関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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どうも皆様あけおめことよろ、関ヶ原です。
一年の計は元旦にあり。というわけで、今年最初の小説です。
今年最初の小説はあやさきけにしました。
結構ばらばらな時間軸も、少しずつ修正しながら今年は書いていきたいな。
なんというか、色々と書き方を変えながら書いていますので変な感じになってしまったかもしれません。
元旦に書けたという事で自身では満足です。
今年もあやさきけとアイカちゃんをよろしくお願いしますm(__)m
ではどうぞ~☆
「一年の計は元旦にあり、だよ!」
新年、明けましておめでとうございます。
我が愛する娘の新年の第一声が、そんな基本的で普遍的な挨拶ではないのは毎年のことで、それは今年も変わることはないようだった。
『新年』
初売りのチラシを見ていた僕は、娘――アイカの言葉を聞いて、傍らで同じくチラシを見ていた妻に視線をやる。
妻であるヒナギクは僕の視線に気づいたようで、「いつものことじゃない」と苦笑を浮かべながら答えて、再びチラシに集中し始めた。
「うーん……」
「一年の計は元旦にあり、だよ!」
「分かってるよ、アイカ……」
僕たちが話を聞いていないと勘違いしたのか、アイカが冒頭と同じ台詞を口にした。
『一年の計は元旦にあり』、か……。
意味は言葉の如く。要は、目標を立てるなら元旦に立てたほうが何かと都合が良いということだ。
新年の第一声が『目標を立てよう』という非常に向上心溢れた言葉なのは、親として誇るべきなのか。
個人的には『明けましておめでとう』という言葉がほしかったりする。
閑話休題。
とりあえずヒナギクもアイカの言葉は聞いているようで、僕たちは新年早々、娘の一声で目標を立てることになった。
ご丁寧にも習字道具一式を用意し、家族仲良く目標を書初めをする僕たちは、一般的にはどうなのだろうか、と思わなくもない。
そんなことを思いつつ、僕は筆を構える。
「目標……といっても、毎年立てる目標は同じなんだよな……」
息を止め、さらさらっと筆を動かし書かれた僕の半紙には、当たり障りのない字で『家内安全』とある。
家族の一年の幸福と健康を祈るこの目標は毎年同じだ。
「え?ハヤテ今年も目標それなの?」
書初めの出来に結構満足している僕に、ヒナギクが声を掛けてきた。
僕の書初めに視線を向けながら、呆れたような表情を浮かべている。
毎年変わらない僕の目標に、流石に飽きを感じたのだろう。
「今年くらい、他の目標立ててみたら?」
「いいんだよ、僕は」
でも、そんなヒナギクに僕は答える。
「ヒナギクとアイカを幸せにすることが、僕の目標だからね」
「………もう幸せなのに。バカ……」
僕の言葉に頬を染めたヒナギク。
うん。どうやら今年も、僕の妻は凄く可愛い。
そんなことを考えながら、僕はヒナギクの半紙をのぞき見た。
「そういうヒナギクこそ、今年の目標は何にしたんだよ?」
「あ、ちょっと!」
「えーと、何々……?」
驚いた声を出すが、隠そうとはしないヒナギクの半紙。
なので僕はじっくり見ることにする。
僕とは違い、遥かに達筆な文字が筆によって書かれていた。いや、描かれていた。
字が上手だと、何故だろう。
不思議なことに、そんな目標でも偉大で立派なものに見えてくる。
『二人目』
立派過ぎて言葉が出なかった。
「………………」
「頑張ろうね、ハヤテ♪」
「あぁもう!可愛いな全くもう!!」
「ねーママ?どういう意味?」
「家族って意味よ」
「遠まわしすぎて伝わんないよヒナギク……」
伝わらなくてもいいけども。アイカにはまだ早い。
そして出来る限り頑張ろう、と思った。
「さぁアイカ。貴女の目標も私たちに見せなさい」
「へっへー。今年の私は一味違うよ?ママ」
「あら、言うじゃない」
「もう三年生だからね。大人だからね」
気を取り直して、新年も主役、アイカの目標の登場。
ヒナギクに促され、手元の半紙を何故か誇らしげに広げる娘の姿はなんとも微笑ましいものだ。
幼く拙いながらも、その目標を絶対に達成しようとせんかのように力強さが溢れる文字だった。
『略奪』
「誰からよ!誰から何を略奪するのよ!?」
「えっ……そ、そんなママったら……分かってるくせに」
「私かぁぁぁぁぁ!!」
「というかアイカ、よく略奪っていう言葉が書けたね……」
一人騒がしい愛する妻はひとまず置いておいて、涼しい顔をしているアイカに僕は尋ねる。
『略奪』なんて物騒な言葉、小学校低学年の女の子は普通分からない。
「美希姉ちゃんに教えてもらって、ずっと書く練習してたの」
そんな僕の疑問は、アイカの返答ですっかり消え去った。
なるほど確かに。彼女ならアイカにこの言葉を教えかねない。
「で、書けるようになったから今年の目標にしたんだよ!」
「うんうんなるほど。アイカは頑張ったね~」
逆ベクトルに、だが。
だがしかし。
「上手に書けたでしょ!?」
「うん。凄く上手だよ。ヒナギクもそう思ってるよ」
「本当!?えへへ……良かったぁ」
この嬉しそうな笑顔を前に、そんなこの子の努力を否定するような言葉は言えない。
言う気もないので、ヒナギクが危機感を抱くようなこの子の特性は、例年と同じように少しずつ二人で改善へと導いていこう。
そう、書初めに書いた言葉とは別の目標を心の中で立てながら。
「………今年も騒がしい一年になりそうだなぁ」
迎えた新年。
綾崎家の楽しい一年は、妻と娘の喧騒を合図にするかのように始まったのだった。
明けましておめでとう。今年もよろしく。
End
一年の計は元旦にあり。というわけで、今年最初の小説です。
今年最初の小説はあやさきけにしました。
結構ばらばらな時間軸も、少しずつ修正しながら今年は書いていきたいな。
なんというか、色々と書き方を変えながら書いていますので変な感じになってしまったかもしれません。
元旦に書けたという事で自身では満足です。
今年もあやさきけとアイカちゃんをよろしくお願いしますm(__)m
ではどうぞ~☆
「一年の計は元旦にあり、だよ!」
新年、明けましておめでとうございます。
我が愛する娘の新年の第一声が、そんな基本的で普遍的な挨拶ではないのは毎年のことで、それは今年も変わることはないようだった。
『新年』
初売りのチラシを見ていた僕は、娘――アイカの言葉を聞いて、傍らで同じくチラシを見ていた妻に視線をやる。
妻であるヒナギクは僕の視線に気づいたようで、「いつものことじゃない」と苦笑を浮かべながら答えて、再びチラシに集中し始めた。
「うーん……」
「一年の計は元旦にあり、だよ!」
「分かってるよ、アイカ……」
僕たちが話を聞いていないと勘違いしたのか、アイカが冒頭と同じ台詞を口にした。
『一年の計は元旦にあり』、か……。
意味は言葉の如く。要は、目標を立てるなら元旦に立てたほうが何かと都合が良いということだ。
新年の第一声が『目標を立てよう』という非常に向上心溢れた言葉なのは、親として誇るべきなのか。
個人的には『明けましておめでとう』という言葉がほしかったりする。
閑話休題。
とりあえずヒナギクもアイカの言葉は聞いているようで、僕たちは新年早々、娘の一声で目標を立てることになった。
ご丁寧にも習字道具一式を用意し、家族仲良く目標を書初めをする僕たちは、一般的にはどうなのだろうか、と思わなくもない。
そんなことを思いつつ、僕は筆を構える。
「目標……といっても、毎年立てる目標は同じなんだよな……」
息を止め、さらさらっと筆を動かし書かれた僕の半紙には、当たり障りのない字で『家内安全』とある。
家族の一年の幸福と健康を祈るこの目標は毎年同じだ。
「え?ハヤテ今年も目標それなの?」
書初めの出来に結構満足している僕に、ヒナギクが声を掛けてきた。
僕の書初めに視線を向けながら、呆れたような表情を浮かべている。
毎年変わらない僕の目標に、流石に飽きを感じたのだろう。
「今年くらい、他の目標立ててみたら?」
「いいんだよ、僕は」
でも、そんなヒナギクに僕は答える。
「ヒナギクとアイカを幸せにすることが、僕の目標だからね」
「………もう幸せなのに。バカ……」
僕の言葉に頬を染めたヒナギク。
うん。どうやら今年も、僕の妻は凄く可愛い。
そんなことを考えながら、僕はヒナギクの半紙をのぞき見た。
「そういうヒナギクこそ、今年の目標は何にしたんだよ?」
「あ、ちょっと!」
「えーと、何々……?」
驚いた声を出すが、隠そうとはしないヒナギクの半紙。
なので僕はじっくり見ることにする。
僕とは違い、遥かに達筆な文字が筆によって書かれていた。いや、描かれていた。
字が上手だと、何故だろう。
不思議なことに、そんな目標でも偉大で立派なものに見えてくる。
『二人目』
立派過ぎて言葉が出なかった。
「………………」
「頑張ろうね、ハヤテ♪」
「あぁもう!可愛いな全くもう!!」
「ねーママ?どういう意味?」
「家族って意味よ」
「遠まわしすぎて伝わんないよヒナギク……」
伝わらなくてもいいけども。アイカにはまだ早い。
そして出来る限り頑張ろう、と思った。
「さぁアイカ。貴女の目標も私たちに見せなさい」
「へっへー。今年の私は一味違うよ?ママ」
「あら、言うじゃない」
「もう三年生だからね。大人だからね」
気を取り直して、新年も主役、アイカの目標の登場。
ヒナギクに促され、手元の半紙を何故か誇らしげに広げる娘の姿はなんとも微笑ましいものだ。
幼く拙いながらも、その目標を絶対に達成しようとせんかのように力強さが溢れる文字だった。
『略奪』
「誰からよ!誰から何を略奪するのよ!?」
「えっ……そ、そんなママったら……分かってるくせに」
「私かぁぁぁぁぁ!!」
「というかアイカ、よく略奪っていう言葉が書けたね……」
一人騒がしい愛する妻はひとまず置いておいて、涼しい顔をしているアイカに僕は尋ねる。
『略奪』なんて物騒な言葉、小学校低学年の女の子は普通分からない。
「美希姉ちゃんに教えてもらって、ずっと書く練習してたの」
そんな僕の疑問は、アイカの返答ですっかり消え去った。
なるほど確かに。彼女ならアイカにこの言葉を教えかねない。
「で、書けるようになったから今年の目標にしたんだよ!」
「うんうんなるほど。アイカは頑張ったね~」
逆ベクトルに、だが。
だがしかし。
「上手に書けたでしょ!?」
「うん。凄く上手だよ。ヒナギクもそう思ってるよ」
「本当!?えへへ……良かったぁ」
この嬉しそうな笑顔を前に、そんなこの子の努力を否定するような言葉は言えない。
言う気もないので、ヒナギクが危機感を抱くようなこの子の特性は、例年と同じように少しずつ二人で改善へと導いていこう。
そう、書初めに書いた言葉とは別の目標を心の中で立てながら。
「………今年も騒がしい一年になりそうだなぁ」
迎えた新年。
綾崎家の楽しい一年は、妻と娘の喧騒を合図にするかのように始まったのだった。
明けましておめでとう。今年もよろしく。
End
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どうもご無沙汰、関ヶ原です。
皆様聖なる夜は如何お過ごしでしょうか?
私は一人です。
一人で、ハヤヒナ小説書いてます。
妙な空しさが胸を打ちますけれども、べ、別に気にしてなんかないんだからね!
今月の26にバカテスの新巻が出るそうなので、今から待ち遠しいです。
さて、今回書いた小説はあやさきけ。
今月初小説なんですね。
更新せず申し訳ありません……。
お詫びとなるかどうかは分からないのですが、この拙文をクリスマスプレゼントとしてアップします。
無駄に長くなって、無駄に中身のないようなクリスマスの話です。
俺は一体何が書きたかったのか?
分からないです。
本当に、文章上手に書く才能をください、サンタさん。
それでは皆様、メリークリスマス~☆
十二月二十四日。
この日は俗に言うクリスマス・イヴというものだ。
街に出れば、恋人や子供たちへのプレゼントを選んでいる人たちが多く見られ、店先には装飾されたクリスマスツリーが美しく輝いている。
二十四日の時点でまだプレゼントを決めかねているのはどうか、とも思うが。
しかし実のところ、今回焦点を当てる家族の父親と母親も、愛娘へのプレゼントをまだ決めていないのだから、案外そういう家庭も多いのかもしれない。
まぁそんな話はさておいて。
焦点を当てるという件の家族。
綾崎家のヒナギクさんとアイカちゃんは、そんな光り輝く街中を、来るべきクリスマスへ期待を膨らませながらのんびりと歩いていた。
『セイント・デイ』
「はうぅ……ママ、ツリー凄く綺麗だね!」
「ふふ。そうね、凄く綺麗ね」
様々な色で彩られたツリーを見て興奮する我が娘に、ヒナギクは目を細める。
普段は父であるハヤテの気を引くために、子供らしからぬ言動や行動を繰り返している娘でも、クリスマスは特別らしい。
背伸びすることもなく、年相応に来るべきクリスマスを楽しみにしているようでヒナギクも嬉しく思う。
「アイカは今年、サンタさんに何をお願いするのかしら?」
「ん~」
「アイカはいっつも(色んな意味で)頑張ってるから、サンタさんもきっと欲しいものくれると思うわよ」
ヒナギクとハヤテの、アイカの年くらいのクリスマスは、良い思い出など一切ない。
聖なる夜の日、二人とも寒空の下、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていた。
だからこそ自分の子供には幸せなクリスマスを送って欲しいのだ、という想いはアイカが生まれ八年が経つ今でも変わっていない。
「ほらほら、ママにだけ教えて?ね?」
だから、出来る限りのことはしたいのだった。
「な、なんでもいいの……?」
「なんでもいいから、言ってみなさいよ」
そんなヒナギクの想いが伝わったのか、アイカが恥ずかしそうにヒナギクに尋ねる。
「うん、じゃあ………」
アイカのその姿に満足そうに頷きながら、ヒナギクは続く言葉を待った。
何が欲しいのだろう。
玩具か、お人形か。もしかしたらゲームかもしれない。
アイカは普段そういうものに欲は出さないので、玩具やお菓子を強請られたことがなかった。
それ故、欲しいものがある、というアイカの言葉に凄く興味が湧いた。
ヒナギクに内心期待されながら、アイカは頬を染めて欲しいものを言った。
「パ―――」「却下」
即答だった。
まさかの却下宣言に、アイカの空色の瞳が驚愕の色を浮かべながら見開かれる。
「えぇ!?まだ一文字しか言ってないよ!?」
「一文字で十分よ!!どうせ同じ文字がもう一つ続くんでしょ!?」
アイカの体が強張った。
「そ、そんなことないよぉ……?『パイナポー』って言おうとしたんだもん」
「なんでクリスマスにパイナップル頼むのよ。そんなこと言ったら本当に持ってくるわよサンタさん」
「あぁっ!う、嘘ですクリスマスジョークですよサンタさん!本当はパパって言おうとしたんだよう!」
「どんなジョークよ」
笑えなさ過ぎるジョークにも程があった。
「というかやっぱりハヤテだったんじゃない」
「だ、だって私頑張ったから、何でも欲しいものくれるんでしょ!?だったらパパでも………」
「いくらサンタさんだって、人の物はくれないわよ」
「今さらっとパパを物扱いしたよね」
「ハヤテは私の物。私はハヤテの物。そしてアイカは私とハヤテの宝物よ」
「う……恥ずかしいよママ」
アイカが照れくさそうに、けれども嬉しそうに頬を染めた。
そんなアイカに、ヒナギクは苦笑しながら諭す。
「だからね、アイカ。アイカがいくら欲しいって言っても、サンタさんはハヤテをくれないのよ」
「うぅ……」
「他の物にしたほうがサンタさんだってきっと助かると思うわよ」
「……ママに言っていることが『むじゅん』しているように思うんだけど」
「気のせいよ」
ヒナギクの言葉にまだ納得していない様子のアイカだったのだが、「しょうがないなぁ」と、ハヤテの代わりとなるプレゼントを検討し始める。
「パパ以外で、欲しいものかぁ……」
会話だけ聞いているとまるで私とアイカに父親がいないように聞こえるわ、とアイカを眺めながらヒナギクは思う。
ハヤテに対し、少しばかり罪悪感。
今、家でクリスマスのご馳走を作っている夫に永遠の愛を捧げながら、ヒナギクは再びアイカの方へと意識を向けた。
アイカはまだ悩んでいる最中だった。
「うーん……」
「まだ決まらないの?」
「うん……。だって何にも思い浮かばないんだもん……」
「どこまで欲のない子供なのかしら……」
ハヤテ以外に欲しいものがないという我が娘に、ヒナギクは呆れを通り越して感心する。
現代の子供で、ここまで欲のない子供というのはいないのではないだろうか。
「うーん。困ったわねぇ……」
「? どうしてママが困るの?」
「え!?い、いや……ママにも色々あるのよ」
「そうなんだ~」
折角プレゼントをしようと思っても、欲しいものがないのだから仕様がない。
そういえば今までのクリスマスも、このようにプレゼントに悩んでいたような気がする。
いつもプレゼントが決まるのはギリギリ。
いや、今まで聞かなかった自分たちも悪いのだが。
「(八歳にもなれば欲しいものの一つや二つは出来るだろうと思っていたけど……迂闊だったわ)」
アイカの方を見れば、アイカは再びプレゼントについて考え始めているようだった。
「う~ん……」
「……ねぇアイカ、本当に欲しいもの、ないの?」
「だからパ―――」「それ以外で」
「うぅぅぅぅぅ………」
「はぁ………クリスマスに欲しいものが何もなくて悩んでいるのは、アイカくらいよ」
何とかプレゼントを思い浮かべさせようと催促する。
しかしアイカは首を何回か傾げたものの、やはり思い浮かばないようだった。
その様子に思わずヒナギクは肩が下がる。
「ねぇママ……」
「どうしたの?欲しいもの、あった?」
「ううん、思いつかない」
「そう……」
だが、次のアイカの言葉で、下がった肩が少しだけ、上がった。
「私はね、ママ」
「ん?」
「パパが貰えないんだったら……パパとママと一緒に過ごせたら、それでいいんだもん」
「え……?」
「欲しいものなんてないし、今のまま、ずっと一緒にいれたらそれで私は充分だもん」
「でも、それじゃサンタさんへお願い事は……」
少しばかり戸惑いが含まれたヒナギクの言葉に、花が咲いたような笑顔で、アイカは答えた。
「欲しい物が出来るまで、とっておく!」
「………は?」
「で、欲しいものが出来たときにね、一杯欲しいもの貰うんだ!『今までのツケ、りしつけてかえせや~』って紙に書いて」
「どれだけ嫌な子供なのよ、それ……」
「いいの!サンタさんのお仕事が楽になるんだから。サンタさんも幸せ、私も幸せ。幸せスパイラル、だよ!」
「いや、アイカ貴女サンタさんの生き甲斐奪ってるようなものよ?サンタさん来ないのに幸せっていえるアイカって、たまに凄いと思うわ……」
ヒナギクは本日何度目かの、深いため息をつく。しかし。
「(でも……)」
何故だろうか。アイカの言葉は、どんなものが欲しいと言われるよりも、一番しっくりきた。
『家族と仲良く過ごす』なんて、サンタさんに普通は頼まない。
「でも、ある意味サンタさんへのお願い事よね……?」
考えてみれば、自分たちはアイカの両親であると同時に、アイカ専属のサンタクロースではないか。
両親と一緒に仲良く楽しく過ごしたい、とヒナギクに言うこと、それはサンタへのお願いと言っても間違いではない。
なんだ。この娘は、しっかりとお願いしてくれたじゃないか。
無理に考えたわけでもなく、純粋に、心から願ってくれたサンタへのお願い事。
嬉しくて、頬が緩んでくる。
「ねぇアイカ」
「ん?何?」
こちらに顔を向けてくる我が娘に、ヒナギクは優しく微笑みながら、言った。
「ありがとう」
「? どういたしまして?」
「ふふ……」
「?」
アイカが不思議そうな表情を浮かべるが、ヒナギクは気にしない。
理由を聞かれたところで、サンタである自分は答えることなど出来ないのだから。
「さて!帰ろうか!」
「え?いや、もうすぐお家着くけど……」
「ふふふ。愛しのパパが美味しい料理を作って待ってるんだからね~」
「それは楽しみ!」
アイカの小さな手を引いて、ヒナギクは歩く速度を速めた。
早く家に帰って、ゆっくりと、楽しく過ごしたかったから。
アイカの願いを叶えるため。
アイカへ、サンタからのクリスマスプレゼントを与えるため。
………少しばかりは、ヒナギク自身のため。
「「ただいま!」」
「お帰り~。料理もうすぐ出来るから、もうちょっと待っててね」
「うん!」
「手伝うわ。ねぇハヤテ」
「ん?」
「今日は家族三人、一緒に寝ない?」
「へ?別に全然いいけど……どうして?」
「ふふっ……。プレゼントのため、よ!」
「はぁ……良く分からないけど、うん。僕も久しぶりに皆で寝たいし、こっちからお願いするよ」
「決定ね♪」
「ところで……なんでそんなに上機嫌なの?何か良いことでもあった?」
「さぁ?イヴだからじゃない?」
「………?今日のヒナギクは良く分からないや……」
「ふふ………。さて、料理も出来たことだし、そろそろ始めましょうか!」
「そうだね」
「アイカ―――!ご飯出来たわよ―――!!」
「はぁい!!今行く―――!!」
家に帰って料理を食べて。
家族で仲良く寄り添って、クリスマス・イヴを過ごすこと。
それは、アイカが望んだ願いごとであり、ずっと昔に聖夜の寒空へ呟いた、ヒナギクの願いでもあった。
その願いが今こうして叶っているのは、ひょっとしたらサンタが自分へくれたプレゼントなのではないだろうか。
「全く……この歳になって、何を考えているのやら、私は……」
そんなことを思う自分に思わず苦笑してしまう。
欲しいものがない、という娘のことを言えないじゃないか。
「本当に困ったものだわ……クリスマスって……」
寝ている二人を起こさぬよう、静かに布団からヒナギクは抜け出す。
そして窓を開ければ。
「あ……雪………」
空から深深と降る氷の結晶に、ヒナギクはしばし見とれる。
ホワイトクリスマス。
物語にしては、出来すぎる展開だった。
「これもサンタさんの力なのかしらね……?」
その声に答えるものは、静かな寝息を立てていて。
「………本当、ステキな聖夜だわ」
その音をBGMに、雪の降る聖夜の夜空を、心穏やかにヒナギクは見上げるのだった。
End
皆様聖なる夜は如何お過ごしでしょうか?
私は一人です。
一人で、ハヤヒナ小説書いてます。
妙な空しさが胸を打ちますけれども、べ、別に気にしてなんかないんだからね!
今月の26にバカテスの新巻が出るそうなので、今から待ち遠しいです。
さて、今回書いた小説はあやさきけ。
今月初小説なんですね。
更新せず申し訳ありません……。
お詫びとなるかどうかは分からないのですが、この拙文をクリスマスプレゼントとしてアップします。
無駄に長くなって、無駄に中身のないようなクリスマスの話です。
俺は一体何が書きたかったのか?
分からないです。
本当に、文章上手に書く才能をください、サンタさん。
それでは皆様、メリークリスマス~☆
十二月二十四日。
この日は俗に言うクリスマス・イヴというものだ。
街に出れば、恋人や子供たちへのプレゼントを選んでいる人たちが多く見られ、店先には装飾されたクリスマスツリーが美しく輝いている。
二十四日の時点でまだプレゼントを決めかねているのはどうか、とも思うが。
しかし実のところ、今回焦点を当てる家族の父親と母親も、愛娘へのプレゼントをまだ決めていないのだから、案外そういう家庭も多いのかもしれない。
まぁそんな話はさておいて。
焦点を当てるという件の家族。
綾崎家のヒナギクさんとアイカちゃんは、そんな光り輝く街中を、来るべきクリスマスへ期待を膨らませながらのんびりと歩いていた。
『セイント・デイ』
「はうぅ……ママ、ツリー凄く綺麗だね!」
「ふふ。そうね、凄く綺麗ね」
様々な色で彩られたツリーを見て興奮する我が娘に、ヒナギクは目を細める。
普段は父であるハヤテの気を引くために、子供らしからぬ言動や行動を繰り返している娘でも、クリスマスは特別らしい。
背伸びすることもなく、年相応に来るべきクリスマスを楽しみにしているようでヒナギクも嬉しく思う。
「アイカは今年、サンタさんに何をお願いするのかしら?」
「ん~」
「アイカはいっつも(色んな意味で)頑張ってるから、サンタさんもきっと欲しいものくれると思うわよ」
ヒナギクとハヤテの、アイカの年くらいのクリスマスは、良い思い出など一切ない。
聖なる夜の日、二人とも寒空の下、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされていた。
だからこそ自分の子供には幸せなクリスマスを送って欲しいのだ、という想いはアイカが生まれ八年が経つ今でも変わっていない。
「ほらほら、ママにだけ教えて?ね?」
だから、出来る限りのことはしたいのだった。
「な、なんでもいいの……?」
「なんでもいいから、言ってみなさいよ」
そんなヒナギクの想いが伝わったのか、アイカが恥ずかしそうにヒナギクに尋ねる。
「うん、じゃあ………」
アイカのその姿に満足そうに頷きながら、ヒナギクは続く言葉を待った。
何が欲しいのだろう。
玩具か、お人形か。もしかしたらゲームかもしれない。
アイカは普段そういうものに欲は出さないので、玩具やお菓子を強請られたことがなかった。
それ故、欲しいものがある、というアイカの言葉に凄く興味が湧いた。
ヒナギクに内心期待されながら、アイカは頬を染めて欲しいものを言った。
「パ―――」「却下」
即答だった。
まさかの却下宣言に、アイカの空色の瞳が驚愕の色を浮かべながら見開かれる。
「えぇ!?まだ一文字しか言ってないよ!?」
「一文字で十分よ!!どうせ同じ文字がもう一つ続くんでしょ!?」
アイカの体が強張った。
「そ、そんなことないよぉ……?『パイナポー』って言おうとしたんだもん」
「なんでクリスマスにパイナップル頼むのよ。そんなこと言ったら本当に持ってくるわよサンタさん」
「あぁっ!う、嘘ですクリスマスジョークですよサンタさん!本当はパパって言おうとしたんだよう!」
「どんなジョークよ」
笑えなさ過ぎるジョークにも程があった。
「というかやっぱりハヤテだったんじゃない」
「だ、だって私頑張ったから、何でも欲しいものくれるんでしょ!?だったらパパでも………」
「いくらサンタさんだって、人の物はくれないわよ」
「今さらっとパパを物扱いしたよね」
「ハヤテは私の物。私はハヤテの物。そしてアイカは私とハヤテの宝物よ」
「う……恥ずかしいよママ」
アイカが照れくさそうに、けれども嬉しそうに頬を染めた。
そんなアイカに、ヒナギクは苦笑しながら諭す。
「だからね、アイカ。アイカがいくら欲しいって言っても、サンタさんはハヤテをくれないのよ」
「うぅ……」
「他の物にしたほうがサンタさんだってきっと助かると思うわよ」
「……ママに言っていることが『むじゅん』しているように思うんだけど」
「気のせいよ」
ヒナギクの言葉にまだ納得していない様子のアイカだったのだが、「しょうがないなぁ」と、ハヤテの代わりとなるプレゼントを検討し始める。
「パパ以外で、欲しいものかぁ……」
会話だけ聞いているとまるで私とアイカに父親がいないように聞こえるわ、とアイカを眺めながらヒナギクは思う。
ハヤテに対し、少しばかり罪悪感。
今、家でクリスマスのご馳走を作っている夫に永遠の愛を捧げながら、ヒナギクは再びアイカの方へと意識を向けた。
アイカはまだ悩んでいる最中だった。
「うーん……」
「まだ決まらないの?」
「うん……。だって何にも思い浮かばないんだもん……」
「どこまで欲のない子供なのかしら……」
ハヤテ以外に欲しいものがないという我が娘に、ヒナギクは呆れを通り越して感心する。
現代の子供で、ここまで欲のない子供というのはいないのではないだろうか。
「うーん。困ったわねぇ……」
「? どうしてママが困るの?」
「え!?い、いや……ママにも色々あるのよ」
「そうなんだ~」
折角プレゼントをしようと思っても、欲しいものがないのだから仕様がない。
そういえば今までのクリスマスも、このようにプレゼントに悩んでいたような気がする。
いつもプレゼントが決まるのはギリギリ。
いや、今まで聞かなかった自分たちも悪いのだが。
「(八歳にもなれば欲しいものの一つや二つは出来るだろうと思っていたけど……迂闊だったわ)」
アイカの方を見れば、アイカは再びプレゼントについて考え始めているようだった。
「う~ん……」
「……ねぇアイカ、本当に欲しいもの、ないの?」
「だからパ―――」「それ以外で」
「うぅぅぅぅぅ………」
「はぁ………クリスマスに欲しいものが何もなくて悩んでいるのは、アイカくらいよ」
何とかプレゼントを思い浮かべさせようと催促する。
しかしアイカは首を何回か傾げたものの、やはり思い浮かばないようだった。
その様子に思わずヒナギクは肩が下がる。
「ねぇママ……」
「どうしたの?欲しいもの、あった?」
「ううん、思いつかない」
「そう……」
だが、次のアイカの言葉で、下がった肩が少しだけ、上がった。
「私はね、ママ」
「ん?」
「パパが貰えないんだったら……パパとママと一緒に過ごせたら、それでいいんだもん」
「え……?」
「欲しいものなんてないし、今のまま、ずっと一緒にいれたらそれで私は充分だもん」
「でも、それじゃサンタさんへお願い事は……」
少しばかり戸惑いが含まれたヒナギクの言葉に、花が咲いたような笑顔で、アイカは答えた。
「欲しい物が出来るまで、とっておく!」
「………は?」
「で、欲しいものが出来たときにね、一杯欲しいもの貰うんだ!『今までのツケ、りしつけてかえせや~』って紙に書いて」
「どれだけ嫌な子供なのよ、それ……」
「いいの!サンタさんのお仕事が楽になるんだから。サンタさんも幸せ、私も幸せ。幸せスパイラル、だよ!」
「いや、アイカ貴女サンタさんの生き甲斐奪ってるようなものよ?サンタさん来ないのに幸せっていえるアイカって、たまに凄いと思うわ……」
ヒナギクは本日何度目かの、深いため息をつく。しかし。
「(でも……)」
何故だろうか。アイカの言葉は、どんなものが欲しいと言われるよりも、一番しっくりきた。
『家族と仲良く過ごす』なんて、サンタさんに普通は頼まない。
「でも、ある意味サンタさんへのお願い事よね……?」
考えてみれば、自分たちはアイカの両親であると同時に、アイカ専属のサンタクロースではないか。
両親と一緒に仲良く楽しく過ごしたい、とヒナギクに言うこと、それはサンタへのお願いと言っても間違いではない。
なんだ。この娘は、しっかりとお願いしてくれたじゃないか。
無理に考えたわけでもなく、純粋に、心から願ってくれたサンタへのお願い事。
嬉しくて、頬が緩んでくる。
「ねぇアイカ」
「ん?何?」
こちらに顔を向けてくる我が娘に、ヒナギクは優しく微笑みながら、言った。
「ありがとう」
「? どういたしまして?」
「ふふ……」
「?」
アイカが不思議そうな表情を浮かべるが、ヒナギクは気にしない。
理由を聞かれたところで、サンタである自分は答えることなど出来ないのだから。
「さて!帰ろうか!」
「え?いや、もうすぐお家着くけど……」
「ふふふ。愛しのパパが美味しい料理を作って待ってるんだからね~」
「それは楽しみ!」
アイカの小さな手を引いて、ヒナギクは歩く速度を速めた。
早く家に帰って、ゆっくりと、楽しく過ごしたかったから。
アイカの願いを叶えるため。
アイカへ、サンタからのクリスマスプレゼントを与えるため。
………少しばかりは、ヒナギク自身のため。
「「ただいま!」」
「お帰り~。料理もうすぐ出来るから、もうちょっと待っててね」
「うん!」
「手伝うわ。ねぇハヤテ」
「ん?」
「今日は家族三人、一緒に寝ない?」
「へ?別に全然いいけど……どうして?」
「ふふっ……。プレゼントのため、よ!」
「はぁ……良く分からないけど、うん。僕も久しぶりに皆で寝たいし、こっちからお願いするよ」
「決定ね♪」
「ところで……なんでそんなに上機嫌なの?何か良いことでもあった?」
「さぁ?イヴだからじゃない?」
「………?今日のヒナギクは良く分からないや……」
「ふふ………。さて、料理も出来たことだし、そろそろ始めましょうか!」
「そうだね」
「アイカ―――!ご飯出来たわよ―――!!」
「はぁい!!今行く―――!!」
家に帰って料理を食べて。
家族で仲良く寄り添って、クリスマス・イヴを過ごすこと。
それは、アイカが望んだ願いごとであり、ずっと昔に聖夜の寒空へ呟いた、ヒナギクの願いでもあった。
その願いが今こうして叶っているのは、ひょっとしたらサンタが自分へくれたプレゼントなのではないだろうか。
「全く……この歳になって、何を考えているのやら、私は……」
そんなことを思う自分に思わず苦笑してしまう。
欲しいものがない、という娘のことを言えないじゃないか。
「本当に困ったものだわ……クリスマスって……」
寝ている二人を起こさぬよう、静かに布団からヒナギクは抜け出す。
そして窓を開ければ。
「あ……雪………」
空から深深と降る氷の結晶に、ヒナギクはしばし見とれる。
ホワイトクリスマス。
物語にしては、出来すぎる展開だった。
「これもサンタさんの力なのかしらね……?」
その声に答えるものは、静かな寝息を立てていて。
「………本当、ステキな聖夜だわ」
その音をBGMに、雪の降る聖夜の夜空を、心穏やかにヒナギクは見上げるのだった。
End
どうも、皆様こんばんわ。
関ヶ原です。
なんとか五作目完成。
目標達成です。
しかし今回の小説……ネタに困ったのか、過去最大級でワケのわからない話になった感が否定できません。
書いていて本当思いました。これ大丈夫なのか?と。
しかし時間的にも書き直すのは厳しかったし、かといって良いネタがそうそうホイホイ出てくるわけでもないので(そこまで優秀な頭脳は持ってないので)このまま一気に書き上げました。
どうぞご了承を……。
それでは十一月最後の作品、どうぞ~☆
秋も段々去りはじめ、冬が少し頭を出しはじめた十一月最後の日。
すっかりと舞い散った枯れ葉の上を、私とハヤテ君は歩いている。
足を一歩前に出す度に、数多の枯れ葉たちがくしゃり、くしゃりと音を立てた。
その音を聞きながら、私はふと思う。
枯れ葉とは何だか、人のようだなぁと。
『枯れ葉』
「ねぇハヤテ君」
「はい?」
私の声に、ハヤテ君が立ち止まりこちらを見る。
「どうかしましたか?ヒナギクさん」
「枯れ葉ってさ、人に似てると思わない?」
「は?」
ハヤテ君は私の言った言葉がよく分からないようで、はて、と首を傾げた。
「すいません、言っている事がよく分からないんですが……」
「いいの、分からないのが普通だから」
申し訳なさそうな表情を浮かべるハヤテ君に、苦笑しながら私は言う。
「ただね、枯れ葉ってさ、ようは寿命を迎えたから地面に落ちるわけじゃない?」
「ええ、そうですけど」
「寿命を迎えたから落ちるって、なんか人間みたいじゃない」
私の言葉に、今度はハヤテ君が苦笑する番だった。
「はは……そういうことなんですか」
「言ったじゃない、分からないのが普通って」
寿命を迎えたら、どんな生物も生を失う。
寿命を迎えたから葉も生を失った。
これが人間のようだなんて、よく言えたものだと自分でも思う。
ハヤテ君が苦笑するのも無理はない。
私自身、自分に苦笑してしまったのだから。
本当に何を言っているのだろう、私は。
ハヤテ君に視線をやる。
彼は私の言葉を聞いて、どう思っているのだろう。
私がこんなことを思っているなんて聞いて、変に思っていないのだろうか。
そう考えると、少し不安になる。
「でも……成るほど確かに、言われてみればそうかもしれませんね」
「え?」
しかし、ハヤテ君の口から出たのは意外な言葉だった。
「寿命を迎えたから落ちる。うん、本当に人間みたいに思えてきますね」
「いや、分けわかんないわよ?」
うんうん、と頷いているハヤテ君に、私は若干戸惑ってしまった。
「だって葉っぱと人よ?生物は生物でも、まるで違うし……。私たち、酸素作れないし……」
「でも、葉が散った後の枝には新たな芽が出来ますよね」
「え?」
「葉っぱ自体は確かに枯れて死んでしまうかもしれません。でも、その後にしっかりと新しい芽を残しているわけですから、これはある意味人間と一緒ですよね」
「………あ」
気が付かなかった、そんなこと。
自分が言った言葉なのに、自分でもワケが分からないような言葉だったのに。
ハヤテ君の一言によって、私の言葉は随分と納得のできるような言葉に変わった。
「人間も寿命で死にます。けれど人は、子孫を残して血を繋いでいくわけです。枯れ葉が枝に芽を残していくのも同じことだと思いませんか?」
「お……思う。不思議だけれど、そう思うわ……」
「だから……ヒナギクさんの言葉は凄く詩的で、神秘的だと思いますよ」
「あ、ありがとう……。そんな風に言ってもらえるなんて思ってなかったから、その……嬉しいわ」
「こちらこそ、素敵な言葉をありがとうございます」
ハヤテ君に笑顔で礼を言われ、不覚にも顔に血が上ってしまった。
そんな笑顔、反則よ……。
「あ……。もうこんな時間なのね」
恥ずかしくなってハヤテ君から視線を逸らした私はそこで、辺りがだんだん暗くなり始めていることに気づいた。
思った以上に話し込んでいたらしい。
ハヤテ君もそのことに気づいたようで、冷えると悪いから、と私に手を差し出した。
「本当だ。だんだん冷えてきますよ、これから」
「そうね。急に気温が下がると思う」
「じゃあ……そろそろ帰りましょうか」
「えぇ」
細いけれど、長くて綺麗な手。
執事をやっているとは思えないように、綺麗で繊細な手を私は手に取った。
「ふふ。ハヤテ君の手、あったかい」
「ヒナギクさんの手も、凄く暖かいですよ」
互いに見つめあい、にっこりと笑い合いながら私たちは歩き出した。
「ねぇハヤテ君」
枯れ葉たちが立てる音を聞きながら、私は口を開く。
今度は足を止めずに、ハヤテ君が問い返す。
「はい、何ですか?」
優しい声色で返されたハヤテ君の言葉に、私は、呟くようにその言葉を言った。
「私たちも……この枯れ葉みたいになれるのかしら」
「………さて、どうでしょうか?それは僕たちしか分からないんじゃないですか?」
ちょっと楽しそうにハヤテ君は応えて、「ただ」と言葉を繋げる。
「僕としてはその未来は大歓迎なんですけれど」
「枯れ葉のような未来?」
「ええ。枯れ葉のような未来です。勿論、一人で枯れて散っていくのはゴメンですけどね」
その言葉に少しだけ噴き出してしまった。なるほど、確かにそれはゴメンだ。
「そうね、私もそう思うわ」
「だから……枯れ落ちるまで、一緒にいましょう」
一人で散るのは嫌だから、ハヤテ君の言葉に私は笑顔で頷いた。
この先ずっと、二人枯れて落ちるまで一緒にいよう、と。
繋ぐ手に力を少しだけ込めて、私たちはまた一歩、また一歩と枯れ葉道を歩き出す。
十一月最後の日。
枯れ落ちた葉っぱたちが作る道がヴァージンロードに見えてしまった、そんなどうしようもない私だった。
本当に今日は、苦笑が止まることはなさそうである。
End
関ヶ原です。
なんとか五作目完成。
目標達成です。
しかし今回の小説……ネタに困ったのか、過去最大級でワケのわからない話になった感が否定できません。
書いていて本当思いました。これ大丈夫なのか?と。
しかし時間的にも書き直すのは厳しかったし、かといって良いネタがそうそうホイホイ出てくるわけでもないので(そこまで優秀な頭脳は持ってないので)このまま一気に書き上げました。
どうぞご了承を……。
それでは十一月最後の作品、どうぞ~☆
秋も段々去りはじめ、冬が少し頭を出しはじめた十一月最後の日。
すっかりと舞い散った枯れ葉の上を、私とハヤテ君は歩いている。
足を一歩前に出す度に、数多の枯れ葉たちがくしゃり、くしゃりと音を立てた。
その音を聞きながら、私はふと思う。
枯れ葉とは何だか、人のようだなぁと。
『枯れ葉』
「ねぇハヤテ君」
「はい?」
私の声に、ハヤテ君が立ち止まりこちらを見る。
「どうかしましたか?ヒナギクさん」
「枯れ葉ってさ、人に似てると思わない?」
「は?」
ハヤテ君は私の言った言葉がよく分からないようで、はて、と首を傾げた。
「すいません、言っている事がよく分からないんですが……」
「いいの、分からないのが普通だから」
申し訳なさそうな表情を浮かべるハヤテ君に、苦笑しながら私は言う。
「ただね、枯れ葉ってさ、ようは寿命を迎えたから地面に落ちるわけじゃない?」
「ええ、そうですけど」
「寿命を迎えたから落ちるって、なんか人間みたいじゃない」
私の言葉に、今度はハヤテ君が苦笑する番だった。
「はは……そういうことなんですか」
「言ったじゃない、分からないのが普通って」
寿命を迎えたら、どんな生物も生を失う。
寿命を迎えたから葉も生を失った。
これが人間のようだなんて、よく言えたものだと自分でも思う。
ハヤテ君が苦笑するのも無理はない。
私自身、自分に苦笑してしまったのだから。
本当に何を言っているのだろう、私は。
ハヤテ君に視線をやる。
彼は私の言葉を聞いて、どう思っているのだろう。
私がこんなことを思っているなんて聞いて、変に思っていないのだろうか。
そう考えると、少し不安になる。
「でも……成るほど確かに、言われてみればそうかもしれませんね」
「え?」
しかし、ハヤテ君の口から出たのは意外な言葉だった。
「寿命を迎えたから落ちる。うん、本当に人間みたいに思えてきますね」
「いや、分けわかんないわよ?」
うんうん、と頷いているハヤテ君に、私は若干戸惑ってしまった。
「だって葉っぱと人よ?生物は生物でも、まるで違うし……。私たち、酸素作れないし……」
「でも、葉が散った後の枝には新たな芽が出来ますよね」
「え?」
「葉っぱ自体は確かに枯れて死んでしまうかもしれません。でも、その後にしっかりと新しい芽を残しているわけですから、これはある意味人間と一緒ですよね」
「………あ」
気が付かなかった、そんなこと。
自分が言った言葉なのに、自分でもワケが分からないような言葉だったのに。
ハヤテ君の一言によって、私の言葉は随分と納得のできるような言葉に変わった。
「人間も寿命で死にます。けれど人は、子孫を残して血を繋いでいくわけです。枯れ葉が枝に芽を残していくのも同じことだと思いませんか?」
「お……思う。不思議だけれど、そう思うわ……」
「だから……ヒナギクさんの言葉は凄く詩的で、神秘的だと思いますよ」
「あ、ありがとう……。そんな風に言ってもらえるなんて思ってなかったから、その……嬉しいわ」
「こちらこそ、素敵な言葉をありがとうございます」
ハヤテ君に笑顔で礼を言われ、不覚にも顔に血が上ってしまった。
そんな笑顔、反則よ……。
「あ……。もうこんな時間なのね」
恥ずかしくなってハヤテ君から視線を逸らした私はそこで、辺りがだんだん暗くなり始めていることに気づいた。
思った以上に話し込んでいたらしい。
ハヤテ君もそのことに気づいたようで、冷えると悪いから、と私に手を差し出した。
「本当だ。だんだん冷えてきますよ、これから」
「そうね。急に気温が下がると思う」
「じゃあ……そろそろ帰りましょうか」
「えぇ」
細いけれど、長くて綺麗な手。
執事をやっているとは思えないように、綺麗で繊細な手を私は手に取った。
「ふふ。ハヤテ君の手、あったかい」
「ヒナギクさんの手も、凄く暖かいですよ」
互いに見つめあい、にっこりと笑い合いながら私たちは歩き出した。
「ねぇハヤテ君」
枯れ葉たちが立てる音を聞きながら、私は口を開く。
今度は足を止めずに、ハヤテ君が問い返す。
「はい、何ですか?」
優しい声色で返されたハヤテ君の言葉に、私は、呟くようにその言葉を言った。
「私たちも……この枯れ葉みたいになれるのかしら」
「………さて、どうでしょうか?それは僕たちしか分からないんじゃないですか?」
ちょっと楽しそうにハヤテ君は応えて、「ただ」と言葉を繋げる。
「僕としてはその未来は大歓迎なんですけれど」
「枯れ葉のような未来?」
「ええ。枯れ葉のような未来です。勿論、一人で枯れて散っていくのはゴメンですけどね」
その言葉に少しだけ噴き出してしまった。なるほど、確かにそれはゴメンだ。
「そうね、私もそう思うわ」
「だから……枯れ落ちるまで、一緒にいましょう」
一人で散るのは嫌だから、ハヤテ君の言葉に私は笑顔で頷いた。
この先ずっと、二人枯れて落ちるまで一緒にいよう、と。
繋ぐ手に力を少しだけ込めて、私たちはまた一歩、また一歩と枯れ葉道を歩き出す。
十一月最後の日。
枯れ落ちた葉っぱたちが作る道がヴァージンロードに見えてしまった、そんなどうしようもない私だった。
本当に今日は、苦笑が止まることはなさそうである。
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