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関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。 過度な期待はしないでください。
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これは旧サイトから再UPした作品ですね、はい。
クリスマスというわけで書いたこの作品。
短編というより短文な感じです。
それでは、どうぞ~。





聖なる夜の小さな願い事




 十二月二十四日。
 クリスマスの夜は、なんとも珍しく雪が降った。

「ヒナギクさんは、クリスマス何が欲しいですか?」

 白い結晶が舞う夜の道を歩きながら、綾崎ハヤテは傍らの少女に話しかけた。
 ハヤテに寄り添いながら、ヒナギクと呼ばれた少女は答える。


「何もいらないわ」
「何も?」


 不思議そうに聞き返すハヤテに「うん。何も」と答え返して、ヒナギクは言った。


「私は…、ハヤテ君とずっと一緒に居られたら、それでいい。それだけで十分よ」


 息を白くして呟かれた言葉は、白と黒に彩られた夜空に溶ける。


「……は、はは。僕がプレゼント貰っちゃったじゃないですか…」


 「プレゼント代が浮いたでしょ?」と悪戯っぽい表情を浮かべるヒナギクの頭を軽く小突いて、ハヤテは苦笑した。
 彼女には敵わない。

「じゃあ…、せめてこれくらいはさせてください」
「きゃっ」

 なんだか悔しくなって、ハヤテはヒナギクを抱き寄せ、唇を重ねた。
 冷気で冷めていた唇に、温かな温もりが伝わる。
 体感数分、ゆっくりと唇を離すと、頬を赤らめたヒナギクが先ほどよりも強く抱き着いて来た。


「……今のは反則じゃない?」
「ハヤテサンタからの、ささやかなプレゼントです」
「………ばか」


 小さく呟いたヒナギクにもう一度不意打ちのキスをして、ハヤテは空を見上げた。
 十年近く昔に見た、あの時と変わらない夜空。

(あの時は何を頼んだっけ……)

 真面目な奴が云々と言っていたあのサンタは、今自分達を見ているのだろうか。

(もうアンタにプレゼントなんて頼まないよ)

 …きっと見ているだろう、と理由のない確信をもって、ハヤテは夜空に向かって言う。


「ヒナギクさんとずっと一緒にいられたら、僕は何もいらない」


 アンタに言われて、僕は幸せを手に入れてみせた。
 そんな幸せを続けられるのなら、もうプレゼントなんていらない。


「……ハヤテ君」
「ずっと…二人で居られたらいいですね」
「ばか。居られたら、じゃない。『居る』の」
「…はは。そうですね」


 相変わらず寄り添い、一組の恋人達は歩いていく。

 離れないように。

 二人きりでいられるように。


「ヒナギクさん」
「ん?」
「改めて――メリークリスマス」



 ――ずっと二人でいられますように。



 聖なる夜に二人が願った、そんな小さな願い事の話。




End

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