関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。
過度な期待はしないでください。
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皆さんどうも、関ヶ原です。
新作が一応出来ました。今月三作目です。
今回もハヤヒナで、久しぶりに甘い小説を書いたつもりです。
しかし今回書いてみると、案外甘めの小説って書くのが難しい……。
キャラを保ちつつ、しっかり甘えさせる。
残念ながら私には難しい。
でも何とか形にはできたのかな、と思っています。
そしてオチの弱さに私涙目。誰か綺麗に話を締める方法を教えてください……!
今回一番悩んだのは何よりタイトルです。
タイトルとして強調したい部分がないもので、『無題』というタイトルにしようかと思ったくらいです(汗)
だから何とか頭を動かしてこんな感じになりました。
ちょっと中身のない話になってしまいましたが、どうか皆様お許しを……!!
さぁ後二作。果たして私は書けるのか。
それではどうぞ~☆
『Hot Kiss』
学校からの帰り道の空は、茜色に染まっていた。
十一月も半ば、暗くなるに連れて肌に当たる風も冷たくなってきている。
「うわ、寒い」
「確かに……これはちょっと寒すぎですね」
結構な厚着をしているにも拘わらず、寒風が体に当たる。
その寒さに身を震わせながら、私とハヤテ君は学校帰りの道を歩いていた。
「もう冬がやってくるって感じよね、こうも寒いと」
「東北地方ではもう雪が降っている所もあるくらいですしね」
ハヤテ君は私の言葉にそう答えると、白い息を吐きながらもう一度身を震わせた。
今日は珍しく、生徒会の仕事がなかった。
この所ハヤテ君と二人で仕事をしていたからなのか、予定以上の仕事をこなしていたらしく、本日は仕事が残っていなかったのだ。
「流石東北ね~。ここ以上に寒いのよね、きっと」
「でも行ってみたい気持ちはありますね」
「そうね~」
して、その帰り道。
いつもとは違い、今日の帰り道は他の生徒たちと一緒だ。
毎日生徒会で遅くなるので、生徒の姿が見えない帰り道は寂しいものだった。
「じゃあいつか行こっか、東北」
「え?」
「いつか、機会があったら二人っきりで、ね?」
だから、とハヤテ君の腕を私は抱える。
「ちょ、ヒナギクさんっ。皆見てますって」
「いいのよ、それで」
そしてニヤリ、と私は笑った。
「見せ付けてるのよ♪」
「………」
私の言葉に、ハヤテ君が固まる。
「あの……その」
「何を今更照れてるのよ。もう皆知っているでしょ?」
「それは、そうなんですが」
ハヤテ君が言葉を濁すのも分かる。
だってほら、ハヤテ君に敵意ある視線が集中しているから。
それでも私はハヤテ君の腕を離すことはない。
普段見せ付けられない分、こういった貴重な機会に見せ付けなければ。
私がハヤテ君をどれだけ好きかということを。
ちら、とハヤテ君を見れば、恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
どうやら彼には、まだまだ覚悟が足りないらしい。
「ねえハヤテ君?」
「……は、はい」
「ハヤテ君は私の彼氏よね?」
「へ?そ、それはもちろん!僕はヒナギクさんの彼氏ですよ」
「そうよね、彼氏よね。じゃあそれがどういうことなのか分かるかしら?」
「え―――――」
だから、思い知らせてあげることにした。
周りの生徒たちに、ハヤテ君に。
私から、桂ヒナギクから好かれるというのがどういうことなのか。
私の方を向いた彼の唇に、自分のそれを重ねた。
やわらかく暖かい感触が伝わって、唇から身体全体に心地よさが広がる。
帰宅途中。
しかも多くの生徒たちがいる中で、私とハヤテ君はキスをしていた。
「………えへへ、これで分かった?」
「ええ…もう十分というくらいに」
数秒、数十秒と時間が過ぎ、私たちは唇を離した。
名残惜しい気持ちもあるが、ハヤテ君の顔が尋常じゃない位に真っ赤だったので仕方がない。
それに、どうやらハヤテ君も分かってくれたようで、トマトのように顔を真っ赤にしながらも、唇を離すと私をぎゅっと抱きしめてくれた。
真っ赤な顔で私を抱きしめたまま、ハヤテ君は言う。
「………肝っ玉は強い方だと思っていましたけど、ヒナギクさんの彼氏を務めるにはまだまだ努力が必要みたいです」
「ふふ。分かればいいのよ」
「本当に……。ヒナギクさんがここまで甘えん坊だとは思いませんでした」
「良いじゃない、別に。私はただ、自分の気持ちに素直になっただけよ」
ハヤテ君の腕の中は、本当に幸せな気持ちになる。
キスとは違った温かさ。
その温かさを体全体で感じながら、私は「それに」と言葉を続けた。
「私は甘えん坊だけじゃなくて、寂しがりやでもあるのよ?」
周りをみれば、あれ程いた生徒たちの姿はなくなっていた。
私たちの姿を見て恥ずかしくなったのだろうか?
でも、この方が私にとっては都合がいい。
「だから、ね」
すっかり人気がなくなってしまった帰り道で、私はハヤテ君に唇を差し出した。
「ん」
「え?」
「さっきは人がいたからそんなに長くは出来なかったけど、今なら大丈夫でしょ?」
何を、と聞くことは今更だ。
今度はハヤテ君の方からして欲しい。
そんな私の気持ちを読み取ってくれたのだろう、ハヤテ君は苦笑を浮かべながらも、
「………本当に甘えん坊なんですから、ヒナギクさんは」
その言葉を優しい声色に乗せて、私に二度目のキスをした。
十一月も半ば、暗くなるに連れて肌に当たる風も冷たくなってきている。
もう冬がすぐそこまで来ている、巡る季節の中で。
大好きな人とのキスは、そんな寒さを忘れさせてくれるくらいに、やはり温かなものだった。
End
新作が一応出来ました。今月三作目です。
今回もハヤヒナで、久しぶりに甘い小説を書いたつもりです。
しかし今回書いてみると、案外甘めの小説って書くのが難しい……。
キャラを保ちつつ、しっかり甘えさせる。
残念ながら私には難しい。
でも何とか形にはできたのかな、と思っています。
そしてオチの弱さに私涙目。誰か綺麗に話を締める方法を教えてください……!
今回一番悩んだのは何よりタイトルです。
タイトルとして強調したい部分がないもので、『無題』というタイトルにしようかと思ったくらいです(汗)
だから何とか頭を動かしてこんな感じになりました。
ちょっと中身のない話になってしまいましたが、どうか皆様お許しを……!!
さぁ後二作。果たして私は書けるのか。
それではどうぞ~☆
『Hot Kiss』
学校からの帰り道の空は、茜色に染まっていた。
十一月も半ば、暗くなるに連れて肌に当たる風も冷たくなってきている。
「うわ、寒い」
「確かに……これはちょっと寒すぎですね」
結構な厚着をしているにも拘わらず、寒風が体に当たる。
その寒さに身を震わせながら、私とハヤテ君は学校帰りの道を歩いていた。
「もう冬がやってくるって感じよね、こうも寒いと」
「東北地方ではもう雪が降っている所もあるくらいですしね」
ハヤテ君は私の言葉にそう答えると、白い息を吐きながらもう一度身を震わせた。
今日は珍しく、生徒会の仕事がなかった。
この所ハヤテ君と二人で仕事をしていたからなのか、予定以上の仕事をこなしていたらしく、本日は仕事が残っていなかったのだ。
「流石東北ね~。ここ以上に寒いのよね、きっと」
「でも行ってみたい気持ちはありますね」
「そうね~」
して、その帰り道。
いつもとは違い、今日の帰り道は他の生徒たちと一緒だ。
毎日生徒会で遅くなるので、生徒の姿が見えない帰り道は寂しいものだった。
「じゃあいつか行こっか、東北」
「え?」
「いつか、機会があったら二人っきりで、ね?」
だから、とハヤテ君の腕を私は抱える。
「ちょ、ヒナギクさんっ。皆見てますって」
「いいのよ、それで」
そしてニヤリ、と私は笑った。
「見せ付けてるのよ♪」
「………」
私の言葉に、ハヤテ君が固まる。
「あの……その」
「何を今更照れてるのよ。もう皆知っているでしょ?」
「それは、そうなんですが」
ハヤテ君が言葉を濁すのも分かる。
だってほら、ハヤテ君に敵意ある視線が集中しているから。
それでも私はハヤテ君の腕を離すことはない。
普段見せ付けられない分、こういった貴重な機会に見せ付けなければ。
私がハヤテ君をどれだけ好きかということを。
ちら、とハヤテ君を見れば、恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
どうやら彼には、まだまだ覚悟が足りないらしい。
「ねえハヤテ君?」
「……は、はい」
「ハヤテ君は私の彼氏よね?」
「へ?そ、それはもちろん!僕はヒナギクさんの彼氏ですよ」
「そうよね、彼氏よね。じゃあそれがどういうことなのか分かるかしら?」
「え―――――」
だから、思い知らせてあげることにした。
周りの生徒たちに、ハヤテ君に。
私から、桂ヒナギクから好かれるというのがどういうことなのか。
私の方を向いた彼の唇に、自分のそれを重ねた。
やわらかく暖かい感触が伝わって、唇から身体全体に心地よさが広がる。
帰宅途中。
しかも多くの生徒たちがいる中で、私とハヤテ君はキスをしていた。
「………えへへ、これで分かった?」
「ええ…もう十分というくらいに」
数秒、数十秒と時間が過ぎ、私たちは唇を離した。
名残惜しい気持ちもあるが、ハヤテ君の顔が尋常じゃない位に真っ赤だったので仕方がない。
それに、どうやらハヤテ君も分かってくれたようで、トマトのように顔を真っ赤にしながらも、唇を離すと私をぎゅっと抱きしめてくれた。
真っ赤な顔で私を抱きしめたまま、ハヤテ君は言う。
「………肝っ玉は強い方だと思っていましたけど、ヒナギクさんの彼氏を務めるにはまだまだ努力が必要みたいです」
「ふふ。分かればいいのよ」
「本当に……。ヒナギクさんがここまで甘えん坊だとは思いませんでした」
「良いじゃない、別に。私はただ、自分の気持ちに素直になっただけよ」
ハヤテ君の腕の中は、本当に幸せな気持ちになる。
キスとは違った温かさ。
その温かさを体全体で感じながら、私は「それに」と言葉を続けた。
「私は甘えん坊だけじゃなくて、寂しがりやでもあるのよ?」
周りをみれば、あれ程いた生徒たちの姿はなくなっていた。
私たちの姿を見て恥ずかしくなったのだろうか?
でも、この方が私にとっては都合がいい。
「だから、ね」
すっかり人気がなくなってしまった帰り道で、私はハヤテ君に唇を差し出した。
「ん」
「え?」
「さっきは人がいたからそんなに長くは出来なかったけど、今なら大丈夫でしょ?」
何を、と聞くことは今更だ。
今度はハヤテ君の方からして欲しい。
そんな私の気持ちを読み取ってくれたのだろう、ハヤテ君は苦笑を浮かべながらも、
「………本当に甘えん坊なんですから、ヒナギクさんは」
その言葉を優しい声色に乗せて、私に二度目のキスをした。
十一月も半ば、暗くなるに連れて肌に当たる風も冷たくなってきている。
もう冬がすぐそこまで来ている、巡る季節の中で。
大好きな人とのキスは、そんな寒さを忘れさせてくれるくらいに、やはり温かなものだった。
End
PR
どうもこんばんわ、関ヶ原です。
予定通り、新作をupしたいと思います。
今回はハヤヒナ、前回ヒナを出せなかったので(汗)
文量は少なめ。この所、文量が少なくなってきているのでちょっと問題視orz
でも、折角書きましたので、この小説をハヤテの誕生日記念ということでささげたいと思います。
それではどうぞ~☆
本日の授業の終了を知らせるチャイムが響き、号令係の掛け声が言い終わると同時に、生徒たちは一斉に帰宅の準備を始めた。
そんな様子を見ながら、綾崎ハヤテはふと思う。
名門だろうとなかろうと、生徒たちの思うことは大して変わらないのだなぁ、と。
学校が終われば、早く家に帰りたい。
早く部活に行きたい。
恋人とともに、街へ買い物に出かけたい。
放課後思うことは、そのようなことだ。
そしてそれが正鵠を得ているとハヤテは確信していた。
何故なら喧騒に包まれていた教室は、いつの間にやら静寂な空間へと変わっていたのだから。
「……本当に皆帰るのが早いなぁ」
そんなことを呟きながらも、教科書を鞄へと入れる動作はやけにゆっくりなハヤテだった。
『放課後ライフ』
放課後を有意義に過ごすために、ハヤテは『いつもの場所』へと向かう。
それは、白皇学園において一番の高度を誇る場所『時計塔』だ。
「こんにちはー」
エレベータに乗り、その時計塔の最上階に上る。
そこにあるのは『生徒会室』。
荘厳な扉をノックして、ハヤテは中へと入る。
ここからがハヤテの放課後の始まりなのだ。
「ヒナギクさん、いますか?」
「あ、いらっしゃいハヤテ君」
中へ入ったハヤテを出迎えてくれたのは、この部屋の主である桂ヒナギクだ。
放課後の開始の合図は、いつも彼女の声だった。
ヒナギクはいつものように机の上で大量の書類と格闘していた。
「今日も凄い量ですね……」
「まぁ……でもいつものことよ」
涼しい様子を見せるヒナギクだが、その彼女の手は残像が見えるくらいに素早く動いている。
一言で言えば、物凄く忙しそう。
にも拘わらず、この広大な空間にはハヤテを除いてヒナギク一人しかいなかった。
「成る程……。確かに、いつものことですね。いろんな意味で」
「ええ。色んな意味でね」
いつもの如く、あの役員三馬鹿娘はサボりなのだろう。
愛歌や千桜も、何か用事があるのだろうか、来ている様子はない。
やれやれ、とハヤテはため息をついた。
「手伝います」
「いつも悪いわね」
「いえ、いつものことなんで」
ハヤテの申し出に、ヒナギクは申し訳なさそうに苦笑した。
こうして放課後、ハヤテがヒナギクの仕事を手伝うのももはや『いつものこと』。
しかし、まぁ。
「それに、好きな人と一緒に仕事ができるというのは、嬉しいことですし」
「……もぅ、バカ」
ヒナギクに苦労をかける役員にはため息が出るが、ヒナギクと二人きりだということはハヤテにとってはこの上ない喜びであった。
恥ずかしそうに頬を染めたヒナギクを見て満足そうに頷くと、ハヤテは早速仕事に取り掛かった。
「それじゃあ、お仕事、開始っと」
「? どうしたの急に。そんなこと言って」
「いえ、なんとなくですよ。なんとなく」
「?」
いつものように始まり、いつものように終わる。
そんな幸せな恋人たちの、放課後ライフ。
End
予定通り、新作をupしたいと思います。
今回はハヤヒナ、前回ヒナを出せなかったので(汗)
文量は少なめ。この所、文量が少なくなってきているのでちょっと問題視orz
でも、折角書きましたので、この小説をハヤテの誕生日記念ということでささげたいと思います。
それではどうぞ~☆
本日の授業の終了を知らせるチャイムが響き、号令係の掛け声が言い終わると同時に、生徒たちは一斉に帰宅の準備を始めた。
そんな様子を見ながら、綾崎ハヤテはふと思う。
名門だろうとなかろうと、生徒たちの思うことは大して変わらないのだなぁ、と。
学校が終われば、早く家に帰りたい。
早く部活に行きたい。
恋人とともに、街へ買い物に出かけたい。
放課後思うことは、そのようなことだ。
そしてそれが正鵠を得ているとハヤテは確信していた。
何故なら喧騒に包まれていた教室は、いつの間にやら静寂な空間へと変わっていたのだから。
「……本当に皆帰るのが早いなぁ」
そんなことを呟きながらも、教科書を鞄へと入れる動作はやけにゆっくりなハヤテだった。
『放課後ライフ』
放課後を有意義に過ごすために、ハヤテは『いつもの場所』へと向かう。
それは、白皇学園において一番の高度を誇る場所『時計塔』だ。
「こんにちはー」
エレベータに乗り、その時計塔の最上階に上る。
そこにあるのは『生徒会室』。
荘厳な扉をノックして、ハヤテは中へと入る。
ここからがハヤテの放課後の始まりなのだ。
「ヒナギクさん、いますか?」
「あ、いらっしゃいハヤテ君」
中へ入ったハヤテを出迎えてくれたのは、この部屋の主である桂ヒナギクだ。
放課後の開始の合図は、いつも彼女の声だった。
ヒナギクはいつものように机の上で大量の書類と格闘していた。
「今日も凄い量ですね……」
「まぁ……でもいつものことよ」
涼しい様子を見せるヒナギクだが、その彼女の手は残像が見えるくらいに素早く動いている。
一言で言えば、物凄く忙しそう。
にも拘わらず、この広大な空間にはハヤテを除いてヒナギク一人しかいなかった。
「成る程……。確かに、いつものことですね。いろんな意味で」
「ええ。色んな意味でね」
いつもの如く、あの役員三馬鹿娘はサボりなのだろう。
愛歌や千桜も、何か用事があるのだろうか、来ている様子はない。
やれやれ、とハヤテはため息をついた。
「手伝います」
「いつも悪いわね」
「いえ、いつものことなんで」
ハヤテの申し出に、ヒナギクは申し訳なさそうに苦笑した。
こうして放課後、ハヤテがヒナギクの仕事を手伝うのももはや『いつものこと』。
しかし、まぁ。
「それに、好きな人と一緒に仕事ができるというのは、嬉しいことですし」
「……もぅ、バカ」
ヒナギクに苦労をかける役員にはため息が出るが、ヒナギクと二人きりだということはハヤテにとってはこの上ない喜びであった。
恥ずかしそうに頬を染めたヒナギクを見て満足そうに頷くと、ハヤテは早速仕事に取り掛かった。
「それじゃあ、お仕事、開始っと」
「? どうしたの急に。そんなこと言って」
「いえ、なんとなくですよ。なんとなく」
「?」
いつものように始まり、いつものように終わる。
そんな幸せな恋人たちの、放課後ライフ。
End
どうもお久しぶり、関ヶ原です。
ようやく完成しました。新作です。
久しぶりの、ハヤヒナです。
相変わらず拙い文章スイマセン(汗
本当に久しぶりで、なかなか上手く書けなかった作品ですorz
これからハヤヒナもっと書いて、リハビリしていこうと思います。
この小説はベディアン様のサイトhttp://id35.fm-p.jp/88/HAKUREN/?guid=onに寄贈させていただきました。
是非足を運んで見てください。
それでは、どうぞ~♪
秋もまだまだこれからという、10月の上旬。
染まりきっていない銀杏の木の下を、ハヤテとヒナギクは歩いていた。
「まだ紅葉は始まってないみたいですねー」
「そりゃそうよ。だってまだ秋の初めじゃない」
秋が深まる、という言葉が当て嵌るにはまだ早い時期。
色が変わっていない銀杏の葉を見ながら呟かれたハヤテの言葉に、ヒナギクが答える。
「これの色がはっきり変わるには、もう少しかかりそうね」
「そうですね……。お嬢様や瀬川さんたちの目の色は、すっかり変わっているんですけどね」
「上手いこと言ってるけど、巧くないから、それ……」
『目の色を変えてまで』
秋といえば食べ物が美味しくなるし、読書や勉学に励みたい気になる。
『○○の秋』とはよく言ったもので、最近ではナギも漫画賞へ向けてひたすらペンを握る毎日を送っているし、生徒会三人娘も、お世話になっている動画投稿サイトで秋の投稿祭が行われているらしく、動画製作に勤しんでいた。
普段何事も不真面目に行う者が、何かに向けて一生懸命になるというのは、中々に新鮮で、中々に不自然でもあるのだが。
「本当、どうして生徒会の仕事は目の色変えてやってくれないのかしらね……」
深いため息をつくヒナギクに、ハヤテは苦笑するしかない。
そう。生徒会のメンバーが私情に目の色を変えてしまっているために、本日の生徒会の仕事もハヤテとヒナギクの二人で行っていたのだ。
別にハヤテは生徒会役員ではないのだが、ヒナギクを見ていたら手伝わずにはいられなかった。
勿論ハヤテも屋敷の仕事があるが、マリアに事情を説明してあるので、ヒナギクの手伝いをしている間は、屋敷の仕事はマリアとクラウスにしてもらっている。
「まぁでも、当分は僕もヒナギクさんの手伝いが出来ますので、三人の分まで力にならせていただきます」
「………ハヤテ君は既に三人分以上の仕事してるわよ」
「そうですか?」
「そうなの。だからね、色々考えさせられるのよ」
ヒナギクはそう言うと、もう一度深くため息をついた。
ハヤテの方をちら、と見た後、遠い目をして夕焼けに染まった空を見上げ、呟く。
「三人いても仕事が進まないあの子たちは、なんなのかしらって」
「………」
ハヤテはそのことに何も言えなかった。
泉たちとヒナギクをあわせた四人より、ハヤテとヒナギクの二人で仕事に取り組んだ方が、仕事が倍近く進むという事実は、事実であり、証明でもある。
「………ねぇハヤテ君?生徒会入らない?」
「流石に瀬川さんたちが泣いてしまいますよ」
ハヤテは本当に、余計なことは言えなかった。
泉たちの話題を何とか逸らすことに成功したハヤテは、変哲もない話題を挙げながらヒナギクと帰り道を歩いていた。
今は途中で見かけた公園で、道草を食っている。
「そういえば、目の色変えるで思ったんですが」
冬が近づいてきたからだろうか、公園には人っ子一人存在せず、街灯が暗い園内を照らしている。
その公園のベンチに二人は腰を下ろすと、ハヤテが口を開いた。
「ヒナギクさんは今、一生懸命になっていることはありますか?」
「私?」
急にやってきた自身への質問に、ヒナギクは少しきょとんとしていた。
「目の色変えて……?」
「はい。ヒナギクさんって何事にも一生懸命ですけれど、その中でも特に力を入れているものって、ありますか?」
「な、何よ……。褒めたって何も出ないんだから」
「事実ですから」
うんうん、と頷くハヤテに、ヒナギクはうーん、と首をひねる。
夢中になるもの。目の色を変えてまで、白皇生徒会長の自分が一生懸命になっているもの。
いきなり言われても、そう簡単には出てこない。
「(何か……あったかしら?)」
そもそも、何事にも一生懸命とハヤテは言ったが、ヒナギクの中では『それが当たり前』となってしまっているので、イマイチハヤテの言葉にも実感が湧かないのだ。
「(私が自身を持って、一生懸命やっていると言えるもの……)」
泉たちやナギは、自分の好きなものに一生懸命になっていた。
その姿を見て、どんなことがあっても生徒会に参加しろ、とは強く言えなかったのだ。
どんなに下らない理由だったとしても、本人たちからすれば何物にも変えがたい大事な事かもしれないから。
そんな彼女たちと同等のものが、自分にはあるのだろうか。
何かに夢中になれるものが、自分にはあるだろうか。
「………あ」
そこまで考えて、ヒナギクは思い至った。
ナギたちは何に一生懸命だったのか。
「ハヤテ君……」
「はい?何ですか?」
「正直言うとね、私って、何事も一生懸命に取り組んでいるわけじゃないのよ」
「え?」
「ただ、当たり前のように行っていることが他の人からはそういう風に見られているだけで、私自身はそんな、一生懸命って言葉が当て嵌るような事をしているつもりはないの」
「そう……なんですか」
「でもね」
残念な表情を浮かべたハヤテだったが、ヒナギクの答えはそれで終わりではなかった。
「私にも、目の色が変わってしまうくらい一生懸命になっているものが、一つだけあったわ」
そう、つまりそういうことだ。
漫画賞を獲るだとか、動画を撮るだとか、形あるものを得るためだけが、それに当てはまるわけではない。
『形ないもの』にだって、人は、ヒナギクは、目の色を変えるほど夢中になれるものがあるのだ。
「それはね」
ハッと息を小さく吸って、続く答えを、ヒナギクは言葉にした。
「……ハヤテ君に恋すること」
「…………え?」
言って、ヒナギクは頬を赤く染めた。
言ってて恥ずかしくなったらしい。
しかし言葉の意味を理解したハヤテは、もっと赤い顔をしていた。
「…………」
そんなハヤテを満足そうに見て、ヒナギクはニコリ、と微笑んだ。
「それが、私の答えよ」
「………それは…なんというか、その……光栄、です……」
「えへへ……」
ヒナギクはハヤテの右腕を抱きこむと、そのままハヤテに身を委ねる形になった。
「ヒナギクさん?」
「目の色変えるくらい夢中なんだから、このくらいいいわよね?」
「痛い、痛いですって」
絶対離すものか、とヒナギクは腕に力を加えた。
締められれば痛みは増し、比例してヒナギクの温もりもより感じれる。
まるで子供のようなヒナギクの姿にハヤテは苦笑を浮かべつつも、そんな彼女が愛しいと思う。
純粋すぎる好意を向けてくれるヒナギクが、愛しくてたまらない。
この温もりを、できればこれからもずっと、感じていたいと思った。思ったから。
思ったからこそ。
「ヒナギクさん」
「ん?」
自分を抱きしめる少女に、ハヤテは言った。
「どうやら僕も、目の色が変わってしまうくらいにヒナギクさんに恋しているようです」
顔はまだ赤いままだったが、その言葉はしっかりとヒナギクに届いたと思う。
なぜなら。
「……そう」
街灯と月明かりが照らした彼女の表情が、とても幸せそうだったのだから。
秋もまだまだこれからという、10月の上旬。
身を寄せ合う恋人たちの時間も、染まりきっていない銀杏の葉のように、これからもっと美しく色を変えていくことだろう。
End
ようやく完成しました。新作です。
久しぶりの、ハヤヒナです。
相変わらず拙い文章スイマセン(汗
本当に久しぶりで、なかなか上手く書けなかった作品ですorz
これからハヤヒナもっと書いて、リハビリしていこうと思います。
この小説はベディアン様のサイトhttp://id35.fm-p.jp/88/HAKUREN/?guid=onに寄贈させていただきました。
是非足を運んで見てください。
それでは、どうぞ~♪
秋もまだまだこれからという、10月の上旬。
染まりきっていない銀杏の木の下を、ハヤテとヒナギクは歩いていた。
「まだ紅葉は始まってないみたいですねー」
「そりゃそうよ。だってまだ秋の初めじゃない」
秋が深まる、という言葉が当て嵌るにはまだ早い時期。
色が変わっていない銀杏の葉を見ながら呟かれたハヤテの言葉に、ヒナギクが答える。
「これの色がはっきり変わるには、もう少しかかりそうね」
「そうですね……。お嬢様や瀬川さんたちの目の色は、すっかり変わっているんですけどね」
「上手いこと言ってるけど、巧くないから、それ……」
『目の色を変えてまで』
秋といえば食べ物が美味しくなるし、読書や勉学に励みたい気になる。
『○○の秋』とはよく言ったもので、最近ではナギも漫画賞へ向けてひたすらペンを握る毎日を送っているし、生徒会三人娘も、お世話になっている動画投稿サイトで秋の投稿祭が行われているらしく、動画製作に勤しんでいた。
普段何事も不真面目に行う者が、何かに向けて一生懸命になるというのは、中々に新鮮で、中々に不自然でもあるのだが。
「本当、どうして生徒会の仕事は目の色変えてやってくれないのかしらね……」
深いため息をつくヒナギクに、ハヤテは苦笑するしかない。
そう。生徒会のメンバーが私情に目の色を変えてしまっているために、本日の生徒会の仕事もハヤテとヒナギクの二人で行っていたのだ。
別にハヤテは生徒会役員ではないのだが、ヒナギクを見ていたら手伝わずにはいられなかった。
勿論ハヤテも屋敷の仕事があるが、マリアに事情を説明してあるので、ヒナギクの手伝いをしている間は、屋敷の仕事はマリアとクラウスにしてもらっている。
「まぁでも、当分は僕もヒナギクさんの手伝いが出来ますので、三人の分まで力にならせていただきます」
「………ハヤテ君は既に三人分以上の仕事してるわよ」
「そうですか?」
「そうなの。だからね、色々考えさせられるのよ」
ヒナギクはそう言うと、もう一度深くため息をついた。
ハヤテの方をちら、と見た後、遠い目をして夕焼けに染まった空を見上げ、呟く。
「三人いても仕事が進まないあの子たちは、なんなのかしらって」
「………」
ハヤテはそのことに何も言えなかった。
泉たちとヒナギクをあわせた四人より、ハヤテとヒナギクの二人で仕事に取り組んだ方が、仕事が倍近く進むという事実は、事実であり、証明でもある。
「………ねぇハヤテ君?生徒会入らない?」
「流石に瀬川さんたちが泣いてしまいますよ」
ハヤテは本当に、余計なことは言えなかった。
泉たちの話題を何とか逸らすことに成功したハヤテは、変哲もない話題を挙げながらヒナギクと帰り道を歩いていた。
今は途中で見かけた公園で、道草を食っている。
「そういえば、目の色変えるで思ったんですが」
冬が近づいてきたからだろうか、公園には人っ子一人存在せず、街灯が暗い園内を照らしている。
その公園のベンチに二人は腰を下ろすと、ハヤテが口を開いた。
「ヒナギクさんは今、一生懸命になっていることはありますか?」
「私?」
急にやってきた自身への質問に、ヒナギクは少しきょとんとしていた。
「目の色変えて……?」
「はい。ヒナギクさんって何事にも一生懸命ですけれど、その中でも特に力を入れているものって、ありますか?」
「な、何よ……。褒めたって何も出ないんだから」
「事実ですから」
うんうん、と頷くハヤテに、ヒナギクはうーん、と首をひねる。
夢中になるもの。目の色を変えてまで、白皇生徒会長の自分が一生懸命になっているもの。
いきなり言われても、そう簡単には出てこない。
「(何か……あったかしら?)」
そもそも、何事にも一生懸命とハヤテは言ったが、ヒナギクの中では『それが当たり前』となってしまっているので、イマイチハヤテの言葉にも実感が湧かないのだ。
「(私が自身を持って、一生懸命やっていると言えるもの……)」
泉たちやナギは、自分の好きなものに一生懸命になっていた。
その姿を見て、どんなことがあっても生徒会に参加しろ、とは強く言えなかったのだ。
どんなに下らない理由だったとしても、本人たちからすれば何物にも変えがたい大事な事かもしれないから。
そんな彼女たちと同等のものが、自分にはあるのだろうか。
何かに夢中になれるものが、自分にはあるだろうか。
「………あ」
そこまで考えて、ヒナギクは思い至った。
ナギたちは何に一生懸命だったのか。
「ハヤテ君……」
「はい?何ですか?」
「正直言うとね、私って、何事も一生懸命に取り組んでいるわけじゃないのよ」
「え?」
「ただ、当たり前のように行っていることが他の人からはそういう風に見られているだけで、私自身はそんな、一生懸命って言葉が当て嵌るような事をしているつもりはないの」
「そう……なんですか」
「でもね」
残念な表情を浮かべたハヤテだったが、ヒナギクの答えはそれで終わりではなかった。
「私にも、目の色が変わってしまうくらい一生懸命になっているものが、一つだけあったわ」
そう、つまりそういうことだ。
漫画賞を獲るだとか、動画を撮るだとか、形あるものを得るためだけが、それに当てはまるわけではない。
『形ないもの』にだって、人は、ヒナギクは、目の色を変えるほど夢中になれるものがあるのだ。
「それはね」
ハッと息を小さく吸って、続く答えを、ヒナギクは言葉にした。
「……ハヤテ君に恋すること」
「…………え?」
言って、ヒナギクは頬を赤く染めた。
言ってて恥ずかしくなったらしい。
しかし言葉の意味を理解したハヤテは、もっと赤い顔をしていた。
「…………」
そんなハヤテを満足そうに見て、ヒナギクはニコリ、と微笑んだ。
「それが、私の答えよ」
「………それは…なんというか、その……光栄、です……」
「えへへ……」
ヒナギクはハヤテの右腕を抱きこむと、そのままハヤテに身を委ねる形になった。
「ヒナギクさん?」
「目の色変えるくらい夢中なんだから、このくらいいいわよね?」
「痛い、痛いですって」
絶対離すものか、とヒナギクは腕に力を加えた。
締められれば痛みは増し、比例してヒナギクの温もりもより感じれる。
まるで子供のようなヒナギクの姿にハヤテは苦笑を浮かべつつも、そんな彼女が愛しいと思う。
純粋すぎる好意を向けてくれるヒナギクが、愛しくてたまらない。
この温もりを、できればこれからもずっと、感じていたいと思った。思ったから。
思ったからこそ。
「ヒナギクさん」
「ん?」
自分を抱きしめる少女に、ハヤテは言った。
「どうやら僕も、目の色が変わってしまうくらいにヒナギクさんに恋しているようです」
顔はまだ赤いままだったが、その言葉はしっかりとヒナギクに届いたと思う。
なぜなら。
「……そう」
街灯と月明かりが照らした彼女の表情が、とても幸せそうだったのだから。
秋もまだまだこれからという、10月の上旬。
身を寄せ合う恋人たちの時間も、染まりきっていない銀杏の葉のように、これからもっと美しく色を変えていくことだろう。
End
どうも、関ヶ原です。
新作できました。
今回もハヤヒナではないという裏切り、早くハヤヒナを書きたいです。
さて、今回のタイトルは、バイト先でかかっていたラジオに投稿されたハガキのタイトルから頂きました。
聞いた瞬間これだ、と思いました。
ラジオも聞いてみるものですね。
それではどうぞ~♪
『私たち、結婚します』と、ガンプラまみれの俺の部屋に高校の同級生からそんな手紙が届いた。
手紙の内容は結婚式の案内状。
彼等に悪気は微塵もなかろうが、彼女がいない俺にとってはまさに悪意で塗り固められたかのような内容であった。
まぁもちろんそんな事は言えないし、ガンプラばかり作っていた俺にも手紙をくれたのは嬉しかったし、友人の門出を祝ってやろうと思い、俺ーー薫京之介は、友人の結婚式に参列していたのだった。
『残り福』
結婚式というものはなかなかに退屈なものだ。
高校時代の友人に久しぶりにあったりできたのは、高校時代に戻れたような気がして(俺の高校時代は灰色であったが)嬉しいのだが、馴れ初めなどの話を聞くのは正直言って億劫だった。
勿論そんな事は口にできない。
する気もない。
駄々をこねる小さいガキじゃないのだし、流す程度に話を聞いているのが一番無難だろう。
「……と、俺は思うんだけどな」
そんな事をため息とともに呟きながら、俺は傍らに座る奴を見た。
「酒を飲ませろぉぉぉ!!!」
「お前の態度は失礼過ぎるんだよ!!」
友人の結婚式というめでたいイベントにも関わらず祝いの『祝』の部首程度すら祝う気持ちを持たない奴。
新郎新婦のミスは、高校時代とは大きく変わってしまったこの女を招待してしまったことだ。
桂雪路。当時の俺のクラスの人気者。
変わり果てた雪路の姿を目の当たりにした時の旧友たちの顔は、しばらくは忘れられないだろう。
「お前はクラスメートを祝うこともできんのか…」
「ん?何言ってんのアンタ?ちゃんとお金は出したわよ?」
「そういう意味じゃなくて…ってかその金も俺が出したんじゃねーか!!」
結婚式当日になって金がないと堂々と言ってきたのはどこのどいつだったろうか。
「うっさいわねー。ちゃんとお礼はしたでしょー?」
「ワンカップ焼酎一本が果たしてお礼になるのかよ!?」
「何よ、あたしだって断腸の思いであげたんだからね!?」
数百円の酒にいちいち腸を断ってられるか!
そう言おうとして、俺はここが結婚式場だということを思いだし、口をつぐんだ。
そういえば先程から、周りの視線が痛い。
「雪路」
「あん?」
どうして喧嘩腰なんだ、お前は。
「来い」
「え?あ、ちょ、お酒ーーー!!」
取り敢えず色々と無視して、俺は雪路の手を取り会場を出た。
これ以上あの場所にいても(雪路が)迷惑をかけるだけだろうし、新郎新婦より目立ってしまっては彼等に申し訳なくてガンプラを壊してしまいそうだ。
十分挨拶もしたし、二人抜けたところで問題ないだろう。
寧ろ、抜けたほうがいい奴を連れ出したのだから問題がなくなったはずだ。
「ちょっとアンタ何すんのよ!?今抜けちゃったらお酒飲めないじゃない!!」
「あの空気で酒が飲めるか!主役よりも脇役が目立ってたじゃねーか!!」
「脇役で飲む酒よりも主役で飲む酒のほうが美味しいじゃん」
悪びれた様子もなく言う雪路に、俺は深い深いため息をつくしかない。
どうしてコイツは、こうなんだろうか。
高校時代のころも馬鹿だなぁと思うことはしばしばあったが、それが年齢を重ねるごとに悪化するとは誰も思うまい。
普通大人になれば少しは利口になるものなのだ。
「あのなぁ、仮にも俺達の級友の結婚式なんだぜ?華持たせることくらいするのが普通なんじゃねーの?」
「私を差し置いて幸せになろうなんざ、そうは問屋が卸さないっての」
「………」
駄目だコイツ、相当捻くれてやがる。
「あのなぁ、お前そんなことじゃ」
「私だって……出来ることなら幸せになりたいわよ」
「え……?」
普段の雪路からは考えられないような言葉を聞いて、俺は驚いて雪路を見た。
若干視線は下を向き、いつもの覇気が今は微塵も感じられない。
「雪路……?」
「ふん!どうせ私は婚期逃した女ですよ!!文句あるかーーー!!!」
俺がなんて声をかけたらいいか迷っているうちに、ぱっと雪路は顔を上げて叫んだ。
ああ、いつもの雪路だった。
「彼氏なんていないわよ!悪い!?」
「い、いやべつに……」
「てか、彼氏なんて呼べるもん居たことがあったかーー!?」
「しらねぇよ!!」
なんなんだ!?コイツは急に!
いつも通りのこの女に安心しつつも戸惑う俺に構わず、雪路は叫びを続ける。
今更だが、コイツを連れ出したのは正解だった。
「何よ何よ!男が何だってのよ!そりゃあ私だって女だし!?恋愛ぐらい興味あるわよ!?だからって………それがナンボのもんじゃーーーい!!!」
あぁ、コイツのこの馬鹿でかい声は、中にいる主役たちに聞こえてないだろうか。
叫ぶ雪路をなんとか扉から遠ざけながら、俺は聞こえていない事を切に願う。
雪路の叫ぶ声を聞いて何事か、と寄ってくる式場の人に「飲み過ぎただけです」と言い、一先ず俺は雪路を外に出すことに成功したのだった。
…
「………ったく」
式場を出たところで、雪路はようやく興奮が冷めてくれたらしい。
今ではバツの悪そうな表情を浮かべながら、こちらをジト目で睨んでいる。理不尽な視線だなオイ。
『私悪くないもん』と言っているようなその視線には、ため息をつくことしか出来ない。
絶対的にコイツが悪いのだから。
「………何よ」
「別に」
何か文句ある?と視線で語る雪路。
文句なら有りまくりなのだが、ここで雪路の機嫌をこれ以上損ねさせても、俺の文句を増やすだけだろう。
そんな事もあってあんな返答。
エ○カ様とまではいかないが、少しばかり怒りの感情を込めて。
「何よその返事?文句ならありますーって顔に書いてるわよ」
「書いてるか。それに文句なんてねえって」
基本馬鹿だが、こういうところだけは目敏い奴だった。
「ふん。どうせアタシはうるさくて貰い手のいない寂しい女ですよー」
「痛ぇ!頬を抓るな馬鹿雪路!」
「うるせぇバーーカ!!」
雪路は俺の頬を弄びながら、叫ぶ。
「貰い手がないのはそっちだって一緒じゃん!」
「俺は貰う方だ。婿入りなんてするか!」
「アンタに貰ってもらう女なんて、果たしているのかしらね!」
「あんだとぅ!?」
「何よ?本当のことを言ったまででしょ!」
お互いに額をくっつけ、フーッフーッと猫のように威嚇する。
流石に温厚な俺も、ここまで(図星という)言われては堪忍袋の緒が切れるというもの。
「………」
「………」
しかし。
無言の睨み合いを続けているうちに、何だか虚しくなってきた。
皆から取り残された二人が言い合っても、ある意味傷の舐め合いでしかないと思ったからだ。
………舐め合う前に互いの傷口に塩を満遍なく塗ったくった後だが。
「……やめようぜ、こんなことしてても虚しくなるだけだ」
「……そうね」
舐め合った傷はしょっぱすぎた。
雪路もそう思ったのか、深い深いため息とともに、肩の力を抜いた。
と、そこで俺達は、キス出来そうなくらいに互いの顔が近くなっていたことを今頃気づいた。
さっきまで気がたっていて全く意識になかったが、本来コイツは俺の想い人なのだ。
さすが桂ヒナギク嬢の姉。
整った顔と薄ピンクの唇が、互いの吐息が分かる位の位置にある。
「――――っ」
頬がカァッと赤くなって、俺はガバッと雪路から顔を離した。
ありきたりすぎるラブコメ的展開に、心臓はバクバクだ。
「わ、わりぃ……熱くなりすぎた」
頭を下げて雪路を伺うと、雪路の顔も赤くなっていた。
「ふ、ふん。分かればいいのよ」
確実に怒ると思っていただけに、その様子に少し驚いた。
気のせいか、返ってくる言葉にも棘がない。
「………」
驚いた俺の顔をちら、と見て雪路は恥ずかしそうに言った。
「ねぇ、飲みにいかない?アンタの奢りで」
「は?」
その言葉に、今度こそ俺は愕然とする。
少なくとも、頬を染めながら言う言葉ではなかった。しかも奢りとか言ってるし。
今更だが、本当いい性格をしてると思う。
「なんで俺がお前に奢らなきゃなんねーんだよ」
「仕方ないじゃない。私の今の幸せは酒を飲むことなんだから」
嫌そうな顔を俺は浮かべたが、次の雪路の言葉によって、その顔も苦笑に変わった。
「それに」
いや、変わらざるをえなかった。
だってこの言葉は反則だろう?
「私に幸せを提供出来るのは、アンタしかいないのよ」
「!」
本当にいい性格をしていると思った。
「……安いところだからな」
「うわ、マジ!?ありがと!!」
瞳を輝かせて俺を見る雪路。
そんな雪路を見て、俺はこう考えることにした。
「まぁ……好きな奴と酒飲めると考えりゃあ」
「は?何か言った?」
「何でもねーよ。ほら行くぞ。案内任せたからな」
好きな人と一緒に何か出来ること。
「任せなさい!じゃあさっさと行くわよ、京之介!!」
そして最後の雪路の言葉は、神様が俺にくれた、残り福なのではないかと。
「ほら、なにやってんの!置いてくわよ!?」
「分かった分かった」
そんな事を考えながら、俺はアイツの隣へと歩いていった。
もし仮にそうだとするなら、アイツにも残り福を与えなければならないのだから。
End
新作できました。
今回もハヤヒナではないという裏切り、早くハヤヒナを書きたいです。
さて、今回のタイトルは、バイト先でかかっていたラジオに投稿されたハガキのタイトルから頂きました。
聞いた瞬間これだ、と思いました。
ラジオも聞いてみるものですね。
それではどうぞ~♪
『私たち、結婚します』と、ガンプラまみれの俺の部屋に高校の同級生からそんな手紙が届いた。
手紙の内容は結婚式の案内状。
彼等に悪気は微塵もなかろうが、彼女がいない俺にとってはまさに悪意で塗り固められたかのような内容であった。
まぁもちろんそんな事は言えないし、ガンプラばかり作っていた俺にも手紙をくれたのは嬉しかったし、友人の門出を祝ってやろうと思い、俺ーー薫京之介は、友人の結婚式に参列していたのだった。
『残り福』
結婚式というものはなかなかに退屈なものだ。
高校時代の友人に久しぶりにあったりできたのは、高校時代に戻れたような気がして(俺の高校時代は灰色であったが)嬉しいのだが、馴れ初めなどの話を聞くのは正直言って億劫だった。
勿論そんな事は口にできない。
する気もない。
駄々をこねる小さいガキじゃないのだし、流す程度に話を聞いているのが一番無難だろう。
「……と、俺は思うんだけどな」
そんな事をため息とともに呟きながら、俺は傍らに座る奴を見た。
「酒を飲ませろぉぉぉ!!!」
「お前の態度は失礼過ぎるんだよ!!」
友人の結婚式というめでたいイベントにも関わらず祝いの『祝』の部首程度すら祝う気持ちを持たない奴。
新郎新婦のミスは、高校時代とは大きく変わってしまったこの女を招待してしまったことだ。
桂雪路。当時の俺のクラスの人気者。
変わり果てた雪路の姿を目の当たりにした時の旧友たちの顔は、しばらくは忘れられないだろう。
「お前はクラスメートを祝うこともできんのか…」
「ん?何言ってんのアンタ?ちゃんとお金は出したわよ?」
「そういう意味じゃなくて…ってかその金も俺が出したんじゃねーか!!」
結婚式当日になって金がないと堂々と言ってきたのはどこのどいつだったろうか。
「うっさいわねー。ちゃんとお礼はしたでしょー?」
「ワンカップ焼酎一本が果たしてお礼になるのかよ!?」
「何よ、あたしだって断腸の思いであげたんだからね!?」
数百円の酒にいちいち腸を断ってられるか!
そう言おうとして、俺はここが結婚式場だということを思いだし、口をつぐんだ。
そういえば先程から、周りの視線が痛い。
「雪路」
「あん?」
どうして喧嘩腰なんだ、お前は。
「来い」
「え?あ、ちょ、お酒ーーー!!」
取り敢えず色々と無視して、俺は雪路の手を取り会場を出た。
これ以上あの場所にいても(雪路が)迷惑をかけるだけだろうし、新郎新婦より目立ってしまっては彼等に申し訳なくてガンプラを壊してしまいそうだ。
十分挨拶もしたし、二人抜けたところで問題ないだろう。
寧ろ、抜けたほうがいい奴を連れ出したのだから問題がなくなったはずだ。
「ちょっとアンタ何すんのよ!?今抜けちゃったらお酒飲めないじゃない!!」
「あの空気で酒が飲めるか!主役よりも脇役が目立ってたじゃねーか!!」
「脇役で飲む酒よりも主役で飲む酒のほうが美味しいじゃん」
悪びれた様子もなく言う雪路に、俺は深い深いため息をつくしかない。
どうしてコイツは、こうなんだろうか。
高校時代のころも馬鹿だなぁと思うことはしばしばあったが、それが年齢を重ねるごとに悪化するとは誰も思うまい。
普通大人になれば少しは利口になるものなのだ。
「あのなぁ、仮にも俺達の級友の結婚式なんだぜ?華持たせることくらいするのが普通なんじゃねーの?」
「私を差し置いて幸せになろうなんざ、そうは問屋が卸さないっての」
「………」
駄目だコイツ、相当捻くれてやがる。
「あのなぁ、お前そんなことじゃ」
「私だって……出来ることなら幸せになりたいわよ」
「え……?」
普段の雪路からは考えられないような言葉を聞いて、俺は驚いて雪路を見た。
若干視線は下を向き、いつもの覇気が今は微塵も感じられない。
「雪路……?」
「ふん!どうせ私は婚期逃した女ですよ!!文句あるかーーー!!!」
俺がなんて声をかけたらいいか迷っているうちに、ぱっと雪路は顔を上げて叫んだ。
ああ、いつもの雪路だった。
「彼氏なんていないわよ!悪い!?」
「い、いやべつに……」
「てか、彼氏なんて呼べるもん居たことがあったかーー!?」
「しらねぇよ!!」
なんなんだ!?コイツは急に!
いつも通りのこの女に安心しつつも戸惑う俺に構わず、雪路は叫びを続ける。
今更だが、コイツを連れ出したのは正解だった。
「何よ何よ!男が何だってのよ!そりゃあ私だって女だし!?恋愛ぐらい興味あるわよ!?だからって………それがナンボのもんじゃーーーい!!!」
あぁ、コイツのこの馬鹿でかい声は、中にいる主役たちに聞こえてないだろうか。
叫ぶ雪路をなんとか扉から遠ざけながら、俺は聞こえていない事を切に願う。
雪路の叫ぶ声を聞いて何事か、と寄ってくる式場の人に「飲み過ぎただけです」と言い、一先ず俺は雪路を外に出すことに成功したのだった。
…
「………ったく」
式場を出たところで、雪路はようやく興奮が冷めてくれたらしい。
今ではバツの悪そうな表情を浮かべながら、こちらをジト目で睨んでいる。理不尽な視線だなオイ。
『私悪くないもん』と言っているようなその視線には、ため息をつくことしか出来ない。
絶対的にコイツが悪いのだから。
「………何よ」
「別に」
何か文句ある?と視線で語る雪路。
文句なら有りまくりなのだが、ここで雪路の機嫌をこれ以上損ねさせても、俺の文句を増やすだけだろう。
そんな事もあってあんな返答。
エ○カ様とまではいかないが、少しばかり怒りの感情を込めて。
「何よその返事?文句ならありますーって顔に書いてるわよ」
「書いてるか。それに文句なんてねえって」
基本馬鹿だが、こういうところだけは目敏い奴だった。
「ふん。どうせアタシはうるさくて貰い手のいない寂しい女ですよー」
「痛ぇ!頬を抓るな馬鹿雪路!」
「うるせぇバーーカ!!」
雪路は俺の頬を弄びながら、叫ぶ。
「貰い手がないのはそっちだって一緒じゃん!」
「俺は貰う方だ。婿入りなんてするか!」
「アンタに貰ってもらう女なんて、果たしているのかしらね!」
「あんだとぅ!?」
「何よ?本当のことを言ったまででしょ!」
お互いに額をくっつけ、フーッフーッと猫のように威嚇する。
流石に温厚な俺も、ここまで(図星という)言われては堪忍袋の緒が切れるというもの。
「………」
「………」
しかし。
無言の睨み合いを続けているうちに、何だか虚しくなってきた。
皆から取り残された二人が言い合っても、ある意味傷の舐め合いでしかないと思ったからだ。
………舐め合う前に互いの傷口に塩を満遍なく塗ったくった後だが。
「……やめようぜ、こんなことしてても虚しくなるだけだ」
「……そうね」
舐め合った傷はしょっぱすぎた。
雪路もそう思ったのか、深い深いため息とともに、肩の力を抜いた。
と、そこで俺達は、キス出来そうなくらいに互いの顔が近くなっていたことを今頃気づいた。
さっきまで気がたっていて全く意識になかったが、本来コイツは俺の想い人なのだ。
さすが桂ヒナギク嬢の姉。
整った顔と薄ピンクの唇が、互いの吐息が分かる位の位置にある。
「――――っ」
頬がカァッと赤くなって、俺はガバッと雪路から顔を離した。
ありきたりすぎるラブコメ的展開に、心臓はバクバクだ。
「わ、わりぃ……熱くなりすぎた」
頭を下げて雪路を伺うと、雪路の顔も赤くなっていた。
「ふ、ふん。分かればいいのよ」
確実に怒ると思っていただけに、その様子に少し驚いた。
気のせいか、返ってくる言葉にも棘がない。
「………」
驚いた俺の顔をちら、と見て雪路は恥ずかしそうに言った。
「ねぇ、飲みにいかない?アンタの奢りで」
「は?」
その言葉に、今度こそ俺は愕然とする。
少なくとも、頬を染めながら言う言葉ではなかった。しかも奢りとか言ってるし。
今更だが、本当いい性格をしてると思う。
「なんで俺がお前に奢らなきゃなんねーんだよ」
「仕方ないじゃない。私の今の幸せは酒を飲むことなんだから」
嫌そうな顔を俺は浮かべたが、次の雪路の言葉によって、その顔も苦笑に変わった。
「それに」
いや、変わらざるをえなかった。
だってこの言葉は反則だろう?
「私に幸せを提供出来るのは、アンタしかいないのよ」
「!」
本当にいい性格をしていると思った。
「……安いところだからな」
「うわ、マジ!?ありがと!!」
瞳を輝かせて俺を見る雪路。
そんな雪路を見て、俺はこう考えることにした。
「まぁ……好きな奴と酒飲めると考えりゃあ」
「は?何か言った?」
「何でもねーよ。ほら行くぞ。案内任せたからな」
好きな人と一緒に何か出来ること。
「任せなさい!じゃあさっさと行くわよ、京之介!!」
そして最後の雪路の言葉は、神様が俺にくれた、残り福なのではないかと。
「ほら、なにやってんの!置いてくわよ!?」
「分かった分かった」
そんな事を考えながら、俺はアイツの隣へと歩いていった。
もし仮にそうだとするなら、アイツにも残り福を与えなければならないのだから。
End
どうも~関ヶ原です。
なかなか上位のディアブロスへいけない俺涙目。
あとHR5上げろとか、俺に寝るなといいたいのでしょうか?
……まぁそれはともかくとして。
新作できましたぁ!(わ~ぱちぱち)
今回は主役の二人が出てこない、久しぶりのお話です。
というか、恐らく俺が初めて焦点をあてたキャラではないでしょうか?
なんというか、コイツの話、書き難ぇ~。
とまぁ、いつもの通り統一性が見られない文章ではありますが!
どうか最後まで読んでくださいましm(__)m
それではどうぞ~☆
結婚する、ということは人生の中でも一、二位を争うくらい大切なものだと思う。
だからこそ、相手は自分の理想にあった人物が良いと思うのは当然なわけで。
政略結婚のように、両親に決められた人物とか、そんな感じの結婚や恋愛は嫌と思うのは当然ではなかろうか。
少なからず、自分はそう思っているのだ。
………だから。
「雪ちゃん、あなたそろそろ結婚しなさい」
そんな理想的な相手も、彼氏もいない自分にそういうことを言われたところで、はいそうですかと答えられるわけがないことをこの義母は理解しているのだろうか。
と、軽い頭痛を覚えながら、桂雪路は本日何度目かも分からないため息をついたのだった。
『その時はその時』
「相手もいないのに結婚なんて出来るわけないでしょーが」
「雪ちゃんに彼氏がいないのは知ってるわよ~。だと思ってぇ、はいこれ♪」
失礼な、と言わせる暇も与えず渡されたのは、数枚のお見合い写真である。
「何よこれ?」
「お見合い写真」
「知ってるわよ!だから、なんで私にお見合い写真なんか渡してくるのよ?」
「そんなの簡単じゃない」
雪路の言葉に、義母は笑顔で答える。
「そうでもしない限り、雪ちゃんもらってくれる人なんていないからよ♪」
「うっさいわ―――!!」
ばぁん!とお見合い写真をテーブルに叩きつけながら、雪路は叫ぶようにして言葉を連ねた。
「久しぶりに家に来たと思えば、何なのよ!?結婚しろだの、お見合い写真だの!!」
「久しぶりだからこそ言っておかなきゃいけないじゃない」
「その前に色々出来ることあるじゃない!!おいしいご飯作ってくれるとか、良いお酒飲ませてくれるとか、お酒とかお酒とか!!」
「お酒なら毎日飲んでるじゃない」
「それとこれは別―――!!それに!!」
連ねた言葉は酒であったが、それは別にして。
雪路は窓の外―――離れを指差す。
それは確か……雪路の部屋に充てられていた場所であった。
「何で私の部屋(だったところ)に、綾崎君の私物が置いてあるのよ!?てか、完全に綾崎君の部屋じゃない!!」
そう、そこは確かに雪路の部屋だったはず。
部屋に入れば大量の酒瓶。チューハイの缶。
雪路にとっては酒に囲まれた生活が送れる、嗜好の一室だった。
それが、帰ってきてドアを開けたら、なんということでしょう。
加藤み○りのナレーションも1オクターブ上がるくらい、部屋が変わっていた。
離れなど一つしかないはずなのに、場所を間違えたかと思ったくらいに、自分の部屋は別物になっていた。
おびただしいくらいの酒が一掃され、変わりにあったのは男物の衣類、勉強道具、そして―――執事服。
雪路には妹がいるが、彼女の私物でないことは一目瞭然だった。
となれば、これらの荷物の所有者は、別の人物ということになる。
というか、桂家と関りのある、執事服を着るような人物など、雪路には心当たりが一人しかいなかった。
「いつから桂家に綾崎ハヤテが加わったのよ!?」
綾崎ハヤテ。
三千院ナギの執事であり、他でもない、自分の教え子。
そして妹の彼氏であった。
激昂する雪路に対し、義母はやんわりと笑うだけだ。
「だってぇ、最近綾崎君ウチに泊まること多いしぃ、雪ちゃんめったに帰ってこないから、むしろ部屋作っちゃおうと思ってー」
「思うだけにしなさいよ!実行する馬鹿がどこにいる!?」
「ここー」
「もっと娘に優しくしなさいよぉぉぉ!!」
雪路は叫ぶ。叫ぶだけ叫ぶ。
しかし、雪路の眼前にいる人物は、全然気にしてはいない様子。
「………はぁ……」
そう。雪路だって分かっているのだ。
この義母に何かを言ったところで、自分の部屋問題が解決しないということに。
「…まぁいいわ。部屋のことは綾崎君と話すことにする」
「しても無駄だと思うけどね~」
「その自信の根拠はどっからくるのよ!……ったく」
本日何度目かも分からなくなったため息をつくと、雪路は義母に背を向けた。
「あら?どこかに出かけるの?」
「部屋ないし、宿直室に帰るのよ」
「そう?夕飯でも食べていけばいいのに」
「それくらいの手持ちはあるのよ。じゃあ、また来るわ」
「あ、まって雪ちゃん」
「もー何よ?」
面倒くさそうに後ろを振り向いた雪路に差し出されたのは、今さっき拝見したお見合い写真。
「忘れ物♪」
「いらないわよ!!」
それを義母に押し返し、雪路は桂家を後にした。
…
もう日も暮れてきた商店街を、雪路はとぼとぼと歩いていた。
「何よ、お見合いお見合いって……。こっちの都合は関係ないっての?」
義母の言葉が、思い出される。
『そうでもしない限り、雪ちゃんもらってくれる人なんていないからよ♪』
「………うっさい」
その言葉が、意外にも堪えていた。
確かに自分は、女性として何かが欠けていると思っている。
彼氏がいないのも良く分かっている。
自分の高校時代の友人たちは、どんどん結婚して家庭を持ち始めていることも、知っている。
「でも仕方ないじゃん」
それでも雪路がそういう恋愛的行動を起こそうとしないのは、恋愛がどういうものか、よく分からないからだ。
それに、恋愛に興味を抱いたことはあった。
だが、雪路の抱えていた事情がそれを発展させるのを拒ませたのだから。
両親の失踪、多額すぎる借金。
雪路は明るかったと人はいうが、その笑顔の裏にはそんな深刻な問題があったのである。
よく友達に遊びに誘われたが、行くことはなかった。
遊ぶ時間も、借金を返済するための時間に充てた。
それでも雪路は良かったのだ。
ヒナギクという大事な妹が、元気で育ってくれれば。
「………なにしんみりしてんだか。過去は過去なのに」
呟いて、雪路は苦笑した。
その妹も今では自分よりも立派になってくれた。
おかげで自分も自由奔放な暮らしが出来ているのだ。
過去があってこその今だが、その過去はもうどうでもいいのだから。
大切なのは、未来と、今日の晩飯を食べるためのお金だ。
義母には見栄を張ってしまったが、そもそもお金がないから実家に帰ってきたのではないか。
ぐぅ~、とお腹が鳴く。
珍しく頭を使ってしまったせいか、空腹も促進されてしまったらしい。
「あ~あ、お金もないし……。アイツんとこにでもいくか」
やれやれ、とため息をつく。
しかしため息をついた雪路の眼は獲物を見つめるものに変わっていた。
この腹を空かせた自分の前では、ガンプラばかり作っているアイツなどアブノ○スの如し。
「そうね、今日はなんかムカついてるし……寿司でも奢ってもらうとしますか」
そう言って、雪路は、ニッと笑った。
やはり自分は、恋愛とかそんなのを考えるよりも、今日の夕飯とかを考えたほうが良い。
理想的な相手とか、そんなのは生きていればそのうち出会えるだろうから。
今を生きるのに一生懸命なのに、先のことなんて考えてられない。
その時は、その時なのだから。
「さてさて、アイツはいるかしらー♪」
そう、その時はその時。
数年後、そのアイツからのプロポーズに頷く自分がいたとしても、雪路はその言葉を言いながら、きっと笑うことだろう。
End
「どうでもいいが、いきなり人ん家やってきて『寿司!』はねえだろ……?」
「細かい事気にすんじゃないわよ。アンタとアタシの仲じゃない」
「親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らんのかお前は」
「知ってるけど、礼儀を払う必要もなさそうだしね」
「………いつか泣かす」
「はん。出来るもんならやってみろってーの。期待せずに待ってるから」
なかなか上位のディアブロスへいけない俺涙目。
あとHR5上げろとか、俺に寝るなといいたいのでしょうか?
……まぁそれはともかくとして。
新作できましたぁ!(わ~ぱちぱち)
今回は主役の二人が出てこない、久しぶりのお話です。
というか、恐らく俺が初めて焦点をあてたキャラではないでしょうか?
なんというか、コイツの話、書き難ぇ~。
とまぁ、いつもの通り統一性が見られない文章ではありますが!
どうか最後まで読んでくださいましm(__)m
それではどうぞ~☆
結婚する、ということは人生の中でも一、二位を争うくらい大切なものだと思う。
だからこそ、相手は自分の理想にあった人物が良いと思うのは当然なわけで。
政略結婚のように、両親に決められた人物とか、そんな感じの結婚や恋愛は嫌と思うのは当然ではなかろうか。
少なからず、自分はそう思っているのだ。
………だから。
「雪ちゃん、あなたそろそろ結婚しなさい」
そんな理想的な相手も、彼氏もいない自分にそういうことを言われたところで、はいそうですかと答えられるわけがないことをこの義母は理解しているのだろうか。
と、軽い頭痛を覚えながら、桂雪路は本日何度目かも分からないため息をついたのだった。
『その時はその時』
「相手もいないのに結婚なんて出来るわけないでしょーが」
「雪ちゃんに彼氏がいないのは知ってるわよ~。だと思ってぇ、はいこれ♪」
失礼な、と言わせる暇も与えず渡されたのは、数枚のお見合い写真である。
「何よこれ?」
「お見合い写真」
「知ってるわよ!だから、なんで私にお見合い写真なんか渡してくるのよ?」
「そんなの簡単じゃない」
雪路の言葉に、義母は笑顔で答える。
「そうでもしない限り、雪ちゃんもらってくれる人なんていないからよ♪」
「うっさいわ―――!!」
ばぁん!とお見合い写真をテーブルに叩きつけながら、雪路は叫ぶようにして言葉を連ねた。
「久しぶりに家に来たと思えば、何なのよ!?結婚しろだの、お見合い写真だの!!」
「久しぶりだからこそ言っておかなきゃいけないじゃない」
「その前に色々出来ることあるじゃない!!おいしいご飯作ってくれるとか、良いお酒飲ませてくれるとか、お酒とかお酒とか!!」
「お酒なら毎日飲んでるじゃない」
「それとこれは別―――!!それに!!」
連ねた言葉は酒であったが、それは別にして。
雪路は窓の外―――離れを指差す。
それは確か……雪路の部屋に充てられていた場所であった。
「何で私の部屋(だったところ)に、綾崎君の私物が置いてあるのよ!?てか、完全に綾崎君の部屋じゃない!!」
そう、そこは確かに雪路の部屋だったはず。
部屋に入れば大量の酒瓶。チューハイの缶。
雪路にとっては酒に囲まれた生活が送れる、嗜好の一室だった。
それが、帰ってきてドアを開けたら、なんということでしょう。
加藤み○りのナレーションも1オクターブ上がるくらい、部屋が変わっていた。
離れなど一つしかないはずなのに、場所を間違えたかと思ったくらいに、自分の部屋は別物になっていた。
おびただしいくらいの酒が一掃され、変わりにあったのは男物の衣類、勉強道具、そして―――執事服。
雪路には妹がいるが、彼女の私物でないことは一目瞭然だった。
となれば、これらの荷物の所有者は、別の人物ということになる。
というか、桂家と関りのある、執事服を着るような人物など、雪路には心当たりが一人しかいなかった。
「いつから桂家に綾崎ハヤテが加わったのよ!?」
綾崎ハヤテ。
三千院ナギの執事であり、他でもない、自分の教え子。
そして妹の彼氏であった。
激昂する雪路に対し、義母はやんわりと笑うだけだ。
「だってぇ、最近綾崎君ウチに泊まること多いしぃ、雪ちゃんめったに帰ってこないから、むしろ部屋作っちゃおうと思ってー」
「思うだけにしなさいよ!実行する馬鹿がどこにいる!?」
「ここー」
「もっと娘に優しくしなさいよぉぉぉ!!」
雪路は叫ぶ。叫ぶだけ叫ぶ。
しかし、雪路の眼前にいる人物は、全然気にしてはいない様子。
「………はぁ……」
そう。雪路だって分かっているのだ。
この義母に何かを言ったところで、自分の部屋問題が解決しないということに。
「…まぁいいわ。部屋のことは綾崎君と話すことにする」
「しても無駄だと思うけどね~」
「その自信の根拠はどっからくるのよ!……ったく」
本日何度目かも分からなくなったため息をつくと、雪路は義母に背を向けた。
「あら?どこかに出かけるの?」
「部屋ないし、宿直室に帰るのよ」
「そう?夕飯でも食べていけばいいのに」
「それくらいの手持ちはあるのよ。じゃあ、また来るわ」
「あ、まって雪ちゃん」
「もー何よ?」
面倒くさそうに後ろを振り向いた雪路に差し出されたのは、今さっき拝見したお見合い写真。
「忘れ物♪」
「いらないわよ!!」
それを義母に押し返し、雪路は桂家を後にした。
…
もう日も暮れてきた商店街を、雪路はとぼとぼと歩いていた。
「何よ、お見合いお見合いって……。こっちの都合は関係ないっての?」
義母の言葉が、思い出される。
『そうでもしない限り、雪ちゃんもらってくれる人なんていないからよ♪』
「………うっさい」
その言葉が、意外にも堪えていた。
確かに自分は、女性として何かが欠けていると思っている。
彼氏がいないのも良く分かっている。
自分の高校時代の友人たちは、どんどん結婚して家庭を持ち始めていることも、知っている。
「でも仕方ないじゃん」
それでも雪路がそういう恋愛的行動を起こそうとしないのは、恋愛がどういうものか、よく分からないからだ。
それに、恋愛に興味を抱いたことはあった。
だが、雪路の抱えていた事情がそれを発展させるのを拒ませたのだから。
両親の失踪、多額すぎる借金。
雪路は明るかったと人はいうが、その笑顔の裏にはそんな深刻な問題があったのである。
よく友達に遊びに誘われたが、行くことはなかった。
遊ぶ時間も、借金を返済するための時間に充てた。
それでも雪路は良かったのだ。
ヒナギクという大事な妹が、元気で育ってくれれば。
「………なにしんみりしてんだか。過去は過去なのに」
呟いて、雪路は苦笑した。
その妹も今では自分よりも立派になってくれた。
おかげで自分も自由奔放な暮らしが出来ているのだ。
過去があってこその今だが、その過去はもうどうでもいいのだから。
大切なのは、未来と、今日の晩飯を食べるためのお金だ。
義母には見栄を張ってしまったが、そもそもお金がないから実家に帰ってきたのではないか。
ぐぅ~、とお腹が鳴く。
珍しく頭を使ってしまったせいか、空腹も促進されてしまったらしい。
「あ~あ、お金もないし……。アイツんとこにでもいくか」
やれやれ、とため息をつく。
しかしため息をついた雪路の眼は獲物を見つめるものに変わっていた。
この腹を空かせた自分の前では、ガンプラばかり作っているアイツなどアブノ○スの如し。
「そうね、今日はなんかムカついてるし……寿司でも奢ってもらうとしますか」
そう言って、雪路は、ニッと笑った。
やはり自分は、恋愛とかそんなのを考えるよりも、今日の夕飯とかを考えたほうが良い。
理想的な相手とか、そんなのは生きていればそのうち出会えるだろうから。
今を生きるのに一生懸命なのに、先のことなんて考えてられない。
その時は、その時なのだから。
「さてさて、アイツはいるかしらー♪」
そう、その時はその時。
数年後、そのアイツからのプロポーズに頷く自分がいたとしても、雪路はその言葉を言いながら、きっと笑うことだろう。
End
「どうでもいいが、いきなり人ん家やってきて『寿司!』はねえだろ……?」
「細かい事気にすんじゃないわよ。アンタとアタシの仲じゃない」
「親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らんのかお前は」
「知ってるけど、礼儀を払う必要もなさそうだしね」
「………いつか泣かす」
「はん。出来るもんならやってみろってーの。期待せずに待ってるから」
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