関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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どうも皆様、関ヶ原です。
一応新作できました。あやさきけです。
実はフォレストのほうでリクがありまして、今回はリク小説でございます。
タイトルはずばり、タイトル通り。
本当は成人の日にアップできればよかったのですが、私は成人式というものを知りません。
いや、来年嫌でも迎えるんですがね、正直騒ぐというイメージしかもてなくて……。
小説書くならそれぐらい調べろ、って感じですよね、本当スイマセン(汗
おかげで、小説に私の偏見と無知っぷりが存分に顕れてしまいました。
新年だっつーのに、文章は相変わらず脈絡はないし……。
正直、リク小説がこんな感じになってしまって申し訳ないです。
もっと勉強します。
まぁ、勉強=もっと小説を書くこと、なんですが……。
閑話休題。
さて、話が長くなってしまったのでそろそろ切り上げます。
かなりの拙文になってますが、読んでいただければ光栄です。
それでは~☆
『成人の日』
成人の日、ということで、綾崎ハヤテは屋敷の仕事を休んでいた。
執事に果たして祭日休暇があるのかと問いただしてみたいと思ったのだが、自分の仕える主は他の主とは一味も二味も違うのでまぁいいかと、ハヤテは考えるのをやめた。
どちらにせよ、折角頂いた休みなのだから、ゆっくりと家でのんびりしていよう。
そう思う。
「成人の日、かぁ……」
といってもやることなど特に無く、何の気もなしにテレビをつけてみると、成人式の様子がテレビで放送されていた。
袴姿や着物など、華やかに着飾った新成人の姿がそこにはあった。
テレビに映る彼らの姿を見て、隣で同じくテレビを見ていたヒナギクが言葉を発す。
「懐かしいわねぇ」
「そうだね」
数年前のこの日、ハヤテとヒナギクも新成人となった。
普段は着ない互いの晴れ姿に、頬を染めていたあの頃。
ヒナギクが二十歳の時にアイカが生まれ、もうあれから八年も経ったのかと、年月の流れる速さに少し驚きを覚えた。
「成人式?」
「そ、成人式」
「大人になったっていうお祝いみたいなものかな」
ハヤテの膝の上にちょこんと座っているアイカが、疑問を浮かべる。
自分の知らない言葉に興味を抱いたようだった。
『大人』という言葉を聞いて、アイカの瞳が輝く。
「大人の証……!」
「証って言うか、なんなんだろう?」
「いいんじゃない? ある意味証よ」
「へー……」
そうなんだ、と呟いてテレビを熱心に見始めるアイカに、二人は苦笑を浮かべた。
まだ幼いアイカにとって、『大人』とは憧れの存在なのだろう。
小さい頃に『早く大人になりたい』と願った自分たちはこんな表情を浮かべていたに違いない。
「ねえねえ、パパとママの成人式ってどんな感じだったの?」
「え?」
昔のことを思い出しながらテレビを見ていると、アイカがそんな質問をかけてきた。
アイカを見ると、興味津々といった様子で二人の方を見ている。
「パパとママも成人式に出たんだよね?」
「あー……まぁ一応」
「出たには……出たわよ」
「聞かせてっ」
口を濁しながら答えるハヤテとヒナギクに、間髪いれずにアイカが続きを求めた。
余程興味があるのだろう。
仕方ないな、とため息をついて、二人は語りだす。
「成人式っていっても、テレビのような感じじゃなかったわよ」
「あの時はね――――」
…
久しぶりの日本は、一月だというのに暖かかった。
外国とは違う懐かしい空気を胸いっぱいに吸いつつ、当時二十歳のハヤテと、十九歳のヒナギクは空港から屋敷の方へと出発した。
屋敷へ向かう途中、袴や着物を着た若者の姿を良く見かけ、今日が成人の日だったことを思い出した。
「そういえば今日は成人式だったなぁ」
「私はまだ十九だけどね」
「一応該当者じゃないか。でも、結局参加しないで終わったね」
二人とも今年の新成人だった。
しかし、帰国上の都合で成人式の方へは参加していない。
というか、今のいままで今日が成人式だということを忘れていた。
「う~ん、外国に居過ぎたせいかしら?」
「どうだろう? でも、勿体ないことしたかな? 人生で一度きりの日だったのに」
「そうね……まぁでも、別にいいんじゃないかしら?」
ヒナギクは苦笑して、それに、と言葉を続ける。
「久しぶりに皆に会えることの方が、私たちにとっては大事なことなんだし」
「……それもそうだね」
そう言ってにこり、と微笑むヒナギクに、ハヤテも表情を緩めた。
これから向かう屋敷では、懐かしい顔ぶれが並んでいるはずだ。
自分の主、兄弟、そして自分たちと同じ新成人である友人たち。
二年間という短い渡英だったが、懐かしさを覚えるには十分過ぎた時間だった。
「早く皆に会いたいな……」
「どんな風に変わっているのか楽しみだね」
それぞれが大人になった姿を楽しみにしながら、二人はどちらからと無く、互いの手を握った。
…
かつて自分が仕え、そしてまた仕えるであろう屋敷は、相変わらずの面積を誇っていた。
荘厳な門扉の前に立ち、二人はそれを見上げる。
「うわー……」
「なんというか、久しぶりに見るとまた違うな……」
ここは本当に日本なのだろうか? まだ自分たちは外国にいるのではないのか?
そんな疑問が頭に浮かんだ。
「と、とりあえず中に入れてもらおうかっ」
「そ、そうね」
何とか気を取り直し、近くにあったインターホンを押す。
少しの間が開き、懐かしい声が聞こえてきた。
『はい、どちら様ですか?』
「お久しぶりですマリアさん。 ハヤテです」
「桂です」
『あら! お帰りなさいハヤテ君、桂さん! 今門を開けますから、どうぞ中へ入ってください!』
対応がおばさんみたいだなぁと思ったことは、墓の中まで持っていこうと誓ったハヤテだった。
「改めましておかえりなさいお二人とも」
「ただいまですマリアさん」
「マリアさんもお変わりないようで」
「そうですか?」
迎えてくれたマリアは、相変わらずの美貌だった。
成人を向かえ、より大人っぽくなったその美しい姿に、ハヤテだけでなくヒナギクも視線を奪われる。
「さぁ、早くあがってください。皆お二人のことを待っていますよ」
機嫌の良いマリアに会場まで案内される。
相変わらず屋敷の中は掃除が行き届いていて、会場までの道は、埃一つなかったような気がした。
「ここです」
「ここですか……」
「懐かしいわね」
案内された部屋は、以前人気投票のパーティが行われていた会場だった。
もともと舞踏会などに使われていた部屋なので、妥当といえば妥当だろう。
「中で皆様が待ってますよ。どうぞお楽しみください」
「ありがとうございます」
二人はマリアに礼を言って、その扉を開けた。
中には、懐かしい人たちが待っている。
自分たちの帰りを祝うために。
まだ顔も見ていないのに、嬉しさと懐かしさがこみ上げてきた。
皆はどうなっているのだろうか?
身長が伸びたり、大人っぽくなったり、全然変わっていなかったり。
知らない間に付き合っていたりなんかもして。
扉が開く数秒間の間に、たくさんのことが浮かんでくる。
それだけ自分たちは、再会を心待ちにしているのだと実感した。
「ただいま、皆!」
「久しぶり―――」
長い長い数秒が過ぎ、ようやく中の様子が二人の双眸に映った。
『あっはっは!もっと飲めえ!!』
『無礼講じゃあ!無礼講じゃあ!』
『ちょ、皆さん落ち着いて!僕らはまだ未成年――』
『酒が足りないぞ―――!!もっと持ってこぉい!!』
『あ、こら!ナギまで……』
変わり果てていた。
「……あれ?」
「………は?」
「あ、あはは……すみません、二人とも」
呆然と立ち尽くす二人に、マリアが引きつった笑いを浮かべながら謝罪する。
「あの……始めはちゃんと皆さん、お二人のことを待っていたんですよ? でも、だんだん飽きてきたというか、暇になってきたというか……」
マリアの言いたいことが、二人にはよく分かった。
伊達に彼らと付き合ってきたわけではない。
要するに、待っているのも面倒になったから先に始めたということだろう。
「………相変わらずお察しのよい方ですね」
「伊達に付き合ってませんからね、美希たちとは」
「まぁ改めて考えてみると、そんなに我慢強い方たちではなかったですしね……」
ハヤテとヒナギクはそういって、苦笑交じりに眼前の彼らを見た。
容姿はやはり、昔と比べて大人っぽくなっている気がした。
身長が伸びていたり、髪が伸びていたり。
髪を巻いていたり、化粧をしていたり。
「ふ、ふふ……」
「どうしたの? ヒナギク」
「い、いや……結局皆は皆なんだなぁって……」
クスクスと可笑しそうに笑いながら紡がれたヒナギクの言葉に「あぁ、確かに」とハヤテは頷いた。
二年ぶりにあった彼らは、本当に昔と変わっていない。
二年前自分たちがこの場所にまだいた頃と、ほとんど変わらない。
それが可笑しくて嬉しくて、ハヤテもヒナギクにつられて笑ってしまった。
「マリアさん」
「あ…はい?」
「変わってないですね、皆」
「……お恥ずかしいことながら」
「いえ、いいんですよ」
「ええ。嬉しいことですから」
自分たちの帰国を祝ってくれるはずだったパーティを、主役抜きで始めようとも。蚊帳の外にされても、自然と怒りは湧いてこない。
「じゃあヒナギク、僕たちも混ざろうか」
「そうね。マリアさん、適当に飲み物持ってきていただけますか?」
「あ、はい。今お持ちします」
こみ上げてくるのは、懐かしさと嬉しさだけだった。
パタパタとマリアの足音が遠ざかっていったのを確認した二人は、ニコリと微笑みあう。
「ねえハヤテ」
「ん?」
「昔の私たちならさ、間違いなく美希たちを止める役だったじゃない?」
「……そうだね。僕なんてお嬢様の執事だし」
だんだんと喧騒が近づいてくる。
彼らは、彼女らは、こちらの存在に気が付いていない。
「でも、折角二年ぶりにあったわけじゃない? だからさ……」
「うん」
「私たちも、たまには止めてもらう側になってみない?」
「………なるほど。はは、ヒナギクも今日は思い切り飲むんだね」
「勿論よ。だって今日から成人なんだから」
「違いない」
ヒナギクの言葉にハヤテは笑って、そして半狂乱の渦中へと、突撃した。
…
「……それがパパたちの成人式?」
「うん、そうだよ」
「それと同時に、私たちがボケる側にいてはいけないことが二年ぶりに思い知らされた日でもあるわね」
話を聞き終えたアイカの問いに、それぞれが答える。
結局あのハヤテとヒナギクの帰国祝い兼祝成人パーティは、あの後収まりがつかなかった。
酔っ払った皆に『お帰り』の言葉とともにアルコールを頂いたハヤテとヒナギクも酔いつぶれ、あの会場にはマリア以外のツッコミ役が不在となった。
このことはつまり、カオス化を意味する。
皆が酔っ払い、狂乱の宴を繰り広げていた中に、まさかのハヤテとヒナギクも参戦したのだ。
流石のマリアも予想外だったらしく、あのパーティの後三日間ぐらい寝込んだ。
「あの時は久しぶりの日本ですっかり舞い上がってたからなぁ」
「お酒を飲むことにあれほど恐怖を覚えた時はなかったわ……」
当時のことを思い出し、二人の目がふっと遠くなった。
どうやら自分たちの失態(痴態といえなくもない)を思い出してしまったようだ。
「(若気の至り、ってああいうことを言うのかしら?)」
「(さ、さぁどうだろう?)」
「ははは……」
「? どうしたの?」
「いや……なんでもないんだよ、アイカ」
「ええ。ちょっと昔を思い出しただけだから……」
苦笑を浮かべているハヤテとヒナギクに「ふうん」とアイカは相槌を打つと、
「でも皆、今とそんな変わらないんだね」
「まぁね」
「ここまで変わらないものだったとは流石に思っていなかったけれど」
「? そうなの?」
成人という大人の世界に足を踏み入れてからもう八年。
娘が生まれた今、自分たちがどこか変わったかと聞かれても、素直に頷けない。
子供を養うだとか、家庭を持つだとか、働くだとか、大人になるという定義は、どこに存在しているのだろう。
二十歳を越えたから大人、という言葉は些か説得力に欠けると思う。
結局何歳になっても、大人というものは理解できないのかもしれない。
「でも、さ」
「ん?」
「大人になるってそういうものなのかしら?」
ヒナギクの言いたいことがきっとハヤテにも伝わったのだろう。
ヒナギクの顔を少し見た後、ハヤテは頷いた。
「……そうだね。きっとそういうものなんだと思うよ」
「? 何々? 私にも教えて―――」
「はは、アイカにはまだわからないよ」
「そうそう。大人になってからね」
「むぅ~……。いいもん、早く大人になってやるんだからぁ!」
「そんな簡単に、大人にはなれないわよ」
「そうだねぇ……」
「なるもんなるもん! パパとママみたいに!!」
「はは、それは楽しみだ」
「そうねぇ~。アイカが大人になったとこ見るの、私も楽しみになってきたわ」
「うぅぅぅぅぅ」
一人頬を膨らませたアイカに二人はくすり、と笑みを浮かべると、再びテレビに視線を戻す。
成人式はどうやら終わったらしく、会場を出た新成人たちがそれぞれ騒いでいた。
酒を飲んだり、大声で歌ったり、まるで路上がどこかの宴会会場になっているよう。
その光景を数年前の自分たちと重ねて、ハヤテとヒナギクは思った。
「「(アイカにはこんな風になって欲しくないなぁ)」」
アイカは自分たちのような大人になる、とは言っていたが、正直反面教師にしてほしい。
成人の日にバカ騒ぎして、他人に迷惑をかけるくらいなら、と。
「(大人しくしてれば良かったね、成人式)」
「(成人パーティみたいなものだったけれど……正直、過去に戻れたら、と思うわ……)」
「早く大人になりたいなぁ……」
相変わらず数年前のことを引っ張る二人など知らず、アイカの願望に近い言葉が耳に入る。
その度に二人は、過去の自分たちの行動に頭を抱えてしまうのだった。
二人が二人とも反省する、そんな珍しい成人の日のこと。
End
一応新作できました。あやさきけです。
実はフォレストのほうでリクがありまして、今回はリク小説でございます。
タイトルはずばり、タイトル通り。
本当は成人の日にアップできればよかったのですが、私は成人式というものを知りません。
いや、来年嫌でも迎えるんですがね、正直騒ぐというイメージしかもてなくて……。
小説書くならそれぐらい調べろ、って感じですよね、本当スイマセン(汗
おかげで、小説に私の偏見と無知っぷりが存分に顕れてしまいました。
新年だっつーのに、文章は相変わらず脈絡はないし……。
正直、リク小説がこんな感じになってしまって申し訳ないです。
もっと勉強します。
まぁ、勉強=もっと小説を書くこと、なんですが……。
閑話休題。
さて、話が長くなってしまったのでそろそろ切り上げます。
かなりの拙文になってますが、読んでいただければ光栄です。
それでは~☆
『成人の日』
成人の日、ということで、綾崎ハヤテは屋敷の仕事を休んでいた。
執事に果たして祭日休暇があるのかと問いただしてみたいと思ったのだが、自分の仕える主は他の主とは一味も二味も違うのでまぁいいかと、ハヤテは考えるのをやめた。
どちらにせよ、折角頂いた休みなのだから、ゆっくりと家でのんびりしていよう。
そう思う。
「成人の日、かぁ……」
といってもやることなど特に無く、何の気もなしにテレビをつけてみると、成人式の様子がテレビで放送されていた。
袴姿や着物など、華やかに着飾った新成人の姿がそこにはあった。
テレビに映る彼らの姿を見て、隣で同じくテレビを見ていたヒナギクが言葉を発す。
「懐かしいわねぇ」
「そうだね」
数年前のこの日、ハヤテとヒナギクも新成人となった。
普段は着ない互いの晴れ姿に、頬を染めていたあの頃。
ヒナギクが二十歳の時にアイカが生まれ、もうあれから八年も経ったのかと、年月の流れる速さに少し驚きを覚えた。
「成人式?」
「そ、成人式」
「大人になったっていうお祝いみたいなものかな」
ハヤテの膝の上にちょこんと座っているアイカが、疑問を浮かべる。
自分の知らない言葉に興味を抱いたようだった。
『大人』という言葉を聞いて、アイカの瞳が輝く。
「大人の証……!」
「証って言うか、なんなんだろう?」
「いいんじゃない? ある意味証よ」
「へー……」
そうなんだ、と呟いてテレビを熱心に見始めるアイカに、二人は苦笑を浮かべた。
まだ幼いアイカにとって、『大人』とは憧れの存在なのだろう。
小さい頃に『早く大人になりたい』と願った自分たちはこんな表情を浮かべていたに違いない。
「ねえねえ、パパとママの成人式ってどんな感じだったの?」
「え?」
昔のことを思い出しながらテレビを見ていると、アイカがそんな質問をかけてきた。
アイカを見ると、興味津々といった様子で二人の方を見ている。
「パパとママも成人式に出たんだよね?」
「あー……まぁ一応」
「出たには……出たわよ」
「聞かせてっ」
口を濁しながら答えるハヤテとヒナギクに、間髪いれずにアイカが続きを求めた。
余程興味があるのだろう。
仕方ないな、とため息をついて、二人は語りだす。
「成人式っていっても、テレビのような感じじゃなかったわよ」
「あの時はね――――」
…
久しぶりの日本は、一月だというのに暖かかった。
外国とは違う懐かしい空気を胸いっぱいに吸いつつ、当時二十歳のハヤテと、十九歳のヒナギクは空港から屋敷の方へと出発した。
屋敷へ向かう途中、袴や着物を着た若者の姿を良く見かけ、今日が成人の日だったことを思い出した。
「そういえば今日は成人式だったなぁ」
「私はまだ十九だけどね」
「一応該当者じゃないか。でも、結局参加しないで終わったね」
二人とも今年の新成人だった。
しかし、帰国上の都合で成人式の方へは参加していない。
というか、今のいままで今日が成人式だということを忘れていた。
「う~ん、外国に居過ぎたせいかしら?」
「どうだろう? でも、勿体ないことしたかな? 人生で一度きりの日だったのに」
「そうね……まぁでも、別にいいんじゃないかしら?」
ヒナギクは苦笑して、それに、と言葉を続ける。
「久しぶりに皆に会えることの方が、私たちにとっては大事なことなんだし」
「……それもそうだね」
そう言ってにこり、と微笑むヒナギクに、ハヤテも表情を緩めた。
これから向かう屋敷では、懐かしい顔ぶれが並んでいるはずだ。
自分の主、兄弟、そして自分たちと同じ新成人である友人たち。
二年間という短い渡英だったが、懐かしさを覚えるには十分過ぎた時間だった。
「早く皆に会いたいな……」
「どんな風に変わっているのか楽しみだね」
それぞれが大人になった姿を楽しみにしながら、二人はどちらからと無く、互いの手を握った。
…
かつて自分が仕え、そしてまた仕えるであろう屋敷は、相変わらずの面積を誇っていた。
荘厳な門扉の前に立ち、二人はそれを見上げる。
「うわー……」
「なんというか、久しぶりに見るとまた違うな……」
ここは本当に日本なのだろうか? まだ自分たちは外国にいるのではないのか?
そんな疑問が頭に浮かんだ。
「と、とりあえず中に入れてもらおうかっ」
「そ、そうね」
何とか気を取り直し、近くにあったインターホンを押す。
少しの間が開き、懐かしい声が聞こえてきた。
『はい、どちら様ですか?』
「お久しぶりですマリアさん。 ハヤテです」
「桂です」
『あら! お帰りなさいハヤテ君、桂さん! 今門を開けますから、どうぞ中へ入ってください!』
対応がおばさんみたいだなぁと思ったことは、墓の中まで持っていこうと誓ったハヤテだった。
「改めましておかえりなさいお二人とも」
「ただいまですマリアさん」
「マリアさんもお変わりないようで」
「そうですか?」
迎えてくれたマリアは、相変わらずの美貌だった。
成人を向かえ、より大人っぽくなったその美しい姿に、ハヤテだけでなくヒナギクも視線を奪われる。
「さぁ、早くあがってください。皆お二人のことを待っていますよ」
機嫌の良いマリアに会場まで案内される。
相変わらず屋敷の中は掃除が行き届いていて、会場までの道は、埃一つなかったような気がした。
「ここです」
「ここですか……」
「懐かしいわね」
案内された部屋は、以前人気投票のパーティが行われていた会場だった。
もともと舞踏会などに使われていた部屋なので、妥当といえば妥当だろう。
「中で皆様が待ってますよ。どうぞお楽しみください」
「ありがとうございます」
二人はマリアに礼を言って、その扉を開けた。
中には、懐かしい人たちが待っている。
自分たちの帰りを祝うために。
まだ顔も見ていないのに、嬉しさと懐かしさがこみ上げてきた。
皆はどうなっているのだろうか?
身長が伸びたり、大人っぽくなったり、全然変わっていなかったり。
知らない間に付き合っていたりなんかもして。
扉が開く数秒間の間に、たくさんのことが浮かんでくる。
それだけ自分たちは、再会を心待ちにしているのだと実感した。
「ただいま、皆!」
「久しぶり―――」
長い長い数秒が過ぎ、ようやく中の様子が二人の双眸に映った。
『あっはっは!もっと飲めえ!!』
『無礼講じゃあ!無礼講じゃあ!』
『ちょ、皆さん落ち着いて!僕らはまだ未成年――』
『酒が足りないぞ―――!!もっと持ってこぉい!!』
『あ、こら!ナギまで……』
変わり果てていた。
「……あれ?」
「………は?」
「あ、あはは……すみません、二人とも」
呆然と立ち尽くす二人に、マリアが引きつった笑いを浮かべながら謝罪する。
「あの……始めはちゃんと皆さん、お二人のことを待っていたんですよ? でも、だんだん飽きてきたというか、暇になってきたというか……」
マリアの言いたいことが、二人にはよく分かった。
伊達に彼らと付き合ってきたわけではない。
要するに、待っているのも面倒になったから先に始めたということだろう。
「………相変わらずお察しのよい方ですね」
「伊達に付き合ってませんからね、美希たちとは」
「まぁ改めて考えてみると、そんなに我慢強い方たちではなかったですしね……」
ハヤテとヒナギクはそういって、苦笑交じりに眼前の彼らを見た。
容姿はやはり、昔と比べて大人っぽくなっている気がした。
身長が伸びていたり、髪が伸びていたり。
髪を巻いていたり、化粧をしていたり。
「ふ、ふふ……」
「どうしたの? ヒナギク」
「い、いや……結局皆は皆なんだなぁって……」
クスクスと可笑しそうに笑いながら紡がれたヒナギクの言葉に「あぁ、確かに」とハヤテは頷いた。
二年ぶりにあった彼らは、本当に昔と変わっていない。
二年前自分たちがこの場所にまだいた頃と、ほとんど変わらない。
それが可笑しくて嬉しくて、ハヤテもヒナギクにつられて笑ってしまった。
「マリアさん」
「あ…はい?」
「変わってないですね、皆」
「……お恥ずかしいことながら」
「いえ、いいんですよ」
「ええ。嬉しいことですから」
自分たちの帰国を祝ってくれるはずだったパーティを、主役抜きで始めようとも。蚊帳の外にされても、自然と怒りは湧いてこない。
「じゃあヒナギク、僕たちも混ざろうか」
「そうね。マリアさん、適当に飲み物持ってきていただけますか?」
「あ、はい。今お持ちします」
こみ上げてくるのは、懐かしさと嬉しさだけだった。
パタパタとマリアの足音が遠ざかっていったのを確認した二人は、ニコリと微笑みあう。
「ねえハヤテ」
「ん?」
「昔の私たちならさ、間違いなく美希たちを止める役だったじゃない?」
「……そうだね。僕なんてお嬢様の執事だし」
だんだんと喧騒が近づいてくる。
彼らは、彼女らは、こちらの存在に気が付いていない。
「でも、折角二年ぶりにあったわけじゃない? だからさ……」
「うん」
「私たちも、たまには止めてもらう側になってみない?」
「………なるほど。はは、ヒナギクも今日は思い切り飲むんだね」
「勿論よ。だって今日から成人なんだから」
「違いない」
ヒナギクの言葉にハヤテは笑って、そして半狂乱の渦中へと、突撃した。
…
「……それがパパたちの成人式?」
「うん、そうだよ」
「それと同時に、私たちがボケる側にいてはいけないことが二年ぶりに思い知らされた日でもあるわね」
話を聞き終えたアイカの問いに、それぞれが答える。
結局あのハヤテとヒナギクの帰国祝い兼祝成人パーティは、あの後収まりがつかなかった。
酔っ払った皆に『お帰り』の言葉とともにアルコールを頂いたハヤテとヒナギクも酔いつぶれ、あの会場にはマリア以外のツッコミ役が不在となった。
このことはつまり、カオス化を意味する。
皆が酔っ払い、狂乱の宴を繰り広げていた中に、まさかのハヤテとヒナギクも参戦したのだ。
流石のマリアも予想外だったらしく、あのパーティの後三日間ぐらい寝込んだ。
「あの時は久しぶりの日本ですっかり舞い上がってたからなぁ」
「お酒を飲むことにあれほど恐怖を覚えた時はなかったわ……」
当時のことを思い出し、二人の目がふっと遠くなった。
どうやら自分たちの失態(痴態といえなくもない)を思い出してしまったようだ。
「(若気の至り、ってああいうことを言うのかしら?)」
「(さ、さぁどうだろう?)」
「ははは……」
「? どうしたの?」
「いや……なんでもないんだよ、アイカ」
「ええ。ちょっと昔を思い出しただけだから……」
苦笑を浮かべているハヤテとヒナギクに「ふうん」とアイカは相槌を打つと、
「でも皆、今とそんな変わらないんだね」
「まぁね」
「ここまで変わらないものだったとは流石に思っていなかったけれど」
「? そうなの?」
成人という大人の世界に足を踏み入れてからもう八年。
娘が生まれた今、自分たちがどこか変わったかと聞かれても、素直に頷けない。
子供を養うだとか、家庭を持つだとか、働くだとか、大人になるという定義は、どこに存在しているのだろう。
二十歳を越えたから大人、という言葉は些か説得力に欠けると思う。
結局何歳になっても、大人というものは理解できないのかもしれない。
「でも、さ」
「ん?」
「大人になるってそういうものなのかしら?」
ヒナギクの言いたいことがきっとハヤテにも伝わったのだろう。
ヒナギクの顔を少し見た後、ハヤテは頷いた。
「……そうだね。きっとそういうものなんだと思うよ」
「? 何々? 私にも教えて―――」
「はは、アイカにはまだわからないよ」
「そうそう。大人になってからね」
「むぅ~……。いいもん、早く大人になってやるんだからぁ!」
「そんな簡単に、大人にはなれないわよ」
「そうだねぇ……」
「なるもんなるもん! パパとママみたいに!!」
「はは、それは楽しみだ」
「そうねぇ~。アイカが大人になったとこ見るの、私も楽しみになってきたわ」
「うぅぅぅぅぅ」
一人頬を膨らませたアイカに二人はくすり、と笑みを浮かべると、再びテレビに視線を戻す。
成人式はどうやら終わったらしく、会場を出た新成人たちがそれぞれ騒いでいた。
酒を飲んだり、大声で歌ったり、まるで路上がどこかの宴会会場になっているよう。
その光景を数年前の自分たちと重ねて、ハヤテとヒナギクは思った。
「「(アイカにはこんな風になって欲しくないなぁ)」」
アイカは自分たちのような大人になる、とは言っていたが、正直反面教師にしてほしい。
成人の日にバカ騒ぎして、他人に迷惑をかけるくらいなら、と。
「(大人しくしてれば良かったね、成人式)」
「(成人パーティみたいなものだったけれど……正直、過去に戻れたら、と思うわ……)」
「早く大人になりたいなぁ……」
相変わらず数年前のことを引っ張る二人など知らず、アイカの願望に近い言葉が耳に入る。
その度に二人は、過去の自分たちの行動に頭を抱えてしまうのだった。
二人が二人とも反省する、そんな珍しい成人の日のこと。
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