に少年の顔は真っ赤になった。
「そ、それは…その…」
「それとも、誕生会に出たほうが良かった?」
「い、いやっ!」
彼にとって正に不意打ちだった。恥ずかしさと嬉しさで、上手く言葉が出てこない。
そんな彼を、少女が赤い顔のまま楽しそうに眺めていた。
「そりゃ、もちろん嬉しいですよ」
数分あたふたしたハヤテが発した第一声が、これだった。
「その、『大好き』って直球で言われて恥ずかしかったですけれど、僕も……大好き、ですから」
「ハヤテ君…」
「だから、僕も本当は誕生会に行って欲しくなくて、二人きりで過ごせたらいいな…、って思ってたんです」
「―――!」
「わっ」
鼻の頭を掻きながら照れくさそうに言った少年に、少女は思わず抱きついていた。
小さく驚いたハヤテだったが、すぐにその愛しい存在を優しく抱きしめる。
「……両想いね」
「そうですね」
付き合っているのだから元々両想いだ、とは思ったが、当然口にする事はしない。
ただ、愛情を込めて、少女の頭をハヤテは撫でる。
そこで、ハヤテは思い出した。
「そういえば」
「え?」
ハヤテの声に、少女が顔を上げてハヤテを見る。
「どうしたの? ハヤテ君」
「いえ、そういえばまだ言ってなかったな、と思いまして」
その少女に微笑みながら、ハヤテは、言葉を続けた。
「誕生日おめでとうございます、ヒナギクさん」
そう言って、ハヤテは再び少女を抱きしめる。
少女の顔はハヤテの胸に埋まる形になったが、その顔は、
「………ありがとう、ハヤテ君」
その顔は見えないけれども、少女の顔は間違いなく、幸せそうに笑っていただろう。
…
白皇学院が何故、一端の生徒の誕生日を開いたのか?
誰もが抱く疑問は、該当する生徒の名前を口にするだけで納得に変わる。
その名を聞けば誰もが言った、『彼女なら当然か』と。
何故なら『彼女』は、入学早々に学院全体からの絶大な支持を受ける、生徒会長だったのだから。
そんな彼女の名は、桂ヒナギク、十七歳。
彼女の誕生日は、
遠くからひな祭り祭りの喧騒が聞える中、
二人きりの生徒会室で、
愛する人と、
幸せとともに過ぎていく。
End
ハヤヒナで、ヒナ一人称です。
文学少女よんでたらふと思いついた話です。
それではどうぞ~♪
小説みたいな出逢い方
穏やかな午後の一時、図書室から適当に借りてきた短編集を手に取る。
知らない作家だった。
「………ん?」
たいした感慨もなくぺらぺらとページを捲っていくうち、一つの物語が目に留まる。
「――これ」
それは、一組の男女の物語。
貴族の少女と平民の少年という、身分が違う二人の、悪く言えば在り来たりなラブ・ストーリーだった。
そんな物語に目が留まったのは、この二人の出逢い方に見覚えがあったからだ。
というか、その…殆ど『私たち』と同じだったからというか…。
と、とにかく!そういった理由からだった。
…
お転婆なその貴族の娘は、両親から押し付けられた習い事をしばしば抜け出すことがあった。
町に出ては庶民の遊びを楽しみ、この日も屋敷を抜け出し、その時は偶々森へと赴いていた。
そんな少女は、入り込んだ森の中で、雛鳥が巣から落ちていたのを見つける。
娘はお転婆故、衣服が汚れるのも構わず木の上にある巣へと雛鳥を戻した。
戻した事に安心した少女は、そこで気付く。
自分が木から下りられなくなっていることに。
娘は戸惑った。
屋敷をこっそりと抜け出した挙句、ここは森の中。
いつも屋敷の者が捜索しているのが町中だけなこともあり、助けを呼ぶにも来てくれる可能性は絶望的だったからである。
日は傾き、不気味な闇が森の中を覆っていく感覚に少女は泣きそうになった。
不安ばかりが脳内を過ぎり、このまま自分は、誰にも見つかることなく死んでいくのではないか…、そんな事も思っていた。
そんな時だった。
――もしもしお嬢さん、そんな所で何をしているのですか?
そんな声が聞こえてきたのは。
…
「……本当、私たちの出逢い方にそっくりね…」
一通り読み終え、私はそう呟く。
結局、ラストはHappy End。身分の差を乗り越え、二人は幸せに暮らしました、という在り来たりな言葉で締めくくられていた。
「というか、本当にこの話は短編なのかしら…」
下手な中編小説並に長かったような気がするが、気にしないほうがいいと思った。
「……まぁ、嫌いじゃないからいいんだけどね」
Happy Endは嫌いじゃないし、長いとは感じたけれど、読むのが苦痛ではなかった。
寧ろ見入ってしまったくらいだ。でも、なんだか物足りなさを感じたのも事実。
もう少し色をつけてもいいと思った。
例えば…その少年が少女の執事になって、少女は通っている学校の生徒会長的な存在…みたいな。
(―――って何考えてるのよ、私ったら)
そんな事を思って、私は苦笑した。
何だ、そりゃ。それじゃ、殆ど私たちじゃないか…。
「………」
でも、と思う。
身分に違いは無いにせよ、出逢い方はこの物語と殆ど同じ、私たち。
どうしてもこの物語の主人公たちに私たちを当て嵌めてしまって、思わず頬の筋肉が緩んでしまう。
だって―――。
「………今日の仕事は、休みましょう」
携帯電話を取り出して、メールの送信画面を開く。
宛先はもちろん、愛しい彼へ。
「たまにはこういうのだって、悪くないわよね」
きっとだらしない顔をしたまま、送信ボタンを押した。
To綾崎ハヤテ
sub今日はお仕事休み!
今日は仕事を休みにして、かくれんぼしましょ!
鬼はハヤテ君で♪早く見つけないと…泣いちゃうんだから!!
美希たちが見たら間違いなく飲んでいたものを吹いてしまうこのメールを、ハヤテ君はどう受け取るのだろう。
戸惑って返信しないか、それとも苦笑しながらも、私のしょうもない遊びに付き合ってくれるのか。
そんな事を考えたけれど、少しの不安もなく私は移動を開始した。
私が言い出したのだから、隠れなきゃ。
隠れる所はもちろん、私とハヤテ君が出会ったあの木の下で。
物語のヒロインは、見つけられることを切に願っていた。
それは不安だったから。
出逢い方は同じでも、そこだけは私と少女は大きく異なっている。
私は見つけてくれるかなんて願っていない。『信じている』から。
ハヤテ君なら私を見つけてくれる。
理由はないけど、そんな確信があるから。
「―――さて、それじゃあ隠れようかしら!」
時計塔の外は快晴、まさにかくれんぼ日和。
あの物語を頭に浮かべながら、私は元気に駆け出した。
―――だって、あの物語の二人は、幸せに暮らしたのだから。
似たような出逢い方をした私たちも、期待しちゃうじゃない。
「――見つけましたよ、ヒナギクさん」
私たちの出逢い方を。
「ずいぶん早く見つけたわね」
「……なんとなく、というかここしか思いつきませんでしたからね」
「……やっぱり、私たちは」
「え?なんですか?」
「なんでもないわよ!それより飛び降りるから、今度はしっかり抱きしめてよね!!」
そんな、小説みたいな出逢い方の先に広がる、幸せな未来を。
End
ハヤヒナ小説第三弾ということで、これは新作にはいりますね。
旧サイトからの小説を再編集するのはかなり骨が折れますので、普通に新しいの書いた方が楽だったり…。
でも、俺的ハヤヒナはほのぼの~っとしたものが好きなので、これからもどんどん書いていけたらいいなと…。
それでは、とりあえずこの辺で!!
文学少女よんでたらふと思いついた話です。
それではどうぞ~♪
小説みたいな出逢い方
穏やかな午後の一時、図書室から適当に借りてきた短編集を手に取る。
知らない作家だった。
「………ん?」
たいした感慨もなくぺらぺらとページを捲っていくうち、一つの物語が目に留まる。
「――これ」
それは、一組の男女の物語。
貴族の少女と平民の少年という、身分が違う二人の、悪く言えば在り来たりなラブ・ストーリーだった。
そんな物語に目が留まったのは、この二人の出逢い方に見覚えがあったからだ。
というか、その…殆ど『私たち』と同じだったからというか…。
と、とにかく!そういった理由からだった。
…
お転婆なその貴族の娘は、両親から押し付けられた習い事をしばしば抜け出すことがあった。
町に出ては庶民の遊びを楽しみ、この日も屋敷を抜け出し、その時は偶々森へと赴いていた。
そんな少女は、入り込んだ森の中で、雛鳥が巣から落ちていたのを見つける。
娘はお転婆故、衣服が汚れるのも構わず木の上にある巣へと雛鳥を戻した。
戻した事に安心した少女は、そこで気付く。
自分が木から下りられなくなっていることに。
娘は戸惑った。
屋敷をこっそりと抜け出した挙句、ここは森の中。
いつも屋敷の者が捜索しているのが町中だけなこともあり、助けを呼ぶにも来てくれる可能性は絶望的だったからである。
日は傾き、不気味な闇が森の中を覆っていく感覚に少女は泣きそうになった。
不安ばかりが脳内を過ぎり、このまま自分は、誰にも見つかることなく死んでいくのではないか…、そんな事も思っていた。
そんな時だった。
――もしもしお嬢さん、そんな所で何をしているのですか?
そんな声が聞こえてきたのは。
…
「……本当、私たちの出逢い方にそっくりね…」
一通り読み終え、私はそう呟く。
結局、ラストはHappy End。身分の差を乗り越え、二人は幸せに暮らしました、という在り来たりな言葉で締めくくられていた。
「というか、本当にこの話は短編なのかしら…」
下手な中編小説並に長かったような気がするが、気にしないほうがいいと思った。
「……まぁ、嫌いじゃないからいいんだけどね」
Happy Endは嫌いじゃないし、長いとは感じたけれど、読むのが苦痛ではなかった。
寧ろ見入ってしまったくらいだ。でも、なんだか物足りなさを感じたのも事実。
もう少し色をつけてもいいと思った。
例えば…その少年が少女の執事になって、少女は通っている学校の生徒会長的な存在…みたいな。
(―――って何考えてるのよ、私ったら)
そんな事を思って、私は苦笑した。
何だ、そりゃ。それじゃ、殆ど私たちじゃないか…。
「………」
でも、と思う。
身分に違いは無いにせよ、出逢い方はこの物語と殆ど同じ、私たち。
どうしてもこの物語の主人公たちに私たちを当て嵌めてしまって、思わず頬の筋肉が緩んでしまう。
だって―――。
「………今日の仕事は、休みましょう」
携帯電話を取り出して、メールの送信画面を開く。
宛先はもちろん、愛しい彼へ。
「たまにはこういうのだって、悪くないわよね」
きっとだらしない顔をしたまま、送信ボタンを押した。
To綾崎ハヤテ
sub今日はお仕事休み!
今日は仕事を休みにして、かくれんぼしましょ!
鬼はハヤテ君で♪早く見つけないと…泣いちゃうんだから!!
美希たちが見たら間違いなく飲んでいたものを吹いてしまうこのメールを、ハヤテ君はどう受け取るのだろう。
戸惑って返信しないか、それとも苦笑しながらも、私のしょうもない遊びに付き合ってくれるのか。
そんな事を考えたけれど、少しの不安もなく私は移動を開始した。
私が言い出したのだから、隠れなきゃ。
隠れる所はもちろん、私とハヤテ君が出会ったあの木の下で。
物語のヒロインは、見つけられることを切に願っていた。
それは不安だったから。
出逢い方は同じでも、そこだけは私と少女は大きく異なっている。
私は見つけてくれるかなんて願っていない。『信じている』から。
ハヤテ君なら私を見つけてくれる。
理由はないけど、そんな確信があるから。
「―――さて、それじゃあ隠れようかしら!」
時計塔の外は快晴、まさにかくれんぼ日和。
あの物語を頭に浮かべながら、私は元気に駆け出した。
―――だって、あの物語の二人は、幸せに暮らしたのだから。
似たような出逢い方をした私たちも、期待しちゃうじゃない。
「――見つけましたよ、ヒナギクさん」
私たちの出逢い方を。
「ずいぶん早く見つけたわね」
「……なんとなく、というかここしか思いつきませんでしたからね」
「……やっぱり、私たちは」
「え?なんですか?」
「なんでもないわよ!それより飛び降りるから、今度はしっかり抱きしめてよね!!」
そんな、小説みたいな出逢い方の先に広がる、幸せな未来を。
End
ハヤヒナ小説第三弾ということで、これは新作にはいりますね。
旧サイトからの小説を再編集するのはかなり骨が折れますので、普通に新しいの書いた方が楽だったり…。
でも、俺的ハヤヒナはほのぼの~っとしたものが好きなので、これからもどんどん書いていけたらいいなと…。
それでは、とりあえずこの辺で!!
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