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関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。 過度な期待はしないでください。
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第一章『ヒナギク』partB


 自分の唇に、他人の唇が重なっている。
 一般的には「キス」や「接吻」と呼ばれる行動。

(そんなことは分かってるって!)

 しかし、ハヤテの頭の中は絶賛混乱中だ。
 だってそうだろう。
 初対面の、しかも美少女にいきなり唇を重ねられたのだから。
 状況がさっぱり分からない。


 思考の整理がつかぬまま、互いの唇が離され、ヒナギクの照れ隠しのような上ずった声が響く。

「―――終わりましたぁ!!」

 ヒナギクの顔は、相変わらず真っ赤である。

 コルベールはそんなヒナギクに笑みを浮かべると、

「うむ。コントラクト・サーヴァントはきちんと出来たみたいだね」

 そう、嬉しそうに言った。

「……私だってたまには上手く出来ます」

 赤い顔のまま、ヒナギクが呟く。

「ホントにたまによね。ゼロのヒナギク」

 それを見て、金髪巻き髪とそばかすを持った少女がヒナギクを嘲笑った。

「ま、平民だから『契約』出来たんだと思うけど」

 その言葉に、ヒナギクは激昂した。

「ミスタ・コルベール! モンモランシーが私を侮辱しました!」
「何よ、ホントのことでしょ?」
「何がホントよ!?」
「まさか自覚してないの? うわ、ヒナギクアンタ、頭の中も『ゼロ』なんじゃない?」
「何ですって!?」
「こらこら。貴族はお互いを尊重しあうものだ」

 コルベールが、言い争う二人を宥める。

 その様子を、ハヤテはじっと見つめていた。
 何が何だか未だに理解出来ないが、だからこそ、見ることしか出来ない。

 そんなハヤテを、今まで体感したことのない程の熱が襲った。


「――――っ!?」

 何の予兆もなくやって来た熱さに、混乱の最中にあった思考が止まった。

 何だこれは。熱い、熱い。

 その熱は、どうやら左手から発しているようだ。

「『ルーン』が刻まれているだけよ。すぐ終わるから我慢して」
「ルーン……っ!?」

 ヒナギクの言葉の意味はわからない。
 しかしそれよりも、この左手の異常なまでの熱さの方がわからない。

「……あ」

 原因不明の熱に悶えること数分。
 その熱が、消えた。

 終わった、のか……?

「何だったんだ一体……」

 恐る恐る左手を見る。
 今の熱がまるで嘘だったかのように、自分の左手はいつもの通りだった。

 いや、正確には『いつもの通り』ではなかった。
 左手の甲で、見たことのない文字が光っていた。

「? なんだこれ?」
「ふむ…。珍しいルーンだな」

 気づかぬうちに傍に来ていたコルベールと呼ばれる男性が、ハヤテの左手を見ながら呟く。

「ルーン……?」
「まぁいいか……。さて、ミス・ヴァリエールの儀式も終わったし、教室に戻るぞ」

 聞きなれない言葉にハヤテがコルベールに尋ねたが、コルベールは応えなかった。
 生徒全員に言葉をかけると、ヒナギクを除く全員が宙に浮いた。

「―――――――は?」

 無視されたことに苛立ちを覚えるよりも、眼前の状況にハヤテは再び混乱する。

 人が、飛んでいる。

「ヒナギク、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」

 生徒たちは皆、各々にヒナギクに言葉を吐いて飛んでいく。
 残されたのは、ヒナギクとハヤテだけになった。

「――――はぁ……」

 二人きりになると、ヒナギクは小さくため息をついてハヤテに向き合った。

「迷惑かけたわね」
「は? ……え?」

 いきなりそんなこと言われても、ハヤテの頭の中は混乱中だ。

「あの……いきなりそんなこと言われても、何が何だかもうさっぱりで……というか、ここ、どこですか? 天国?」

 その混乱を少しでも治めようと、とりあえずハヤテはヒナギクに尋ねる。
 そもそもここはどこで、自分はどうなったのか。

「ここはトリスティン。で、この建物は有名なトリスティン魔法学院」
「トリスティン……魔法学院?」

 一度も耳にしたことのない地名だった。
 そして……魔法。

「魔法……」
「うん」
「じゃあさっき人が飛んでったあれも…」
「魔法よ。 当たり前じゃない」
「じゃあここはやっぱり天国じゃない……」
「テンゴク? それ何処の国?」
「……マジですか」

 どうやら本当に、本当に信じられないが、ここは死後の世界でもなければ、自分は死んでもいないらしい。

 そんなハヤテを、ヒナギクが不思議そうに見つめる。

「貴方どこの平民? どこの出身? というか、本当に平民なの?」
「平民といえば平民ですけど……」

 借金だらけ、という付加価値がつくが(実際は付加ではなく『負荷』である)。

「でも、多分貴女の思っている平民と、僕が思っている平民は違うと思いますよ」
「ふぅん……そうなんだ。でも確かに、見たことない服を着てるし……」

 ハヤテの言葉にヒナギクは「まぁいいわ」と相槌を打つと、自分と唇を重ねた後とは思えないほど毅然としながら、己の名前を言った。

「私の名前はヒナギク・ル・フォーン・ド・ラ・ヴァリエール。今からあなたの主人になるわ」


 自分がどうなったのか、これからどうなるのか、ハヤテには何も理解できなかったが。


 その姿、その美しさに。


「よろしく」

 
 思わず―――見蕩れていた。


「あ……よろしく……お願いします……」


 これが、ハヤテの。
 死ぬはずだった綾崎ハヤテの、不思議で騒がしい、第二の人生の始まり。

 そしてかけがえの無い存在との出会いだった。





第二話へ

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