関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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どうも、関ヶ原です。
結局まだノートPCは返ってこず、とうとう我慢の限界が来ました。
……えぇ、してやりましたよ。
やってやりましたよ。
ねんがんの ですくとっぷぱそこん をてにいれたぞ!
はい。買いました。
それほど性能はよくないそうですが、私が使うのには十二分な奴を!
お値段も十万もしないロープライス。
テンションMAXです。
と、いうわけで、早速新作投下。
今年の秋はかなり寒いですよね。
なのでそれを題材にして、簡単な短文をノートの切れ端に書いておいたのです。
無事に完成してよかった……。
誤字、脱字等ありましたら教えてください。
相変わらず拙文ですが、よかったら見てください☆
では~ ノシ
寒秋
九月もあと数日を残して終わりを迎える今日この頃。
気温もすっかり低くなり、あの暑かった夏の存在など記憶の彼方に飛ばされたかのように寒くなった。
少し前まで外を歩けば、吹いていたのは熱風。しかし今は身震いしてしまう位の寒風だ。
その天候の中を、ハヤテとヒナギクは歩いていた。
「うぅ……寒い」
件の寒風を肌に受け、ヒナギクは呟く。
「いくら夏が終わったからって、急に気温変わりすぎでしょ……」
「季節の変わり目ですからねぇ」
うぅ寒い、とぶるっと肌を震わせるヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは言葉を返す。
「でも確かに、もう冬物の服を着ても可笑しくないくらいの寒さですね」
「でしょ? というか実際、私のこの上着も一応冬着なのよ?」
どう? と自身の姿を見せてくるヒナギクに目をやれば、なるほど。
ヒナギクの上着は確かに、九月の下旬に着るには少々厚いものに見える。
「……流石に暑くないですか、それ?」
「全然? 生地は厚いけどね」
寧ろまだ寒いくらいよ、とヒナギク。
そこまで厚着をしているのにまだ寒いというヒナギクに、実は風邪でも引いてるんじゃないか、とハヤテは少しばかり思う。
(まぁでもヒナギクさんを見る限り、そういうことは無さそうだな)
しかしすぐ考えを改めた。
ヒナギクを見ても熱はなさそうだし、本当にただ寒いだけらしい。
だが、いくら気温が下がったとはいえ、寒がるにはちょっとオーバーな格好に見えることも事実なのだ。
「でも今からそんなに着込んで、冬はどうするんです?」
「うーん……そうなのよねぇ」
「そうなのよねって……まだ冬まで数ヶ月もあるのに、今から冬の格好してたら冬に着るものなくなるでしょう?」
冬前――つまり秋なわけだが、もともと冬の寒さ対策のための衣類を秋に着てしまっては、今よりも寒くなるであろう冬の時に着てもあまり暖かいと感じないのではないだろうか。
現に秋に冬物を着ても寒いと言っている位なのだから。
ハヤテの尤もな意見に、今度はヒナギクが苦笑した。
「でも、わかってはいても寒いものは寒いのよ」
「それはわかりますよ。僕だって、無理をしてヒナギクさんに風邪とかひいてほしくないですから。……でも、冬辛いですよ?」
「まぁ何とかなるんじゃないかしら」
「なりますか?」
まるで他人事のように答えるヒナギクを、ハヤテは不思議に思った。
「ちなみに大丈夫と思う理由は?」
不思議に思ったから、問。
その問いに、ヒナギクは笑顔で答えた。
「仮に冬着だけで寒かったら、ハヤテ君に暖めてもらうもの」
「…………なるほど」
だから安心なのよ、というヒナギクにそう言われては、ハヤテは何も言えない。
何故なら。
「それなら大丈夫ですね。僕が太鼓判を押すくらい、安心です」
「ふふっ。そうでしょ?」
彼女にそんな頼まれごとをされたら、喜んで彼女を抱きしめる自分の姿が容易に想像できてしまうから。
そんな自分に笑ってしまう。
「じゃあハヤテ君」
「はい、なんでしょう?」
そんなことを思うハヤテの腕に、ヒナギクが腕を絡めてきた。
そして満面の笑みで、言う。
「私、今冬着なんだけど……寒いのよね」
「……」
「暖めて?」
その顔を見て、魅入って、ハヤテ。
「…………あはは。分かりました、分かりましたよ」
全く本当に、ヒナギクには敵わない。
ハヤテはもう一度小さく笑うと、満面の笑みの眼前の少女を、想像した通りに、優しく抱きしめた。
例年よりも少しばかり寒さを感じる秋の中、抱きしめたヒナギクは、とても暖かかった。
End
結局まだノートPCは返ってこず、とうとう我慢の限界が来ました。
……えぇ、してやりましたよ。
やってやりましたよ。
ねんがんの ですくとっぷぱそこん をてにいれたぞ!
はい。買いました。
それほど性能はよくないそうですが、私が使うのには十二分な奴を!
お値段も十万もしないロープライス。
テンションMAXです。
と、いうわけで、早速新作投下。
今年の秋はかなり寒いですよね。
なのでそれを題材にして、簡単な短文をノートの切れ端に書いておいたのです。
無事に完成してよかった……。
誤字、脱字等ありましたら教えてください。
相変わらず拙文ですが、よかったら見てください☆
では~ ノシ
寒秋
九月もあと数日を残して終わりを迎える今日この頃。
気温もすっかり低くなり、あの暑かった夏の存在など記憶の彼方に飛ばされたかのように寒くなった。
少し前まで外を歩けば、吹いていたのは熱風。しかし今は身震いしてしまう位の寒風だ。
その天候の中を、ハヤテとヒナギクは歩いていた。
「うぅ……寒い」
件の寒風を肌に受け、ヒナギクは呟く。
「いくら夏が終わったからって、急に気温変わりすぎでしょ……」
「季節の変わり目ですからねぇ」
うぅ寒い、とぶるっと肌を震わせるヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは言葉を返す。
「でも確かに、もう冬物の服を着ても可笑しくないくらいの寒さですね」
「でしょ? というか実際、私のこの上着も一応冬着なのよ?」
どう? と自身の姿を見せてくるヒナギクに目をやれば、なるほど。
ヒナギクの上着は確かに、九月の下旬に着るには少々厚いものに見える。
「……流石に暑くないですか、それ?」
「全然? 生地は厚いけどね」
寧ろまだ寒いくらいよ、とヒナギク。
そこまで厚着をしているのにまだ寒いというヒナギクに、実は風邪でも引いてるんじゃないか、とハヤテは少しばかり思う。
(まぁでもヒナギクさんを見る限り、そういうことは無さそうだな)
しかしすぐ考えを改めた。
ヒナギクを見ても熱はなさそうだし、本当にただ寒いだけらしい。
だが、いくら気温が下がったとはいえ、寒がるにはちょっとオーバーな格好に見えることも事実なのだ。
「でも今からそんなに着込んで、冬はどうするんです?」
「うーん……そうなのよねぇ」
「そうなのよねって……まだ冬まで数ヶ月もあるのに、今から冬の格好してたら冬に着るものなくなるでしょう?」
冬前――つまり秋なわけだが、もともと冬の寒さ対策のための衣類を秋に着てしまっては、今よりも寒くなるであろう冬の時に着てもあまり暖かいと感じないのではないだろうか。
現に秋に冬物を着ても寒いと言っている位なのだから。
ハヤテの尤もな意見に、今度はヒナギクが苦笑した。
「でも、わかってはいても寒いものは寒いのよ」
「それはわかりますよ。僕だって、無理をしてヒナギクさんに風邪とかひいてほしくないですから。……でも、冬辛いですよ?」
「まぁ何とかなるんじゃないかしら」
「なりますか?」
まるで他人事のように答えるヒナギクを、ハヤテは不思議に思った。
「ちなみに大丈夫と思う理由は?」
不思議に思ったから、問。
その問いに、ヒナギクは笑顔で答えた。
「仮に冬着だけで寒かったら、ハヤテ君に暖めてもらうもの」
「…………なるほど」
だから安心なのよ、というヒナギクにそう言われては、ハヤテは何も言えない。
何故なら。
「それなら大丈夫ですね。僕が太鼓判を押すくらい、安心です」
「ふふっ。そうでしょ?」
彼女にそんな頼まれごとをされたら、喜んで彼女を抱きしめる自分の姿が容易に想像できてしまうから。
そんな自分に笑ってしまう。
「じゃあハヤテ君」
「はい、なんでしょう?」
そんなことを思うハヤテの腕に、ヒナギクが腕を絡めてきた。
そして満面の笑みで、言う。
「私、今冬着なんだけど……寒いのよね」
「……」
「暖めて?」
その顔を見て、魅入って、ハヤテ。
「…………あはは。分かりました、分かりましたよ」
全く本当に、ヒナギクには敵わない。
ハヤテはもう一度小さく笑うと、満面の笑みの眼前の少女を、想像した通りに、優しく抱きしめた。
例年よりも少しばかり寒さを感じる秋の中、抱きしめたヒナギクは、とても暖かかった。
End
PR
どうも関ヶ原です。
言っておいた通り、新作です。
といってもすでにピクシブのほうでは挙がっているのですが(汗
今回は普通のハヤヒナを書かせていただきました。
理由は特にないです(笑
ただ初めてピクシブの方に小説をアップするので、普通のほうがいいかなと思ったので。
相変わらずの拙文ですが、良かったら見てくださいね!
では~ ☆
『夏の日』
「暑いわ」
八月も中旬にさしかかり、テレビでは連日甲子園が流れている、そんな夏の日。
生徒会室の椅子に腰掛けながら、ヒナギクさんがそんなことを言った。
「暑いですねぇ」
白皇学院は現在夏休み真っ只中。
しかし生徒会長であるヒナギクさんには、そんな長期休暇でも仕事があるらしい。
どこまで生徒任せな学校なのだろうか、と思わなくもない。
「ていうか、ハヤテ君はどうしてここにいるのよ? 生徒会の役員でもないのに」
休暇が休暇じゃなくなっているヒナギクさんに心の中で同情していると、件のヒナギクさんが僕に問いかけてきた。
ナギお嬢様の執事である僕が、仕事もしないでここにいるのだから不思議に思うのも無理はない。
「まぁ……理由なんていいじゃないですか」
「良くないわよ。仕事手伝ってもらってるこっちとしては非常にありがたい話だけど」
まぁこっちの方が話が書きやすいだとか、そんなご都合主義的な理由もあるのだけれど、実際の理由は別にあったりもする。
ヒナギクさんには、言えないけれど。
言えないからこそ、はぐらかすしかないのだ。
「ありがたい話なら、別にいいでしょ?」
「……それで済ませると、なんだかパッとしないのよ」
ハヤテ君だって仕事あるんでしょ? と言いながら、ヒナギクさんは頬を机にくっつける。
「何してるんですか?」
「いや……冷たいのかなーって」
その姿勢のまま答えたヒナギクさんに、思わず苦笑する。
「仕事放棄ですか?」
「ハヤテ君が曖昧なこと言うからよ」
余計なこと考えて、余計に熱くなっちゃったじゃない、とはヒナギクさんの言葉。
考えることも放棄してくれたらしい。
そりゃ、この暑さなわけだし、少しでも涼しいものがあれば縋りたくなる気持ちもわからなくないけれど、それでもヒナギクさんのその姿は、なんだかとても可愛らしいものがある。
「それはすいません。でもヒナギクさん」
「何よ?」
「ヒナギクさんのその格好、何だか可愛いですね」
「―――っ」
僕がここにいる理由をはぐらかしてしまったので、今度は思ったことを率直に言ってみよう。
そういうわけで言ってみたわけだが、そのせいでヒナギクさんの顔が真っ赤になった。
「な、な、何言い出すのよ突然!?」
机にはっつけていた顔を勢い良く離し、叫ぶようにヒナギクさんが僕に言う。
「か、か、か……」
「いや……思ったことをそのまま言っただけですけど」
「だから!」
その顔は相変わらず赤いままで、照れているのだろう、言葉の後半は小さくて聞き取れない。
……うん。可愛い。
「暑くてだらけているヒナギクさんが可愛かったものですから、つい本音がポロッと」
「本音って……! うぅ……」
別にからかっているわけでもなく、面白がっているつもりもない。
可愛いと思ったから、可愛いと言っただけ。
ただそのせいで、ヒナギクさんの体温がかなり上昇しているように見える。
今にも倒れそうな位に顔も赤いし。
「あはは、すいません。驚かせるつもりはなかったんですけど」
「つもりはなかったって……かなり驚いたわよ。倒れるかと思ったわ」
あー暑い、と手でぱたぱたと顔を仰ぐヒナギクさん。
「…………」
「? どうしたのハヤテ君? 私の顔に何か付いてる?」
「いや……」
その行動を可愛いと思ってしまうのは、きっと僕だけじゃないはず。
「やっぱり、可愛いですねヒナギクさんは」
「―――!!」
だから考える前に口に出して言ってしまうのは、仕方のないこと。
もはや、反射の域といっても過言ではない。
「あれ? ヒナギクさん?」
「…………」
「ヒナギクさーん?」
「……うぅ」
ヒナギクさんの顔の熱が下がったのはほんの一瞬で、僕の言葉によって再びその顔は真っ赤になった。
ただ今回違うのは、大きな声が返ってこないということと。
「…………」
そのまま、机に伏せてしまったこと。
「頭から湯気が出てる……」
「……誰のせいよ」
言葉を返す気力すら奪われたかのような、小さな返答だった。
「もぅ……ハヤテ君の馬鹿。ヘンタイ」
「ヘンタイは言いすぎかと」
苦笑はするが、笑顔にもなる。
こうしてヒナギクさんと話す時間が楽しいから。
「ハヤテ君のせいで、仕事に集中できないじゃない……」
「それじゃあもう少し、僕と話しましょう」
僕が生徒会室にいる理由。
ご都合主義とか、そんなことを言ったのだけれど本当の理由は。
「僕はもっとヒナギクさんとお話したいので」
好きな女の子と一緒にいたいから。
こんな理由できっと彼女は納得しないだろうけど、もっと可愛い姿をみせてくれるはずだろう。
そんなことを考えてしまう僕こそ、ひょっとしたら暑さでおかしくなっているのかもしれない。
End
言っておいた通り、新作です。
といってもすでにピクシブのほうでは挙がっているのですが(汗
今回は普通のハヤヒナを書かせていただきました。
理由は特にないです(笑
ただ初めてピクシブの方に小説をアップするので、普通のほうがいいかなと思ったので。
相変わらずの拙文ですが、良かったら見てくださいね!
では~ ☆
『夏の日』
「暑いわ」
八月も中旬にさしかかり、テレビでは連日甲子園が流れている、そんな夏の日。
生徒会室の椅子に腰掛けながら、ヒナギクさんがそんなことを言った。
「暑いですねぇ」
白皇学院は現在夏休み真っ只中。
しかし生徒会長であるヒナギクさんには、そんな長期休暇でも仕事があるらしい。
どこまで生徒任せな学校なのだろうか、と思わなくもない。
「ていうか、ハヤテ君はどうしてここにいるのよ? 生徒会の役員でもないのに」
休暇が休暇じゃなくなっているヒナギクさんに心の中で同情していると、件のヒナギクさんが僕に問いかけてきた。
ナギお嬢様の執事である僕が、仕事もしないでここにいるのだから不思議に思うのも無理はない。
「まぁ……理由なんていいじゃないですか」
「良くないわよ。仕事手伝ってもらってるこっちとしては非常にありがたい話だけど」
まぁこっちの方が話が書きやすいだとか、そんなご都合主義的な理由もあるのだけれど、実際の理由は別にあったりもする。
ヒナギクさんには、言えないけれど。
言えないからこそ、はぐらかすしかないのだ。
「ありがたい話なら、別にいいでしょ?」
「……それで済ませると、なんだかパッとしないのよ」
ハヤテ君だって仕事あるんでしょ? と言いながら、ヒナギクさんは頬を机にくっつける。
「何してるんですか?」
「いや……冷たいのかなーって」
その姿勢のまま答えたヒナギクさんに、思わず苦笑する。
「仕事放棄ですか?」
「ハヤテ君が曖昧なこと言うからよ」
余計なこと考えて、余計に熱くなっちゃったじゃない、とはヒナギクさんの言葉。
考えることも放棄してくれたらしい。
そりゃ、この暑さなわけだし、少しでも涼しいものがあれば縋りたくなる気持ちもわからなくないけれど、それでもヒナギクさんのその姿は、なんだかとても可愛らしいものがある。
「それはすいません。でもヒナギクさん」
「何よ?」
「ヒナギクさんのその格好、何だか可愛いですね」
「―――っ」
僕がここにいる理由をはぐらかしてしまったので、今度は思ったことを率直に言ってみよう。
そういうわけで言ってみたわけだが、そのせいでヒナギクさんの顔が真っ赤になった。
「な、な、何言い出すのよ突然!?」
机にはっつけていた顔を勢い良く離し、叫ぶようにヒナギクさんが僕に言う。
「か、か、か……」
「いや……思ったことをそのまま言っただけですけど」
「だから!」
その顔は相変わらず赤いままで、照れているのだろう、言葉の後半は小さくて聞き取れない。
……うん。可愛い。
「暑くてだらけているヒナギクさんが可愛かったものですから、つい本音がポロッと」
「本音って……! うぅ……」
別にからかっているわけでもなく、面白がっているつもりもない。
可愛いと思ったから、可愛いと言っただけ。
ただそのせいで、ヒナギクさんの体温がかなり上昇しているように見える。
今にも倒れそうな位に顔も赤いし。
「あはは、すいません。驚かせるつもりはなかったんですけど」
「つもりはなかったって……かなり驚いたわよ。倒れるかと思ったわ」
あー暑い、と手でぱたぱたと顔を仰ぐヒナギクさん。
「…………」
「? どうしたのハヤテ君? 私の顔に何か付いてる?」
「いや……」
その行動を可愛いと思ってしまうのは、きっと僕だけじゃないはず。
「やっぱり、可愛いですねヒナギクさんは」
「―――!!」
だから考える前に口に出して言ってしまうのは、仕方のないこと。
もはや、反射の域といっても過言ではない。
「あれ? ヒナギクさん?」
「…………」
「ヒナギクさーん?」
「……うぅ」
ヒナギクさんの顔の熱が下がったのはほんの一瞬で、僕の言葉によって再びその顔は真っ赤になった。
ただ今回違うのは、大きな声が返ってこないということと。
「…………」
そのまま、机に伏せてしまったこと。
「頭から湯気が出てる……」
「……誰のせいよ」
言葉を返す気力すら奪われたかのような、小さな返答だった。
「もぅ……ハヤテ君の馬鹿。ヘンタイ」
「ヘンタイは言いすぎかと」
苦笑はするが、笑顔にもなる。
こうしてヒナギクさんと話す時間が楽しいから。
「ハヤテ君のせいで、仕事に集中できないじゃない……」
「それじゃあもう少し、僕と話しましょう」
僕が生徒会室にいる理由。
ご都合主義とか、そんなことを言ったのだけれど本当の理由は。
「僕はもっとヒナギクさんとお話したいので」
好きな女の子と一緒にいたいから。
こんな理由できっと彼女は納得しないだろうけど、もっと可愛い姿をみせてくれるはずだろう。
そんなことを考えてしまう僕こそ、ひょっとしたら暑さでおかしくなっているのかもしれない。
End
どうもこんばんわ、関ヶ原です。
言っていた通り、新作です。
今回の話は原作からネタを貰いました。
コミックス派の方はコミックスを買った際、なんの話なのか確認してみてくださいね!
深夜でテンションがおかしいです。
文章もおかしいかもしれません。
でも気にしません。
ワードのスペルチェックを信じてますから!
間違っていた部分等ありましたら颯の如く直します。
よく見られるのが空白ミスや字被りなんですよね……。
うp前にチェックしてるんですが、それでもミスがあるのは関ヶ原七不思議です。
視力落ちたのかな……今まで生きてきて落ちたこと一回もないのに……。
まぁそんな与太話はここまでにして、良かったら読んでみてください。
それでは~☆
「そういえば」
期末試験が終わって、我が白皇学院では夏休みが始まっていた。
といっても課題は多いし、三年生にとっては全然休みではない時期なのだけど。
「ヒナギクさん、耐性が付きましたよね」
「は?」
そんな時期。
私の部屋でテーブル向かいに座っていたハヤテ君が唐突に言った言葉に、私は頭に疑問符を浮かべた。
「耐性?」
「はい、耐性」
頷くハヤテ君を見て何のことだろうかと考える。
しかし全然、皆目見当も付かない。
「えーと……ハヤテ君、何の話かしら?」
ここは素直に聞いたほうが手っ取り早いだろう、ということでハヤテ君に問いかけると、
「恋愛の耐性が付いたなぁ、と思いまして」
―――そんなお返事が返ってきた。
「……恋愛?」
「はい。恋愛の耐性です」
………………はい?
『恋愛耐性』
三点リーダを六個も使ってしまったが、相変わらずハヤテ君の言っていることが理解できない私がいた。
(え? 何? 恋愛? 耐性?)
ハヤテ君の言葉を頭で何度もリピートするが、全然意味が分からない。
というか、手っ取り早く答えを知ろうと思って聞いたのに、ますますこんがらがった気がする。
「あのー……ハヤテ君?」
「はい、何でしょう?」
ニコり、と優しげな笑みを浮かべてハヤテ君がこちらを見た。
思わずときめいてしまったがしかし、今は言葉の意味を理解しないと。
「その……どういう意味?」
素直に聞いたからこんがらがってしまったのだけど、それでもまた聞くしかない。
だって、分からないんだもの。
「恋愛の耐性ってどういうこと?」
恋愛と耐性のそれぞれの意味なら分かるけれど、その二つの単語がどういう意味を持って組み合わさるのかが分からない。
頭の疑問符を増やしながらハヤテ君の解答を待っていると、
「あ、すいません。伝わりにくかったですね」
にくかった、というか伝わらなかったんだけど。
脳内でそうツッコミを入れて、ハヤテ君の言葉の続きを待つ。
「まぁ簡単に言いますと、恋愛に慣れてきたってことです」
ハヤテ君は、そう言葉を続けた。
「……慣れる? 恋愛に?」
「はい」
なるほど、先ほどよりは分かりやすい答えになったのだけど……。
「……それってなんだか、私が悪い女みたいに聞こえるのだけど……」
恋愛に慣れている、って確かそういう意味合いがあったんじゃないっけ? 詳しくは分からないんだけど。
付き合ったことのある男の人が多いから、恋愛慣れしてるっていう。
「あれ? ひょっとして私、ハヤテ君に誤解されてるの?」
「え?」
だって、つまりハヤテ君は私のことを『恋愛経験豊富な女』って認識してるってことになるじゃない。
……そんな!
「失礼ね! ハヤテ君以外と付き合ったことなんてないわよ!」
「すいませんすいません! そういう意味じゃないんです!」
「じゃあどういう意味よ!」
大好きな人にそんなことを思われていたなんて、怒り心頭というよりも、悲しさのほうが大きい。
初恋の相手が彼氏なのに、どうやって他の男の子と付き合えっていうのよ……。
「これですよ、これ!」
憤る私に、酷く慌てた様子でハヤテ君はテーブルのグラスを指差した。
ハヤテ君が来たときに私が持ってきたのだ。
私のコップは空だけど、ハヤテ君のはまだ少し残っている。
「? これがどうしたっていうのよ」
「さっきヒナギクさん、僕のコップに口をつけましたよね」
「え? まぁハヤテ君のコップで飲んだけど……」
それがどうしたというのだろうか。
もし話を逸らそうというのなら、そんなことで話を逸らせるほど私は甘くない。
というか、もしそうならハヤテ君に幻滅する。
「だから! それがどうしたというのよ!」
「それってほら、間接キスじゃないですか」
「……へ?」
ハヤテ君が続けた言葉に、ぽかんとなる。
間接キス?
「付き合い始めの頃とか、手を繋ぐだけでもヒナギクさんは恥ずかしがっていたでしょう? だから、平然と間接キスをするヒナギクさんを見て、慣れたなぁと思ったんですよ」
……えーと。
「あ、恋愛慣れってそういうこと?」
「そうですそうです。だから、別にヒナギクさんが軽い女とか、そんな意味じゃ全くないんですよ」
誤解させる言い方ですいません、とハヤテ君は頭を下げた。
それを見て、私は安堵の息をもらす。
「良かった……。もしハヤテ君にそんな風に思われていたんだったら、ハヤテ君を殺して私も死ぬところだったわよ」
「あはは……それは急死に一生を得ました」
ちなみに冗談で言ったわけでなかったりする。
しかし本当に良かった。
「もう……慌てさせないでよね」
「本当にすいません」
「私はハヤテ君一筋なんだから」
私はそう言って、もう一度ハヤテ君の飲み物を口に含む。
大きな声を出したから喉が渇いてしまった。
「んー」
「どうしました?」
「いや……」
冷たい飲み物が喉を通るのを感じながら、ハヤテ君の言葉を考えてみる。
確かに、ハヤテ君の言う通りかもしれない。
「私、あまり照れなくなったわね、確かに」
「でしょ?」
「うん」
付き合い始めの頃は実際、手を繋ぐどころか一緒に帰ることすら照れくさかったものだ。
間接キスなんて論外もいいところ。
「間接キスが全然恥ずかしいとは思えなくなってるもの、私」
それが今は、こんなにも平然とハヤテ君の飲んだ物を口に含むことが出来る。
随分と進歩したものだ、としみじみ思う。恋愛に進歩があるかどうかは分からないけれど。
「これが慣れっていうのなら、確かにそうかもしれないわ」
「でも慣れるのは良いことだと思います」
「そうなの?」
「はい」
だって、とハヤテ君は言葉を続けた。
「それって今以上にヒナギクさんと仲良く出来るってことじゃないですか」
「へ?」
「今までは手を握っても恥ずかしがられてましたけど、そういうのが大丈夫だってことですし」
「まぁ……そうだけど」
改めて言われると照れる。
慣れたって言ったって恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「あれ? ヒナギクさん照れてます?」
「……うるさいわね。誰のせいよ」
「ヒナギクさん、可愛いです」
「……ふんだ」
まずそのニヤケ顔をやめてくれないかしら? 腹が立つから。
そんなことを言っても、この赤い顔をどうにかしないと意味がないと思うけれど。
「あれ? もう少し慌てると思ったんですけど」
「……余り私を甘く見ないで貰いたいわね」
意味がないと思うけれど、悔しいから反抗。
ジト目でハヤテ君を睨みながらそう言うと、
「はは、すいません」
「…………」
相変わらずの笑顔で笑っていた。
その顔は正直言って、ずるいと思う。
「ヒナギクさん」
「……何よ」
「キス、しましょうか」
その顔でそんなこと言われたら、嫌なんて言えないじゃない。
「……そういうのは一々確認しないで勝手にしなさいよ」
「え?」
だから。
―――素直に頷きたくないから、こう言ってやるのだ。
「――――恋愛耐性、付いたんでしょ?」
もう少し耐性が付いたのなら、今度はこっちからハヤテ君を照れさせてやろう。
そんなことを思いながら、私は目を閉じてハヤテ君の唇を待つ。
End
言っていた通り、新作です。
今回の話は原作からネタを貰いました。
コミックス派の方はコミックスを買った際、なんの話なのか確認してみてくださいね!
深夜でテンションがおかしいです。
文章もおかしいかもしれません。
でも気にしません。
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よく見られるのが空白ミスや字被りなんですよね……。
うp前にチェックしてるんですが、それでもミスがあるのは関ヶ原七不思議です。
視力落ちたのかな……今まで生きてきて落ちたこと一回もないのに……。
まぁそんな与太話はここまでにして、良かったら読んでみてください。
それでは~☆
「そういえば」
期末試験が終わって、我が白皇学院では夏休みが始まっていた。
といっても課題は多いし、三年生にとっては全然休みではない時期なのだけど。
「ヒナギクさん、耐性が付きましたよね」
「は?」
そんな時期。
私の部屋でテーブル向かいに座っていたハヤテ君が唐突に言った言葉に、私は頭に疑問符を浮かべた。
「耐性?」
「はい、耐性」
頷くハヤテ君を見て何のことだろうかと考える。
しかし全然、皆目見当も付かない。
「えーと……ハヤテ君、何の話かしら?」
ここは素直に聞いたほうが手っ取り早いだろう、ということでハヤテ君に問いかけると、
「恋愛の耐性が付いたなぁ、と思いまして」
―――そんなお返事が返ってきた。
「……恋愛?」
「はい。恋愛の耐性です」
………………はい?
『恋愛耐性』
三点リーダを六個も使ってしまったが、相変わらずハヤテ君の言っていることが理解できない私がいた。
(え? 何? 恋愛? 耐性?)
ハヤテ君の言葉を頭で何度もリピートするが、全然意味が分からない。
というか、手っ取り早く答えを知ろうと思って聞いたのに、ますますこんがらがった気がする。
「あのー……ハヤテ君?」
「はい、何でしょう?」
ニコり、と優しげな笑みを浮かべてハヤテ君がこちらを見た。
思わずときめいてしまったがしかし、今は言葉の意味を理解しないと。
「その……どういう意味?」
素直に聞いたからこんがらがってしまったのだけど、それでもまた聞くしかない。
だって、分からないんだもの。
「恋愛の耐性ってどういうこと?」
恋愛と耐性のそれぞれの意味なら分かるけれど、その二つの単語がどういう意味を持って組み合わさるのかが分からない。
頭の疑問符を増やしながらハヤテ君の解答を待っていると、
「あ、すいません。伝わりにくかったですね」
にくかった、というか伝わらなかったんだけど。
脳内でそうツッコミを入れて、ハヤテ君の言葉の続きを待つ。
「まぁ簡単に言いますと、恋愛に慣れてきたってことです」
ハヤテ君は、そう言葉を続けた。
「……慣れる? 恋愛に?」
「はい」
なるほど、先ほどよりは分かりやすい答えになったのだけど……。
「……それってなんだか、私が悪い女みたいに聞こえるのだけど……」
恋愛に慣れている、って確かそういう意味合いがあったんじゃないっけ? 詳しくは分からないんだけど。
付き合ったことのある男の人が多いから、恋愛慣れしてるっていう。
「あれ? ひょっとして私、ハヤテ君に誤解されてるの?」
「え?」
だって、つまりハヤテ君は私のことを『恋愛経験豊富な女』って認識してるってことになるじゃない。
……そんな!
「失礼ね! ハヤテ君以外と付き合ったことなんてないわよ!」
「すいませんすいません! そういう意味じゃないんです!」
「じゃあどういう意味よ!」
大好きな人にそんなことを思われていたなんて、怒り心頭というよりも、悲しさのほうが大きい。
初恋の相手が彼氏なのに、どうやって他の男の子と付き合えっていうのよ……。
「これですよ、これ!」
憤る私に、酷く慌てた様子でハヤテ君はテーブルのグラスを指差した。
ハヤテ君が来たときに私が持ってきたのだ。
私のコップは空だけど、ハヤテ君のはまだ少し残っている。
「? これがどうしたっていうのよ」
「さっきヒナギクさん、僕のコップに口をつけましたよね」
「え? まぁハヤテ君のコップで飲んだけど……」
それがどうしたというのだろうか。
もし話を逸らそうというのなら、そんなことで話を逸らせるほど私は甘くない。
というか、もしそうならハヤテ君に幻滅する。
「だから! それがどうしたというのよ!」
「それってほら、間接キスじゃないですか」
「……へ?」
ハヤテ君が続けた言葉に、ぽかんとなる。
間接キス?
「付き合い始めの頃とか、手を繋ぐだけでもヒナギクさんは恥ずかしがっていたでしょう? だから、平然と間接キスをするヒナギクさんを見て、慣れたなぁと思ったんですよ」
……えーと。
「あ、恋愛慣れってそういうこと?」
「そうですそうです。だから、別にヒナギクさんが軽い女とか、そんな意味じゃ全くないんですよ」
誤解させる言い方ですいません、とハヤテ君は頭を下げた。
それを見て、私は安堵の息をもらす。
「良かった……。もしハヤテ君にそんな風に思われていたんだったら、ハヤテ君を殺して私も死ぬところだったわよ」
「あはは……それは急死に一生を得ました」
ちなみに冗談で言ったわけでなかったりする。
しかし本当に良かった。
「もう……慌てさせないでよね」
「本当にすいません」
「私はハヤテ君一筋なんだから」
私はそう言って、もう一度ハヤテ君の飲み物を口に含む。
大きな声を出したから喉が渇いてしまった。
「んー」
「どうしました?」
「いや……」
冷たい飲み物が喉を通るのを感じながら、ハヤテ君の言葉を考えてみる。
確かに、ハヤテ君の言う通りかもしれない。
「私、あまり照れなくなったわね、確かに」
「でしょ?」
「うん」
付き合い始めの頃は実際、手を繋ぐどころか一緒に帰ることすら照れくさかったものだ。
間接キスなんて論外もいいところ。
「間接キスが全然恥ずかしいとは思えなくなってるもの、私」
それが今は、こんなにも平然とハヤテ君の飲んだ物を口に含むことが出来る。
随分と進歩したものだ、としみじみ思う。恋愛に進歩があるかどうかは分からないけれど。
「これが慣れっていうのなら、確かにそうかもしれないわ」
「でも慣れるのは良いことだと思います」
「そうなの?」
「はい」
だって、とハヤテ君は言葉を続けた。
「それって今以上にヒナギクさんと仲良く出来るってことじゃないですか」
「へ?」
「今までは手を握っても恥ずかしがられてましたけど、そういうのが大丈夫だってことですし」
「まぁ……そうだけど」
改めて言われると照れる。
慣れたって言ったって恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「あれ? ヒナギクさん照れてます?」
「……うるさいわね。誰のせいよ」
「ヒナギクさん、可愛いです」
「……ふんだ」
まずそのニヤケ顔をやめてくれないかしら? 腹が立つから。
そんなことを言っても、この赤い顔をどうにかしないと意味がないと思うけれど。
「あれ? もう少し慌てると思ったんですけど」
「……余り私を甘く見ないで貰いたいわね」
意味がないと思うけれど、悔しいから反抗。
ジト目でハヤテ君を睨みながらそう言うと、
「はは、すいません」
「…………」
相変わらずの笑顔で笑っていた。
その顔は正直言って、ずるいと思う。
「ヒナギクさん」
「……何よ」
「キス、しましょうか」
その顔でそんなこと言われたら、嫌なんて言えないじゃない。
「……そういうのは一々確認しないで勝手にしなさいよ」
「え?」
だから。
―――素直に頷きたくないから、こう言ってやるのだ。
「――――恋愛耐性、付いたんでしょ?」
もう少し耐性が付いたのなら、今度はこっちからハヤテ君を照れさせてやろう。
そんなことを思いながら、私は目を閉じてハヤテ君の唇を待つ。
End
皆様こんばんわ。
関ヶ原です。
七夕から四日も過ぎた今頃に、七夕ネタをうpしようと思います。
深夜のテンションで書いたので、ひょっとしたら誤字脱字があるかもしれません。
それ以上に、内容が、文章が……分かり辛い(個人的に)。
分かってもらえるように書いたとは思うんですが、自分でも激しく心配です。
日本語でおk、とか書かれてたらアワワワワってなります。
そのぐらいに不安です。
短冊に願い事書くなら『文章力が欲しい』と『就活のときちゃんと内定貰えます様に』で決まりです。
作中でも書いたんですが、願いって自分で叶えるから願いなんで。
自力で叶えちゃろうと思います。
それでは久方の更新になってしまいましたが、よければ見てやってください。
コメントとかあると嬉しいです。
それではどうぞ~☆
『願うこと、叶えること』
七月七日。
七月の初旬。
節日。
織姫と彦星が年に一度会うことの出来る日。
七夕。
だからといって本日、七夕にクラスで笹に短冊を吊るしましょう、なんてイベントは白皇学院にはない。
いや、正確には、高校生にもなっては、ない。
白皇学院の初等部や中等部でも、短冊に願いごとを書いて吊るしているクラスなど数えるくらいらしい。
にも関わらず、ここ桂雪路が担任を務めるクラス――ハヤテとヒナギクのクラスだ――では、何を血迷ったのか、クラス全員が短冊に願いごとを書いている真っ最中であった。
「……高校生にもなって短冊にお願い事だなんて……何考えてるんだ雪路は」
「にゃはは……でも面白そうじゃない?」
「それはお前だけだ、泉」
美希と理沙のため息交じりの言葉も、頷きたくなる。
わざわざ世界史の授業を一時間潰し短冊に願い事など、ゆとり教育にも程がある。
ゆとりの代表といっても過言ではない生徒会の三馬鹿娘、そのうち二人もがうんざりするのだから、雪路の所業は相当なのだろう。
授業が潰れる嬉しさよりも、恥ずかしさが勝る。
「願い事なんて何も思い浮かばないぞ……」
「奇遇だな、私もだ」
「夢がないなぁ二人とも」
そんな三人娘が短冊にそれぞれの思いを述べる傍ら、ヒナギクとハヤテも各々の願いに頭を悩ましている最中であった。
「悩むわね……」
「悩みますね……」
短冊に願い事を書くこと自体に不満があるわけではない。
ただ、何を書けばよいのかわからないのだ。
「願い、ねぇ……ハヤテ君は何かある?」
「そうですねぇ……これと言っては何も……」
ヒナギクの言葉にハヤテが答え、二人そろって溜息を吐く。
元々そんなに欲のない二人だけに、急に願いごとを書けと言われても困るのであった。
「いきなり願いごとを書けって言われても難しいんですよね」
「私も。願うくらいなら自分で叶えるわ」
「あはは。ヒナギクさんらしいですね」
ふん、と(悲しいくらいに小さな)胸を張るヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは伊澄たちと共にいるナギの方を見た。
「お嬢様たちはどうなんでしょうかね?」
「ナギ?」
「はい。お嬢様ならどんなこと書くのかな、と思いまして」
「なるほど。確かにちょっと気になるかも」
「ええ。それにほら、参考になるかもしれないじゃないですか、願い事の」
そう言って、ハヤテとヒナギクはナギたちの方に耳を傾ける。
それほど距離が離れていないためか、楽しそうなナギたちの会話が耳に入ってくる。
『伊澄はなんて書いたんだ?』
『え? 私は……母がもっとしっかりしますように、って……』
『……その願い、家族全員が、ってのに直したほうが良いと思うぞ』
『? 私はしっかりしてるから大丈夫……。それよりナギは? なんて書いたの……?』
『私か? 私は勿論、私の漫画が一兆冊売れますように、だ!』
『それなら願わなくても叶うと思う……。ナギの漫画面白いから……』
『む? そうか! でもまぁこれで良いや。願っておいて損はないしな』
『そうね……』
「…………」
「…………」
耳に入ってくる会話に、二人の反応は、無言。
ひたすら、無言だった。
「…………」
「…………」
ボケ役二人によるボケボケな楽しげな様子に、ツッコむことが出来ないのである。
「……参考にはならなさそうね」
「ですね……」
長い無言の後分かったことは、他人の願いは参考にならない、ということだった。
「結局自分で考えるしかないみたいですね」
「まぁそれが普通なんだろうけど」
短冊と向き合い、二人はまた溜息を吐いた。
眼前の細長い紙には、相変わらず何も書かれていない。
右手のペンを徒に動かすだけ。
「本当、なんて書けばいいのかしら?」
ヒナギクの呟きに、そうですね、とハヤテが口を開く。
「お嬢様が真人間になりますように、とか?」
「あの子たちが真面目に仕事をする、とか?」
「…………」
「…………」
二度目の沈黙。
「……それは願っても無駄な気がします」
「奇遇ね。私も同じこと思った」
そして三度目の溜息。
どうしよう。願い事が何もない。
余りにも願いのない自分自身に、ハヤテとヒナギクは段々頭痛がしてきた。
「私達ってこんなに願望がない人間だったのね……」
「僕はともかく……ヒナギクさんは願わずとも自力で叶えますからね」
「そんなことないわよ。私だって出来ないこと、一杯あるんだから」
買い被りすぎよ、と言ったところで、ヒナギクはふと、思った。
「自力で叶える……?」
「? どうしました?」
「いや、さっき私、願うくらいなら自力で叶えるって言ったじゃない?」
「ええ、言ってましたね」
そういえば、とハヤテは頷く。
「それが?」
「願うくらいなら自力で叶えるって、なんか矛盾してると思ったのよ」
「矛盾?」
「うん。自分で叶えるって言ってる時点で、もう願ってるわけなのよ」
ヒナギクの言葉にハヤテは、なるほど、と納得する。
『叶える』という言葉は『願いなどを自分の力で実現する』という意味だ。
つまり、『願い』がなければ、『叶える』という行動は出来ない。
『叶える』という言葉を用いるには、『願い』という大前提が必要なのだ。
「じゃあつまり……」
「そう。私たちが『叶えよう』と思ったことが願いなのよ」
「……なんだか凄く当たり前のことのような気がしてならないですね」
「奇遇ね。私もよ……というか、物凄く当たり前のことよね、実際」
ヒナギクは苦笑する。
「凄く馬鹿なことに頭抱えてたみたいね、私たち」
「そうですね」
その苦笑交じりのヒナギクの言葉に、ハヤテは笑って答えた。
「叶えようと思ったことを書けばいいんですもんね」
「そういうことね」
先ほどより、随分と頭が軽くなった気がする。
「叶えたいこと……」
「私は……うん、これしかないわ」
「え? もう決めたんですか?」
「勿論よ」
力強く頷いたヒナギクの願いが気になって、ハヤテはヒナギクの短冊を覗いた。
先ほどまで何も書かれていなかったその紙には―――。
『ハヤテ君とずっと一緒にいる!』
「――――はは」
「何よその笑いは」
「いえ、これは……最高の願いごとだな、と。ただ」
ならば、自分の願いもこれしかない。
すらすら、と意味もなく動かすしかなかった右手を、今度はしっかりと意味をもってハヤテは動かす。
白紙の短冊に、ようやく、力強い文字が書かれた。
その短冊をヒナギクへ見せ、笑顔でハヤテは言った。
「―――その願いは、一人では叶えられないでしょう?」
『ずっとヒナギクさんの傍にいる』
それが、ハヤテの短冊に書かれていた宣言とも言える願い。
ヒナギクの願いはヒナギク一人では叶えられない。
自分がヒナギクの傍らにいることで初めて、『一緒にいる』というヒナギクの願いが叶うのだから。
太陽がなければ月が輝けないように。
太陽があるからこそ、月は輝ける。
自分が傍にいる限り、ヒナギクは『ずっと』一緒にいられるよう努力する。努力出来る。輝ける。
そしてハヤテの願いも、ヒナギクがいなければ叶えることが出来ないし、叶えるための努力をすることが出来ない。
「二人で、二人の願いごとを叶えましょう」
「……あは。そうね、そうよね」
年に一度しか会うことの出来ない織姫と彦星のような関係では駄目なのだ。
遠く離れていても心は……そんな事では満たされない。
心も身体も常に傍に。
永久に傍に。
「ふふ。長い願い事になりそうね」
「叶えても終わらない願い事ですからね」
「『ずっと』、だからね」
「『ずっと』、ですからね」
そう言ってハヤテとヒナギクは互いに顔を見合わせると、笑った。
随分と気の遠くなる願いをしたものだ。
死ぬまで、ではなく、ずっと。
死後以降も続く、永遠の願い事。
終わりのない願い事。
「取り敢えず、短冊を吊るしてきましょうか」
「そうね、行きましょう」
「はい」
その願い事が書かれた短冊を手に持ち、ハヤテとヒナギクは笹の方へと歩き始める。
「死んだ後も願い事が続くなんて……とんだ人生縛りプレイよね」
「全くですね」
寄り添うように会話する二人のその姿は、
「まぁ、クリアする自信はあるんですけど」
「あら奇遇ね。私もクリアする自信があるわ」
今夜、幾度目の再開を遂げるであろう彦星と織姫のように、幸せそうだった。
End
関ヶ原です。
七夕から四日も過ぎた今頃に、七夕ネタをうpしようと思います。
深夜のテンションで書いたので、ひょっとしたら誤字脱字があるかもしれません。
それ以上に、内容が、文章が……分かり辛い(個人的に)。
分かってもらえるように書いたとは思うんですが、自分でも激しく心配です。
日本語でおk、とか書かれてたらアワワワワってなります。
そのぐらいに不安です。
短冊に願い事書くなら『文章力が欲しい』と『就活のときちゃんと内定貰えます様に』で決まりです。
作中でも書いたんですが、願いって自分で叶えるから願いなんで。
自力で叶えちゃろうと思います。
それでは久方の更新になってしまいましたが、よければ見てやってください。
コメントとかあると嬉しいです。
それではどうぞ~☆
『願うこと、叶えること』
七月七日。
七月の初旬。
節日。
織姫と彦星が年に一度会うことの出来る日。
七夕。
だからといって本日、七夕にクラスで笹に短冊を吊るしましょう、なんてイベントは白皇学院にはない。
いや、正確には、高校生にもなっては、ない。
白皇学院の初等部や中等部でも、短冊に願いごとを書いて吊るしているクラスなど数えるくらいらしい。
にも関わらず、ここ桂雪路が担任を務めるクラス――ハヤテとヒナギクのクラスだ――では、何を血迷ったのか、クラス全員が短冊に願いごとを書いている真っ最中であった。
「……高校生にもなって短冊にお願い事だなんて……何考えてるんだ雪路は」
「にゃはは……でも面白そうじゃない?」
「それはお前だけだ、泉」
美希と理沙のため息交じりの言葉も、頷きたくなる。
わざわざ世界史の授業を一時間潰し短冊に願い事など、ゆとり教育にも程がある。
ゆとりの代表といっても過言ではない生徒会の三馬鹿娘、そのうち二人もがうんざりするのだから、雪路の所業は相当なのだろう。
授業が潰れる嬉しさよりも、恥ずかしさが勝る。
「願い事なんて何も思い浮かばないぞ……」
「奇遇だな、私もだ」
「夢がないなぁ二人とも」
そんな三人娘が短冊にそれぞれの思いを述べる傍ら、ヒナギクとハヤテも各々の願いに頭を悩ましている最中であった。
「悩むわね……」
「悩みますね……」
短冊に願い事を書くこと自体に不満があるわけではない。
ただ、何を書けばよいのかわからないのだ。
「願い、ねぇ……ハヤテ君は何かある?」
「そうですねぇ……これと言っては何も……」
ヒナギクの言葉にハヤテが答え、二人そろって溜息を吐く。
元々そんなに欲のない二人だけに、急に願いごとを書けと言われても困るのであった。
「いきなり願いごとを書けって言われても難しいんですよね」
「私も。願うくらいなら自分で叶えるわ」
「あはは。ヒナギクさんらしいですね」
ふん、と(悲しいくらいに小さな)胸を張るヒナギクに苦笑しつつ、ハヤテは伊澄たちと共にいるナギの方を見た。
「お嬢様たちはどうなんでしょうかね?」
「ナギ?」
「はい。お嬢様ならどんなこと書くのかな、と思いまして」
「なるほど。確かにちょっと気になるかも」
「ええ。それにほら、参考になるかもしれないじゃないですか、願い事の」
そう言って、ハヤテとヒナギクはナギたちの方に耳を傾ける。
それほど距離が離れていないためか、楽しそうなナギたちの会話が耳に入ってくる。
『伊澄はなんて書いたんだ?』
『え? 私は……母がもっとしっかりしますように、って……』
『……その願い、家族全員が、ってのに直したほうが良いと思うぞ』
『? 私はしっかりしてるから大丈夫……。それよりナギは? なんて書いたの……?』
『私か? 私は勿論、私の漫画が一兆冊売れますように、だ!』
『それなら願わなくても叶うと思う……。ナギの漫画面白いから……』
『む? そうか! でもまぁこれで良いや。願っておいて損はないしな』
『そうね……』
「…………」
「…………」
耳に入ってくる会話に、二人の反応は、無言。
ひたすら、無言だった。
「…………」
「…………」
ボケ役二人によるボケボケな楽しげな様子に、ツッコむことが出来ないのである。
「……参考にはならなさそうね」
「ですね……」
長い無言の後分かったことは、他人の願いは参考にならない、ということだった。
「結局自分で考えるしかないみたいですね」
「まぁそれが普通なんだろうけど」
短冊と向き合い、二人はまた溜息を吐いた。
眼前の細長い紙には、相変わらず何も書かれていない。
右手のペンを徒に動かすだけ。
「本当、なんて書けばいいのかしら?」
ヒナギクの呟きに、そうですね、とハヤテが口を開く。
「お嬢様が真人間になりますように、とか?」
「あの子たちが真面目に仕事をする、とか?」
「…………」
「…………」
二度目の沈黙。
「……それは願っても無駄な気がします」
「奇遇ね。私も同じこと思った」
そして三度目の溜息。
どうしよう。願い事が何もない。
余りにも願いのない自分自身に、ハヤテとヒナギクは段々頭痛がしてきた。
「私達ってこんなに願望がない人間だったのね……」
「僕はともかく……ヒナギクさんは願わずとも自力で叶えますからね」
「そんなことないわよ。私だって出来ないこと、一杯あるんだから」
買い被りすぎよ、と言ったところで、ヒナギクはふと、思った。
「自力で叶える……?」
「? どうしました?」
「いや、さっき私、願うくらいなら自力で叶えるって言ったじゃない?」
「ええ、言ってましたね」
そういえば、とハヤテは頷く。
「それが?」
「願うくらいなら自力で叶えるって、なんか矛盾してると思ったのよ」
「矛盾?」
「うん。自分で叶えるって言ってる時点で、もう願ってるわけなのよ」
ヒナギクの言葉にハヤテは、なるほど、と納得する。
『叶える』という言葉は『願いなどを自分の力で実現する』という意味だ。
つまり、『願い』がなければ、『叶える』という行動は出来ない。
『叶える』という言葉を用いるには、『願い』という大前提が必要なのだ。
「じゃあつまり……」
「そう。私たちが『叶えよう』と思ったことが願いなのよ」
「……なんだか凄く当たり前のことのような気がしてならないですね」
「奇遇ね。私もよ……というか、物凄く当たり前のことよね、実際」
ヒナギクは苦笑する。
「凄く馬鹿なことに頭抱えてたみたいね、私たち」
「そうですね」
その苦笑交じりのヒナギクの言葉に、ハヤテは笑って答えた。
「叶えようと思ったことを書けばいいんですもんね」
「そういうことね」
先ほどより、随分と頭が軽くなった気がする。
「叶えたいこと……」
「私は……うん、これしかないわ」
「え? もう決めたんですか?」
「勿論よ」
力強く頷いたヒナギクの願いが気になって、ハヤテはヒナギクの短冊を覗いた。
先ほどまで何も書かれていなかったその紙には―――。
『ハヤテ君とずっと一緒にいる!』
「――――はは」
「何よその笑いは」
「いえ、これは……最高の願いごとだな、と。ただ」
ならば、自分の願いもこれしかない。
すらすら、と意味もなく動かすしかなかった右手を、今度はしっかりと意味をもってハヤテは動かす。
白紙の短冊に、ようやく、力強い文字が書かれた。
その短冊をヒナギクへ見せ、笑顔でハヤテは言った。
「―――その願いは、一人では叶えられないでしょう?」
『ずっとヒナギクさんの傍にいる』
それが、ハヤテの短冊に書かれていた宣言とも言える願い。
ヒナギクの願いはヒナギク一人では叶えられない。
自分がヒナギクの傍らにいることで初めて、『一緒にいる』というヒナギクの願いが叶うのだから。
太陽がなければ月が輝けないように。
太陽があるからこそ、月は輝ける。
自分が傍にいる限り、ヒナギクは『ずっと』一緒にいられるよう努力する。努力出来る。輝ける。
そしてハヤテの願いも、ヒナギクがいなければ叶えることが出来ないし、叶えるための努力をすることが出来ない。
「二人で、二人の願いごとを叶えましょう」
「……あは。そうね、そうよね」
年に一度しか会うことの出来ない織姫と彦星のような関係では駄目なのだ。
遠く離れていても心は……そんな事では満たされない。
心も身体も常に傍に。
永久に傍に。
「ふふ。長い願い事になりそうね」
「叶えても終わらない願い事ですからね」
「『ずっと』、だからね」
「『ずっと』、ですからね」
そう言ってハヤテとヒナギクは互いに顔を見合わせると、笑った。
随分と気の遠くなる願いをしたものだ。
死ぬまで、ではなく、ずっと。
死後以降も続く、永遠の願い事。
終わりのない願い事。
「取り敢えず、短冊を吊るしてきましょうか」
「そうね、行きましょう」
「はい」
その願い事が書かれた短冊を手に持ち、ハヤテとヒナギクは笹の方へと歩き始める。
「死んだ後も願い事が続くなんて……とんだ人生縛りプレイよね」
「全くですね」
寄り添うように会話する二人のその姿は、
「まぁ、クリアする自信はあるんですけど」
「あら奇遇ね。私もクリアする自信があるわ」
今夜、幾度目の再開を遂げるであろう彦星と織姫のように、幸せそうだった。
End
皆さんどうも関ヶ原です。
今月二作品目……ですかね。相変わらず不定期で申し訳ありません。
今回の作品は文章系の大学に通う友人に添削をしてもらいました。
何分初めてのことで緊張。
そして自分じゃあ気づかない指摘を多々いただきました。
勉強になった、なった……。
まぁそんな裏話でございます。
今回の作品はタイトル通りでございます。
ハヤヒナに見せかけて……実は恋愛要素なし……かも。
期待してた方すみません。
でもけっこう書いてて楽しかった作品なので、どうか読んでやってください。
ではどうぞ~☆
「梅雨」
「非常事態です」
六月も中旬。
全国各地で空の色が鉛色に変わっている頃。
生徒会室の会長の椅子に座りながら、ヒナギクが重々しい口調で口を開いた。
「梅雨の時季が来てしまいました」
「それがどうした?」
同じく生徒会室のソファに腰かけた美希が、疑問符をつけて聞き返す。
「確かに梅雨の湿気はうざったいが……そんな重々しく言うほどのものでもないだろ」
髪の長いヒナギクや美希は、この時期は湿気のせいで髪が肌にベタつく。
それは本当に嫌になるけれども、今更気にすることもない。
「そうじゃないのよ」
確かに湿気はうざったいけど、と言葉を置きつつ、ヒナギクは言った。
「雨ばっかりじゃハヤテ君と外で遊べないじゃない!」
「…………はぇ?」
三点リーダ四つ分の沈黙の後、美希の口から阿呆な声が出た。
「何だって?」
「だから、雨がこうも続いてるんじゃハヤテ君と外で遊べないのよ!」
ばぁん、と机を叩きながら、ヒナギクは声を荒げた。
山のように重なった書類たちが宙に舞う。
「梅雨なんか嫌いだー!」
「……ヒナ、お前……」
ひらひらと眼前を落ちていく紙たちに目をやりつつ、美希は呆れた表情を浮かべた。
「この湿気で頭の中やられたか?」
「失礼ね! 私は正気よ!」
「今の発言のどこが正気だよ」
はぁ、と美希は深い溜息を吐き、言葉を続ける。
「あのなぁヒナ。このご時世、雨だろうが遊ぼうと思えば遊べるだろ」
「なんでよ?」
「普通に電車とか使えばいいだろ?」
「私は普通よ」
「いや、ヒナのことを普通じゃないと言ってるわけじゃなくて……」
話が噛み合わない。
「傘持ってけばデートは出来るだろう? すればいいじゃないか」
外はご覧の梅雨空だが、ここは東京。
外出する手段などいくらでもある。
自分でも分かるくらいのことが分からないのだとすれば、今のヒナギクは本当に湿気に頭をやられたのかもしれない、と美希は不安になった。
だがしかし。
「? 何でハヤテ君とサッカーするのにバスや電車が必要なのよ?」
「そっちかよ!」
予想外すぎる返答に、柄にもなく美希は大声を出してしまった。
「外で遊ぶってそっち!? ショッピングとか、そういうんじゃないの!?」
「え? 外で遊ぶってそういうことじゃないの?」
「違うだろ!」
美希は理解する。
今のヒナギクの頭の中は、子供と一緒だ。
「ヒナ、お前な……」
「何よ? 溜息ついて」
「誰の所為だよ……まぁいい。 ハヤテ君は確かにニブニブな鈍感少年だが、彼女と外で遊ぶと言われたとして、サッカーをするという考えには絶対至らないぞ」
あの鈍感執事はなんだかんだで気のきく少年だ。
彼女と外で遊ぶと言われれば、それなりのデートプランも組めるし、実行もする。
「お前……今までハヤ太君とどんなデートしてきたんだよ……」
今だけは、そんなハヤテに同情しなければいけないと美希は思った。
「え? 普通に買い物とか、映画とか見に行ってるけど」
「それが外で遊ぶっていうことなんだよ!」
返ってきた言葉に、美希は再びツッコミを入れる。
今日は立場が逆だな、と内心思いつつ、もはや諭すような口調でヒナギクに言う。
「あのな、ヒナ」
「何よ?」
「ハヤ太君とちゃんとやることやっているなら、あまりアホな事言わないでくれ……。こっちの身が持たない」
「別にアホなことなんて言ってないわよ」
「彼氏とのデートが外でサッカーやることなんて、ネタ以外の何物でもないぞ」
ヒナギクだってもしかしたらボケに回りたい時もあるのかもしれないな。
いつもこちら側がボケに回っている分のリバウンドなのだとしたら、それも仕方ないのかもしれない。
なんてことを考えながら、ヒナギクがハヤテと普通のデートをしていることに安心した。
「え?」
その矢先。
「いや、普通にしてたわよ? ハヤテ君とサッカー」
「じゃあお前らが変なんだよ! このバカップル!!」
キョトンとした表情を浮かべながら言ったヒナギクの言葉によって、本日何度目かわからないツッコミを美希は入れた。
「やったのか! 彼氏とサッカー!?」
「うん。普通に楽しかったわよ?」
「デートもしないで!?」
「いや、それもデートなんじゃないの?」
「それはっ……」
絶対違う、という言葉を言いかけて、飲み込む。
「……」
考えてみれば、人の恋愛事情にここまで否定的なのもどうだろうか。
自分の中でのデートの定義は、ヒナギクとハヤテがやっているという買い物や
映画といったものだ。
その中に外でサッカーをするなどというアクティブなものはない。
しかし、それはあくまで自分の中の話。
性格その他諸々が子供っぽいヒナギクにしてみれば、彼氏と外でサッカーをすることも、映画を見たり買い物をしたりすることと同じ位置付けなのかもしれない。
「美希?」
「……」
何より、眼前で不思議そうにこちらを見つめる彼女とその彼氏が満足しているなら、それでいい話なのだ。
「いや、なんでもない」
「そう? ならいいけど……」
「ヒナ」
「何?」
だったら自分は静かに、暖かく見守るべきなのであろう。このバカップルを。
「早く明けるといいな、梅雨」
「そうね……。本当にそう思うわ」
深い深いため息とともに机へ俯せるヒナギクに小さな笑みを浮かべながら、美希は拾い終えた書類を手にし、言った。
「じゃあ梅雨明けの時のために今のうちに仕事片付けるか」
「? 珍しいわね、美希がやる気なんて」
「私だってたまにはあるわよ」
「……明日は雨ね」
「梅雨だからな、そりゃ」
子供っぽい、憧れの彼女のためにたまにはやれることをやろう。
「(……湿気にやられたのは私の頭の方だったか?)」
そんなつまらないことを考えながら、美希はヒナギクとともに書類の山と格闘を始める。
外では止むことのない雨が、静かな雨音を響かせていた。
その音を聞きながら仕事をするのも悪くない、と思ったことは黙っていよう。
梅雨明けを望んでいるヒナギクに悪いと思いながらも、美希は軽やかにペンを走らせるのだった。
End
2010 FIFA World Cup News [Yahoo!Sports/sportsnavi]
今月二作品目……ですかね。相変わらず不定期で申し訳ありません。
今回の作品は文章系の大学に通う友人に添削をしてもらいました。
何分初めてのことで緊張。
そして自分じゃあ気づかない指摘を多々いただきました。
勉強になった、なった……。
まぁそんな裏話でございます。
今回の作品はタイトル通りでございます。
ハヤヒナに見せかけて……実は恋愛要素なし……かも。
期待してた方すみません。
でもけっこう書いてて楽しかった作品なので、どうか読んでやってください。
ではどうぞ~☆
「梅雨」
「非常事態です」
六月も中旬。
全国各地で空の色が鉛色に変わっている頃。
生徒会室の会長の椅子に座りながら、ヒナギクが重々しい口調で口を開いた。
「梅雨の時季が来てしまいました」
「それがどうした?」
同じく生徒会室のソファに腰かけた美希が、疑問符をつけて聞き返す。
「確かに梅雨の湿気はうざったいが……そんな重々しく言うほどのものでもないだろ」
髪の長いヒナギクや美希は、この時期は湿気のせいで髪が肌にベタつく。
それは本当に嫌になるけれども、今更気にすることもない。
「そうじゃないのよ」
確かに湿気はうざったいけど、と言葉を置きつつ、ヒナギクは言った。
「雨ばっかりじゃハヤテ君と外で遊べないじゃない!」
「…………はぇ?」
三点リーダ四つ分の沈黙の後、美希の口から阿呆な声が出た。
「何だって?」
「だから、雨がこうも続いてるんじゃハヤテ君と外で遊べないのよ!」
ばぁん、と机を叩きながら、ヒナギクは声を荒げた。
山のように重なった書類たちが宙に舞う。
「梅雨なんか嫌いだー!」
「……ヒナ、お前……」
ひらひらと眼前を落ちていく紙たちに目をやりつつ、美希は呆れた表情を浮かべた。
「この湿気で頭の中やられたか?」
「失礼ね! 私は正気よ!」
「今の発言のどこが正気だよ」
はぁ、と美希は深い溜息を吐き、言葉を続ける。
「あのなぁヒナ。このご時世、雨だろうが遊ぼうと思えば遊べるだろ」
「なんでよ?」
「普通に電車とか使えばいいだろ?」
「私は普通よ」
「いや、ヒナのことを普通じゃないと言ってるわけじゃなくて……」
話が噛み合わない。
「傘持ってけばデートは出来るだろう? すればいいじゃないか」
外はご覧の梅雨空だが、ここは東京。
外出する手段などいくらでもある。
自分でも分かるくらいのことが分からないのだとすれば、今のヒナギクは本当に湿気に頭をやられたのかもしれない、と美希は不安になった。
だがしかし。
「? 何でハヤテ君とサッカーするのにバスや電車が必要なのよ?」
「そっちかよ!」
予想外すぎる返答に、柄にもなく美希は大声を出してしまった。
「外で遊ぶってそっち!? ショッピングとか、そういうんじゃないの!?」
「え? 外で遊ぶってそういうことじゃないの?」
「違うだろ!」
美希は理解する。
今のヒナギクの頭の中は、子供と一緒だ。
「ヒナ、お前な……」
「何よ? 溜息ついて」
「誰の所為だよ……まぁいい。 ハヤテ君は確かにニブニブな鈍感少年だが、彼女と外で遊ぶと言われたとして、サッカーをするという考えには絶対至らないぞ」
あの鈍感執事はなんだかんだで気のきく少年だ。
彼女と外で遊ぶと言われれば、それなりのデートプランも組めるし、実行もする。
「お前……今までハヤ太君とどんなデートしてきたんだよ……」
今だけは、そんなハヤテに同情しなければいけないと美希は思った。
「え? 普通に買い物とか、映画とか見に行ってるけど」
「それが外で遊ぶっていうことなんだよ!」
返ってきた言葉に、美希は再びツッコミを入れる。
今日は立場が逆だな、と内心思いつつ、もはや諭すような口調でヒナギクに言う。
「あのな、ヒナ」
「何よ?」
「ハヤ太君とちゃんとやることやっているなら、あまりアホな事言わないでくれ……。こっちの身が持たない」
「別にアホなことなんて言ってないわよ」
「彼氏とのデートが外でサッカーやることなんて、ネタ以外の何物でもないぞ」
ヒナギクだってもしかしたらボケに回りたい時もあるのかもしれないな。
いつもこちら側がボケに回っている分のリバウンドなのだとしたら、それも仕方ないのかもしれない。
なんてことを考えながら、ヒナギクがハヤテと普通のデートをしていることに安心した。
「え?」
その矢先。
「いや、普通にしてたわよ? ハヤテ君とサッカー」
「じゃあお前らが変なんだよ! このバカップル!!」
キョトンとした表情を浮かべながら言ったヒナギクの言葉によって、本日何度目かわからないツッコミを美希は入れた。
「やったのか! 彼氏とサッカー!?」
「うん。普通に楽しかったわよ?」
「デートもしないで!?」
「いや、それもデートなんじゃないの?」
「それはっ……」
絶対違う、という言葉を言いかけて、飲み込む。
「……」
考えてみれば、人の恋愛事情にここまで否定的なのもどうだろうか。
自分の中でのデートの定義は、ヒナギクとハヤテがやっているという買い物や
映画といったものだ。
その中に外でサッカーをするなどというアクティブなものはない。
しかし、それはあくまで自分の中の話。
性格その他諸々が子供っぽいヒナギクにしてみれば、彼氏と外でサッカーをすることも、映画を見たり買い物をしたりすることと同じ位置付けなのかもしれない。
「美希?」
「……」
何より、眼前で不思議そうにこちらを見つめる彼女とその彼氏が満足しているなら、それでいい話なのだ。
「いや、なんでもない」
「そう? ならいいけど……」
「ヒナ」
「何?」
だったら自分は静かに、暖かく見守るべきなのであろう。このバカップルを。
「早く明けるといいな、梅雨」
「そうね……。本当にそう思うわ」
深い深いため息とともに机へ俯せるヒナギクに小さな笑みを浮かべながら、美希は拾い終えた書類を手にし、言った。
「じゃあ梅雨明けの時のために今のうちに仕事片付けるか」
「? 珍しいわね、美希がやる気なんて」
「私だってたまにはあるわよ」
「……明日は雨ね」
「梅雨だからな、そりゃ」
子供っぽい、憧れの彼女のためにたまにはやれることをやろう。
「(……湿気にやられたのは私の頭の方だったか?)」
そんなつまらないことを考えながら、美希はヒナギクとともに書類の山と格闘を始める。
外では止むことのない雨が、静かな雨音を響かせていた。
その音を聞きながら仕事をするのも悪くない、と思ったことは黙っていよう。
梅雨明けを望んでいるヒナギクに悪いと思いながらも、美希は軽やかにペンを走らせるのだった。
End
2010 FIFA World Cup News [Yahoo!Sports/sportsnavi]
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