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関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。 過度な期待はしないでください。
Top ハヤヒナSS あやさきけ イラスト 日記
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行きたかったよぉ!
ともあれ、参加した皆さんお疲れ様でしたという気持ちばかり。

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タイトル通り、ヒナギクさん誕生日おめでとおおおおおおおおおお!
今年も記念イラスト描いたのであげときますね!

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ハッピー! バレンタイーン!
 降雪量も段々と少なくなり、春が近いのを感じている関ヶ原です。
 毎年恒例のバレンタインイラスト描いたんですが、描いてるうちに思いついた小話を投稿でもしようかなと思ったわけです。
 愛も変わらず駄文ですが、よろしければどうぞご覧いただければ!







「やってしまった……」

 閑散とした生徒会室に、一人、少女の力のない声が響く。
 少女の眼前の机には、お世辞にも一人でこなすには少なくない書類の束が積まれている。
 しかし、少女にその書類の束は然程問題には映っていない。

 それよりも重要な事を見落としていた自分に、やるせない怒りと虚しさを覚えているのである。

「今日って……バレンタインじゃない……!」





 2月14日。世で言うバレンタインである。
 想い人にチョコとともに自分の秘めた想いを伝える日、とも言える。
 近年では「友チョコ」や「逆チョコ」と、これまでのバレンタインと一風変わった性質も持ち始めてはいるが、世の中のイメージではやはり「告白」に結び付けることが大半であろう。

 そう、「告白」である。
 想い人に「想い」を伝える日。
 それ故、バレンタインになると、こと学生においては普段とは一味違った姿が散見される。
 それは昇降口で、教室で、学校によっては屋上で。
 密かな期待と願いを込めながら、その日一日、落ち着かない時間を過ごすのである。

「なんていうことなの……!?」

 前ページで大量の書類を露ともせずに呟いていた少女、桂ヒナギクにとってもそれは関係のない話ではなかった。
 察しの良い数少ない読者の皆様ならば既にお察しのことであろうが、そう。

 この少女、完全無欠と言われながら、バレンタインのことをすっかり失念していたのである。

 時刻は朝の八時。
 今は二月の中旬である。バレンタインであることも確かなのだが、ここ白皇学院ではそれよりも重要なイベントが来月控えている。卒業式である。
 毎年多くの優秀な卒業生を輩出するここ白皇学院では、イベント事においても常に全力である。
 ただのひな祭りを「ひな祭り祭り」と繰り返した挙げ句、ほぼ全生徒を巻き込んで盛り上げる程度には、全力である。
 ともあれば当然、卒業式ともなれば力の入れようは言うまでもなく、全校生徒を巻き込んで、そしてその中心となるのはここ、生徒会である。
 ヒナギクは文句のつけようのない非常に優秀な生徒だ。生徒はもちろん、教師陣からの信頼もその慎ましげな胸に反比例して非常に厚い。

 「ヒナギクに任せれば大体オッケー」とは、教師陣の総意だった。しかも、実姉がその先陣を切っているのだからなおさらタチが悪い。
 そういった背景もあって、ここ数週間、ヒナギクは繁忙の日々を送っていたのである。
 一つ仕事を終えれば、三倍となって仕事が追加される。優秀故に、その仕事の量は学生の範疇を超えていた。

「不覚だわ……! 私としたことが……!」

 教師にクレームどころか、職員室に乗り込んで暴れても文句は言えないだろうに、その文句の一つも言わずに期日をしっかりと守るヒナギクは流石完全無欠と言われるだけある。
 だからこそ失念していた。
 眼前の仕事を終らせることだけ考えていたあまり、2月の重要イベントが頭から抜けてしまったのだ。

 ヒナギクは室内の時計を見る。
 時刻は八時。間もなく生徒たちが登校してくる。
 一限目の授業も始まるだろうし、今からチョコレートを手作りする時間はない。

「……どうしよ」

 ヒナギクにとって初恋の相手にチョコレートを送るというのは、全校生徒の前でスピーチするよりも、苦手な高所でダンスをすることよりも勇気のいることだった。
 だからこそ、少しでもその勇気の後押しができるよう、バレンタインには手作りチョコを上げようと考えていたのである。
 しかし新年を迎え、学校が始まってからというもの、忙しさは拍車を掛け続けるばかりで、そんな考えは仕事の波の中に消えていた。
 少し高いチョコでも、と考えてはみたものの、この無駄に大きな学院は、比例して敷地も馬鹿みたいに広い。
 仮に昼休みにチョコを買おうとしたところで、店に行くまでに時間がかかりすぎる。
 ともなれば、導かれる答えは一つである。

「仕方ないわ。売店で買うしかないわね……」

 これは自業自得。忙しさを理由に自分の気持をないがしろにした自分へのバツだと、ヒナギクは肩を落としたのであった。





 さて、小話ということで時は進む。

 時は早いもので、その日の放課後。場所は書き手にとって何かと都合の良い生徒会室。
 昼休みの間に虚しさと財布を手に購入した簡素なチョコレートを傍らに置きながら、ヒナギクは仕事を進めていた。

「結局こんなチョコしか用意出来なかったわね」

 書物が一段落ついたところで、ため息を一つ、ヒナギクは購入したチョコレートを見る。
 黒茶色の長方形の箱に、ピンク色のリボンが簡単に巻かれたもの。お世辞にも本命チョコとは呼べるものではない。
 実際、売店のポップにも「義理用」とデカデカと記載されていた。

「どう見ても義理よね」

 つん、とヒナギクは箱をつついた。
 少し前までは今日こそ想いを伝えようと意気込んでいたのに、どうしてこうなったのだろうか。
 仕事の忙しさは理由にならない。ゆとりが持てなかった自分の責任だ。
 正義感の強すぎるヒナギクは、どうしてもそう考えてしまう。

 そしてそのネガティブな感情は、この後の展開を考えてしまうことで更に増す。

「どうしてそんな日に限って手伝いを頼んでしまったのよぉぉぉぉぉ!?」
 
 そうなのである。実はこの後、生徒会室にはヒナギク以外にもうひとり訪れる予定となっている。
 想い人の綾崎ハヤテだ。
 連日忙しいヒナギクを見て、ハヤテの方から声を掛けてきたのだ。


『忙しそうですね。僕で良ければ力になれればと思いまして』
『本当!? すっごく助かる!』
『いつ頃がよろしいですか?』
『そうね……。14日にでかさなきゃいけない仕事が多いから、その日にお願いしても良いかしら?』
『分かりました! 放課後お邪魔させてもらいます』


「私のバカ! アホ! 雪路!」

 ハヤテは非常に優秀だ。こと仕事の段取りを始め、ヒナギクの考えを読んでいるかのように段取り良くサポートしてくれる貴重な存在である。
 他の生徒会役員がアレであるからに、よりその優秀さが際立って見えた。
 だからこそ、そんなハヤテの申し出はヒナギクにとって渡りに船であった。
 期日は守れているし、遅れはない。だからといって楽なわけではない。
 優秀な人間が一人いるのといないのでは大違いである。

 ハヤテの申し出には感謝しかないが、考えなしにノータイムでOKを出した自分を叩きたくなる。
 よりにもよって14日。バレンタインの14日。

 数日前までは有難かったハヤテの存在が、今は悩みのタネでしかない。
 ハヤテはモテる、と思う。

 主であるナギをはじめ、マリア、歩、そして恐らく泉。
 当然今日一日で、誰かしらからチョコレートをもらっているはずである。そしてそれは心の籠もった手作りだ。

 仮にヒナギクが本命だとこのチョコを渡しても、どうしても前者に比べられてしまうことは必至。
 恋愛に関しては鈍感なハヤテのことだ。きっと冗談だと流されてしまうに違いない。

「……仕方ないか。ハヤテ君が来たら素直に渡そ」

 だがそれは、ヒナギクが招いてしまったことだ。受け入れるしかない。
 今年のバレンタインは諦めて、来年に託そう。

 ヒナギクがそう決意を固めた時、生徒会室のドアがノックされた。

「失礼します。ヒナギクさん居ますか?」
「はい、どうぞ!」

 遠慮がちにドアが開かれ、奥からハヤテが顔を覗かせた。

「遅くなってすみません。日直だったもので」
「全然! むしろ生徒会関係ないのに手伝ってもらってごめんね?」
「いえ、それは全然。お嬢様も今日は学校を休まれたので暇でしたし」

 大丈夫ですよ、と言いながらハヤテはソファに腰掛けた。

「え? ナギ休みだったっけ?」
「ええ。朝起きたらカユラさんと千桜さんに連れて行かれました」

 なんでも同人誌の作業が遅れてるとか、と苦笑いを浮かべながらハヤテは話を続ける。

「マリアさんも昨日、お爺さんから連れて行かれましたし、今日は一人で行動してましたよ」
「そ、そうなのね……」

 まさかマリアまで、とヒナギクは思ったが、ナギのお爺さんのことだ。
 「マリアのチョコが欲しいぃぃぃぃ」と駄々をこねる姿が容易に想像出来た。

(あれ? ちょっと待って)

 そこで、ヒナギクはとある可能性に気づく。

「じゃあ今日、ハヤテ君はナギにもマリアさんにも会ってないの?」
「会ってないと言えば語弊あるのですが、実質会ってないですね。お嬢様は朝の挨拶した瞬間連れて行かれましたし」
「あはは……」

 乾いた笑いを返しつつ、ヒナギクの思考は加速する。

(ということは、ハヤテ君は)

 ――チョコを、貰っていない……?

 ナギ、マリア。
 ハヤテにチョコレートを渡す可能性が一番高い二人と接触していないとなると、その可能性はグッと上がる。

「で、でも学校に来たら誰かしらと行動するんじゃないかしら?」
「いやー……僕もそうだと思ったんですがね?」
「ん?」
「泉さん達と話そうかなって思ったんですけど、先生に見つかった瞬間どこかに連行されまして」
「それは残念でもなく当然ね」
「伊澄さんはしばらく姿を見てません。恐らく咲夜さんも一緒ですね」

 それは恐らく蝶々を追いかけて県を越えているだろう。北国にでもいるのかもしれない。

「西沢さんからは朝メールが来ていたんですが、なんでも風邪を引いてしまったとかで。『39度の想いを込めてこのメールを送ります』と不可解なメールが」
「歩ッ……!」

 恐らく精いっぱいのメールだったであろう渾身のメールに、思わず涙が滲む。ハヤテの不幸体質が移ったかのような不運である。
 ともあれ、これではっきりとした。

(ハヤテ君、今日はチョコ貰ってない……ッ!)

 予想外の展開に、思わずヒナギクの手が汗ばむ。
 ド本命チョコを複数貰っていたと踏んでいたが、実は一つも貰っていない。
 つまり、

(私が一番手……ッ!)

 こと採点のある競技において、一番手というのは採点の基準となる。それ故、不利な部分も多い。
 しかし、バレンタインではどうだろうか。

 恋は戦である。先手必勝。スピードがモノを言う。
 某戦場なヶ原さんも、スピードを活かして想い人をモノにしている。
 ライバルの多い想い人。しかもその想い人はチョコレートを一つも貰っていない状態。

 そしてヒナギクが持つウェポンは、ポップにデカデカと『義理』と書かれていた市販のチョコレートである。
 本命チョコを複数受け取った後であれば、そのチョコは既に敗北宣言したも同然。
 ああ、義理なんだな、と思われて終わり……ッ!

 しかし、これがファーストチョコレートならどうだろう。義理チョコが基準点。当然、本命チョコを渡した後者が有利である。
 だが、だ。

(ここで、本命だって伝えたら……?)

 そう。スピード。ファーストコンタクト。
 義理チョコと思わせつつ、言葉で本命と伝えたらそれはどうなるだろうか。

 わからない。だからこそ、やってみる価値はある。
 圧倒的不利と思われた今回のバレンタイン。それが、様々な要因が重なり、有利に働いている、かもしれない。

 ともなればいくしかない。ここで行かなければヒナギクらしくない。

「は、ハヤテ君!」
「はい、なんでしょう」

 テーブルに積まれた書類に目を通していたハヤテの視線がヒナギクに向けられる。
 急に大きな声を出されて、その瞳には少しばかり驚きが見られた。

「じ、実は渡したいものがあるの!」
「え?」

 ヒナギクはそう言うと、傍らのチョコレートを手に掴む。

「きょ、今日はバレンタインよね?」
「あ、そうですね! 14日ですものね」
「だから……これ……」

 チョコ、と言いかけて、ヒナギクはためらってしまった。
 本当に渡していいのか、と。

 しかし。

「…………」
「ヒナギクさん?」
「……ええい!」

 いつまでウジウジ悩んでいるのか。もうなるようになれ!
 心の中で自棄になりなりつつ、思わず左手に掴んだまま後ろに隠してしまったその箱を、ヒナギクは想い人に差し出す。

「うわぁ、ありがとうございます! まさかヒナギクさんに貰えるなんて!」
「ぎ、義理だけどね!」

 照れ隠しで思わずそう返してしまう自分に頭を抱えたくなった。

「義理でも充分嬉しいです! 今年、貰えないかと思ったので!」
「も、もう……義理なのに大げさね……」

 やはりハヤテは一つもチョコを貰っていなかったようだ。
 ハヤテは心の底から嬉しそうに、ヒナギクのチョコに視線を向けた。
 それがヒナギクには意外だった。
 
 ナギ、マリア、泉、そして歩。
 ヒナギクが思いつくだけでもこれだけの女の子たちが、目の前の彼に好意を寄せている。
 ライバルの背中を押すわけではないが、ハヤテ君はもっと自信を持っていい、必ず誰かからチョコレートを貰えるはずと、ヒナギクが口を開きかけた時、


「そうではなくて。ヒナギクさんからチョコを貰えるっていうことが何より嬉しいんですよ」

 何人から貰えたとかじゃなくて、とハヤテは言った。
 ヒナギクの開きかけた口が、動かなくなった。


「…………」


 それは流石にずるい。
 本当にずるい。
 誰でもない、想い人から、心から嬉しそうな表情でそんなことを言われてしまったのである。


(そんなこと言われたら、素直になるしかないじゃない……!)


 顔が熱を帯びていくのが分かる。これから口にすることは、火が出るくらい恥ずかしい。
 それでも、言葉にしなければ、自分がどうにかなってしまいそうだった。

 本日何度目かの決意を固め、ヒナギクはハヤテに目を向けた。


「ハヤテ君!」
「――ッ!? は、はいッ!?」

 ハヤテの視線がこちらに向けられ、互いの目と目が合う。

「…………」
「…………」

 互いに視線を交わし、無言。
 恥ずかしさのあまり、顔がこわばっていくのが分かる。

「あ、あの、ヒナギクさん……?」
「…………」

 余程とんでもない顔をしていたのか、額に汗を浮かびながら、気遣うようなハヤテの声がヒナギクに掛けられる。

「…………」

 恥ずかしくて、言葉が出ない。
 この言葉を口にしてしまったら、もう後には戻れない。そんな予感がヒナギクにはあった。

 だが、応えなければならない。
 バレンタインを失念し、チョコレートを作ることすら忘れた自分なんかに、ここまで喜んでくれた彼の気持ちに、最大限応えなければならない。


「ハヤテ君!!」
「は、はいッ!」


 また一つ大きな声で大好きな人の名前を呼び、ヒナギクは、告げた。
 想いを告げた。


「買ったチョコは義理だけど!」


「私の貴方への気持ちは、大本命だから!!」


「勘違いしないでよね!!!!」





 その後彼女らがどうなったのかは、言うのは野暮というものだが、

 ただまあ、一つ言えるとすれば。

 二人だけの生徒会室は、チョコレートとは明らかに違う、甘い雰囲気が漂っていた。


 



終われ。

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明けましておめでとうございます。関ヶ原です。
昨年は久々に短文を上げ、活動の方も少しばかり活発になりかけております。
一月につきましては、イラストを中心にしておりまして、今月中にばばーっと描いたものを上げていきますね。
ついにイラストカテゴリが解禁するというね……(困惑)
良かったらこちらの方も見てくださいねー!




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皆様ご無沙汰しております。関ヶ原です。
聞いてくださいよ。なんとなんと、年内に2つ目の小話投稿ですよ!
いつぶり依頼なのか……(困惑)
いやね、ツイッターでですね?


11月17日は良いヒナの日


というすんばらすぃツイートを見ましてね?

(あ、これなんか書かなくちゃいけないやつだ)

と思ったわけですよ。
普通にイラスト描くに、私の速度じゃ明日になっても完成するか分からないし……となれば、以前時間があればちまちま文章書いていくとこのブログに書いていたの思い出しまして。

「そうだ、小話を書こう」

に至ったわけですよ。

予め記載させていただきますが、完全に原作最終話の妄想IFルートです。
最終回のあのコマ見た時、私の妄想力爆発させて「こうなったらいいなぁ……」とか思っていた話の一部を書きました。

本当お目汚しですが、読んでいただければ幸いです。
それでは!





『良いヒナの日』






「ハヤテ君、今日は良いヒナの日なんですって」


 居間で新聞を流し読みしていた僕に、そんな声が掛けられたのは、11月17日の朝である。

 僕の部屋のキッチンから・・・・・・・・・聞こえた声に、僕は目を新聞から声の主へと視線を移す。


「良いヒナの日なんですって」


 キッチンのコンロの上では、味噌汁の入った小鍋がコトコトと小気味良い音を響かせている。

 その真横から。

 冬の近さを感じさせない、桜色の髪をした彼女が、僕の目を見て改めてそう言った。

 もはや誰と言うまい。ヒナギクさんである。

 何故か朝から僕の部屋に居る・・・・・・・・・・・・・、ヒナギクさんだ。


「ヒナの日、ですか」

「うん、ヒナの日」


 さて、ここで簡単に、僕の置かれている状況について説明しておこう。

 激しい戦いを終え、けじめとばかりにお嬢様の元から離れた僕であったわけだが。

 最後に学び舎だった白皇の校舎を見てから立ち去ろうとした時、まんまとヒナギクさんに見つかってしまったのである。

 僕を呼び止め、駆けつけて。

 緊張で震える手を制服を握って誤魔化しながら、



『私――あなたのことが――!』



 ヒナギクさんの勇気の一言。

 出会った時と同じ満開の桜の下で、彼女が切なく、そして決意を宿した瞳で僕を見て放とうとした一言。


 もし仮に、彼女の言葉に僕が答えていれば、物語は変わっていたかもしれない。

 もしくは終わっていたかもしれない。



 彼女の言葉に、僕が返した言葉はというと、





『いえ、人違いです』















「どこかの誰かさんが人の告白を台無しにして、半年以上経つのよねぇ~」

「うっ……」



 ヒナギクさんの僕を見る目がジト目に変わる。

 言わずもがな、この状況を作り出した張本人は僕だったのである。


 人違いを理由に校門へ疾風の如く駆け出した僕を見て、ヒナギクさんはガチギレ。

 ガチギレである。

 人生最大の緊張と勇気を伴った告白に、背を向けられたのである。


 音速で僕の頬を掠めた白桜を思い出すと、今でも背筋が凍る。

 そこからは僕とヒナギクさんの、まさに命を掛けた鬼ごっこ。


 デットバイデイライトである。


 ヒナギクさんの怒りはそらもう治まりがつかず、逃げる僕をどこまでも追いかけた。

 美しく待っていた桜が、夜桜としてライトアップされるくらいには激しいチェイスを繰り広げていたのである。

 あまりのしつこさにどんなスタミナだと後ろを振り返ってみれば、白桜に乗ってた。

 道交法? なのそれ美味しいの? と言わんばかりに、ひたすら真っ直ぐに僕だけを見ていた。

 ついでに剣先も僕を向いていた。少しばかり殺意を感じて泣きそうになった。


 走りっぱなしの僕と、ソード○ットで追跡する彼女。もちろんどちらが先にバテたかは言うまでもなく。

 ついに捕まった僕に、怒りなのか照れなのか、顔を真赤にしながらヒナギクさんが言った言葉は、



『私も一緒に暮らすから!』



 ……とまぁ、こういうことであった。

 当時の、というか今もであるが、僕の暮らしている部屋というのは都内でも安値の部類に入るアパートだ。

 一応トイレはあるが、風呂はない。

 ましてや年頃の男が一人で暮らしている部屋である。

 そんな所に一緒に住ませるわけにはいかないと説得はしたのだが、



『ヒナちゃんを宜しくおねがいします』



 深夜であるにも関わらず、菓子折りとともに満面の笑みを持ってきたお義母様を見て、僕は諦めた。



 そんなこんなで早半年。

 ヒナギクさんは僕のアパートから学校へ通い、僕は以前お世話になっていた自転車配達を始め、複数のアルバイトを掛け持ちしながら暮らしていた。


 ちなみに一緒に暮らしていることは、ヒナギクさんのご両親以外内緒である。

 余計な混乱は互いに嫌だったからそれは良いのだが。



(朝起きて、ヒナギクさんが台所で朝食を作ってくれているこの状況に慣れている自分が怖い……)



 住めば都、暮らせば都である。

 ヒナギクさんのジト目に目を反らしながら、僕は思う。


 ヒナギクさんの告白に返事をしないまま半年以上が過ぎ、ヒナギクさんも答えを求めてくることは一度もなかった。

 当たり前のように朝起き、夜に寝て、また朝の挨拶を交わす。

 一人で生きていくと決めて、皆の前から姿を消した。そのはずだったのにどうしてこうなったのか。


「ちょっとハヤテ君? どこ見てるのよ」

「ああ、すみません……」

「もう、ほら、朝ごはん出来るわよ」

「了解であります、大佐」

「誰が大佐よ」


 二人でご飯をよそい、小さなテーブルに運ぶ。

 焼き魚に味噌汁、そして白米。ゴキゲンな朝食だ。


「それで、さっきの話なんですが……『良いヒナの日』とは?」


 味噌汁で箸を濡らしながら、僕はヒナギクさんに尋ねた。

 一年365日、様々な記念日はあるが、ヒナギクさんの言う記念日には覚えがなかった。


「すみません、どういう日なのかさっぱり分からなくて」


 教えてください、と頭を下げる僕に、ヒナギクさんはぷっ、と小さく吹き出した。


「ごめんごめん、真に受けないで? ただの語呂合わせみたいなものだから」

「語呂合わせ? ……ああ! なるほど」


 11月17日。

 11 17良い ヒナの日ということか。


「……これ、もはやダジャレでは?」

「…………別に良いでしょ」


 ヒナギクさんが目を反らす。

 少し頬が赤い。もしかしなくても恥ずかしくて照れているのだろう。

 その姿が可愛くて、笑みが溢れる。


「……あはは」

「何よぉ……」

「いえ、可愛いなって」

「――――! 恥ずかしいこと言わないでよね!」


 僕の言葉に更に赤くなるヒナギクさんを見て、僕は思う。

 色々あったが、今こうして一緒に暮らせて良かったな、と。

 お嬢様と出会い、一人だった世界に彩りが生まれ、ヒナギクさんとの暮らしの中で、一層鮮やかになっていく。

 一人で生きていくと思っていた頃が、今では随分懐かしく感じる。


「ヒナギクさん、やっぱり今日は良いヒナの日なんかじゃないです」

「え……?」



 僕の言葉に、ヒナギクさんの目が揺れる。出会った頃から変わらない、宝石のような瞳だ。

 この瞳に、一体どれだけ助けられたのかと思うと、彼女への恩は尽きることはない。

 だから、精一杯の感謝と想いを込めて、ヒナギクさんにこの言葉を贈ろう。





「ヒナギクさんのおかげで、僕にとっては毎日が『良いヒナの日』ですから」





 この恩は尽きることはない。おそらく、”一生かけても”返せるか分からないものだ。

 ならば、僕は僕に出来る精一杯を彼女に返していきたいと思った。





「な……ななな……!」

「あはは。ヒナギクさん、顔真っ赤」

「誰のせいよ誰の!!!!」




 もう火が出るんじゃないかというくらい真っ赤な彼女。

 こんな可愛い子が、僕なんかに勇気を出して告白してくれたなんて、本当に夢みたいである。

 だからこそ、まず最初に返す恩は、告白の言葉にしよう。


 いつまでもこの日常が続けられるよう、僕なりの誠意と想いを込めた言葉を贈ろう。

 とっておきのプレゼントと一緒に。






(指輪って、給料何ヶ月分だったかなあ……?)






 遠く、そして近い未来に想いを馳せながら、頭の中で家計簿とにらめっこする。

 遠くない出費を思うと頭は痛くなるが、彼女の笑顔を思い浮かべると、「まぁ安いもんだ」と一人で笑ったのだった。



 そんな、11月17日の、ありふれた幸せな一コマ。






終われ。 


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関ヶ原
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ハヤヒナ小説とかイラスト書いてます。
皆様の暇つぶし程度の文章が今後も書ければいいなぁ。

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