関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
Top | ハヤヒナSS | あやさきけ | イラスト | 日記 |
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『冬の帰り道』
「寒い」
凍てつくような寒風が肌を刺す二月。
川嶋亜美はそう言って腕で己の身体を抱きしめた。
「さーむーい」
そして、直ぐさま傍らの少年へ不満げな視線を向ける。
「……だから、何だよ」
その視線を受けた少年は、まがまがしい凶眼をギラつかせながら返答する。
別に美少女である亜美の衣服を剥いで、美しい裸体を我が物にしてやろう、などと考えているのではない。亜美にどう言葉を返せばいいかわからなかっただけである。
そんな神に見放された凶眼を持つ少年――高須竜児の眼光にすくむ事なく、亜美は再び不満げな視線を竜児に向け、
「亜美ちゃんは、寒いの」
「…まぁ、二月だし、寒いよな」
だが竜児はそれにどう言葉を返せばいいかわからない。
ただ無難に同意した。
「………寒いって、言ってるでしょ」
どうやら無難な策ではなかったらしい。
亜美は頬をぷ―っと膨らませて、拗ねてしまった。
「竜児って、どうしようもないね」
そんな事まで言い始める始末。
「そ、そんなこと言ったってな…」
竜児は困った。
高須竜児が川嶋亜美と恋仲になってから、久方ぶりの二人きりの帰り道。
恋人らしいことをしようと密かに意気込んでいた竜児である。
肝心の亜美に、しかも自分の所為で機嫌を損ねられてしまった竜児は、必死に思考を巡らせる。
(俺は、何をすればいい?)
失恋大明神・北村裕作に次ぐ鈍感なりに、竜児は考える。
亜美は寒いと言った。
それはわかるし、自分も寒さに身体を震わせている。
そんな自分が、寒いと言う亜美にしてやれること、亜美がしてほしいと望んでいることは何か。
(――――あ)
ちら、と傍らの亜美に目を向け、竜児は気付いた。
不機嫌が顔に出ている亜美の手は、始終コートのポケットに入れられたままだ。
寒いのだから当然の行動。
だが、だからこそ、恋人である自分に出来ることがあるはずだ。
よし、と心で意気込み、竜児は、
「亜美」
「………」
亜美からの返事はない。
うん、やはり拗ねている。
これを可愛い、と思ってしまうのは、本来の亜美の美貌故か、はたまた惚れた弱みか。
まぁどちらにせよ、このまま亜美に無視されてしまうのはよろしくない。
「……亜美ちゃん?」
ざっついずほわい。
そんなわけで、再び言い方を変えて呼んでみると、「キモい」との苦言付きで視線が返って来た。
流石に彼女から言われるとグサリと刺さるものがあるが、ともあれ亜美はちゃんとこちらを向いてくれた。
出来る限り優しく微笑んで、竜児はポケットの中の亜美の手をとる。
「うお、冷てっ」
亜美の手は、ポケットに入れていたにも拘わらず冷たかった。
「……何?」
「いや、その…。寒いんだった、手を繋げば寒くないかな、と…」
「…………はぁ?」
竜児の顔を訝しい顔で見ていた亜美だったが、
「……はぁ。ま、鈍感でウブウブな高須竜児君にはこれが限界か」
「な、何だよウブウブって。俺は別に――!」
苦笑を浮かべた亜美に反論しようとした竜児の言葉は、亜美の唇に遮られた。
「おまっ……!急に何するんだ!?」
「あれ?嫌だった?」
唇を離し、真っ赤になった竜児にクスリと亜美は笑うと、
「ま、竜児だし、ギリギリ合格としますか」
繋がれた手に、ぎゅっと力を入れた。
(本当は抱きしめて欲しかったんだけど…、ま、これはこれで)
繋がれた手が竜児のポケットへ誘われるのを見ながら、亜美は顔が緩むのを止められない。
片や竜児は、先程の亜美とのキスが忘れられない。
いつの間にやら、凍てつくような寒さは感じなく。
「……か、帰るか」
「えー。せっかく二人きりなんだからぁ、デートしようよぉ」
「お、おうっ…。そ、それもそうだな…」
「あは。だから亜美ちゃん、竜児の事、大好きだよ♪」
「……安心しろ。俺もだ」
二人見つめ合い、微笑んで。
春のような心持ちになった、そんな冬の帰り道。
End
PR
カウンター
カテゴリー
小説は下へ行くほど古いものになります。
最新コメント
リンク
ブログ内検索
最古記事
(02/04)
(02/04)
(02/04)
(02/04)
(02/04)