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関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。 過度な期待はしないでください。
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どうも関ヶ原です。
テストも無事終わり、春休み突入です。
バイトや遊びに恐らく明け暮れる毎日だと思いますが、その中でも執筆は頑張っていきたいところ。

そんでもって、新作です。
今回もタイトルからして分かりますが、ツンデレな彼女シリーズ第三弾。

第三弾にしてもはやネタ付きそうな危うさが見られます。
これはいけません。

ぶっちゃけ、このシリーズ凄く書きやすいんですよね。
なのでもっとネタ探しておかないと……。

それではどうぞ~☆






 ツンデレ、という言葉を皆さんは知っているだろうか。
 普段はツンツンしているが、二人きりの時などには急にしおらしくなってデレる。
 大雑把に言えば、そういうものをツンデレと呼ぶ。
 もっと分かりやすく言えば、好きな子には素直になれない可愛い生物のことである。
 つまり―――

「な、何よ?」
「いや……」
「べ、別にハヤテ君のためにこんな格好してるわけじゃないんだから!」

 僕の目の前で、何故か猫耳姿のヒナギクさん。
 そんな彼女のことを、世間一般にはツンデレと呼ぶのだ。





『ツンデレな彼女~気高くなくもない猫ヒナギクver.~』





「……今日は猫耳なんですね」

 前回と全く同じ出だしにも気にしないで、僕の口からはそんな言葉が飛び出していた。
 生徒会室の扉を開けた僕のすぐ眼前に立っていた猫さんに、僕はとりあえず聞いてみる。


 今度は一体何を吹き込まれたのか、と。


 三度目になるが、ヒナギクさんは誰から見ても常識人。
 しかしここ最近、彼女も結構常識はずれなところもあるかも知れないと思ってきた。

 だってナースに巫女さんときて、今度は猫だもの。
 人の枠を越えてしまった。

 友人に唆され、コスプレさせられてしまったのは分かる。
 しかし過去二度の失敗(いや成功か?)があったにも拘わらず、なぜ今回もこんな格好をされているのだろうか。
 ヒナギクさんの頭に猫の耳なんて元々ないし、小さめのお尻からもあんなもふもふした尻尾も生えていない。
 というより、何度も言うけれども生徒会室でするような姿ではない。
 ここは某ハルヒさんが属する団の部室ではないし、ヒナギクさんも某未来人のようなキャラではないのだ。身体的にも。

「(もしかして……目覚めてしまった、とか)」

 前回と違って、考えられる答えが増えた。
 この間は朝風さんから僕が巫女さん萌えだと言われての巫女服だったのだが、今回はどうだろう。
 コスプレして僕の反応を見るの、少し楽しくなっていませんか?ヒナギクさん。

「………いや、まだ大丈夫なはずだ……」

 そうなっている可能性も否めないが、その考えは出来るだけ捨てたい。
 目覚めたヒナギクさんも非常に興味があるのだが、今はまだ、凛々しく、美しくカッコイイヒナギクさんを好きでいたい。
 僕だけでなく、たぶん学校側も。

「(それより何で猫耳?)」

 取り敢えず、猫耳ぴこぴこ、尻尾ふりふりなヒナギクさんに僕は視線を移す。

 しかしなんともまぁ、良く似合っている。
 猫耳、尻尾、こちらの反応を窺う少し恥ずかしそうな表情。
 正直いって今回も理性の崩壊が危うい。
 これで語尾に『にゃ』なんてつけられたら、僕はバレたら退学レベルのことをしてしまうかもしれない。

「(何思ってるんだ僕は……)」

 年相応な青臭い妄想だといわせてもらいたい。

 そんなことを僕が考えていると、ヒナギクさんがやはり今回も慌てた様子で弁解をしてきた。

「こ、これはお義母さんが勝手に買ってきて……! これ着たらハヤテ君喜ぶかなって思っただけで……!」
「………」
「べ、別に折角買ってくれたのに着ないのは申し訳ないって思ったからじゃないんだから!」
「落ち着いてヒナギクさん! たぶん本音と建前が逆になってる!」

 もう彼女は駄目かもしれない。
 三回の中で、一番酷い言い訳だった。
 というかお義母様も何買ってきてるんですか……。
 それを着るヒナギクさんもヒナギクさんだとは思うけれど。

「でも大体事情は分かりました」

 今回はヒナギクさんのお義母様らしい(ということにして欲しい)。
 一体どんな理由があるのかと思っていたのだけれど、今回ほど説得力に欠ける言い訳もなかった。

 さて。

 三回目となる今回なのだが、いよいよヒナギクさんにレイヤー化の兆候が見られ始めてしまったわけなのだが、この事態はどうすべきなのだろうか。

 言って諭したほうが良いのか、静観しているのが良いのか。

「まぁ似合ってるからこのままでも良いとは思う、けれどね……」

 そう呟いて、眼前の猫さんに視線を移す。
 猫耳……いや、別に嫌いというわけじゃないのだけれども。

 冒頭で言った通り、それでも心のどこかでは、カッコ良くて凛々しく美しいヒナギクさんを好きでいたいと思っている。

「うーむ……」

 猫耳をピコピコ動かして、頬を赤らめもじもじするヒナギクさんを見て僕は唸った。
 ヒナギクさんは流されやすい人、それはこの間の一件で確信した。しかし今回、ヒナギクさんに着るように強要した人はいない。
 買ってきたお義母様が理由に一枚噛んでいるが、着る着ないの選択はヒナギクさんに全てあったはず。
 鏡の前で猫耳をつけ、顔を赤らめるヒナギクさんが頭に浮かんできてしまった。

 激しく萌えた。

「いや、本っ当に可愛いですね、ヒナギクさん」
「にゃ!?」

 いや、やはりどんなに言い訳が言い訳として成り立っていなかろうが、可愛いものは可愛いのだ。

 可愛いは正義。

 例えヒナギクさんが過去の勇姿からその姿を遠ざけようとも、そのおかげで彼女のこんなに可愛い姿を目に出来るのだから。
 顔を茹蛸のように真っ赤にしたヒナギクさんに、僕は言葉を続ける。

「だって、僕が喜ぶかもしれないからと思って、猫耳姿でこうしていてくれるわけでしょう?」
「だ、だから違うって言ってるじゃない! お義母さんが勝手に買ってきただけで……」
「買ってきたとしても、着なければいい話ですよね」
 僕の言葉に、ヒナギクさんは言葉に詰まった。

「ふ、服だってお金なのよ! お金を粗末にできないの!」
「それにヒナギクさん、お義母様が買ってきた服で着ていないの山ほどあったじゃないですか」
「―――! そ、それは……」

 前にヒナギクさん宅にお邪魔したとき、山ほどのフリフリのスカートを目撃したのを覚えている。
 あれ?というかその中に猫耳もあったと思うのだけど、ヒナギクさんが今回身につけているものはそれとは違うようだった。

「(まぁ)」

 そんなことは心底どうでもいい。
 理由はなんであれ、ヒナギクさんが猫耳を着用したことに意義がある。
 ヒナギクさんが言葉に詰まっている間に、僕はヒナギクさんを抱きしめた。

「にゃうっ!?」
「なんというか、本当にヒナギクさんが愛しくて発狂しそうなんですけど」
「い、いきなりは反則よ! というか発狂って何!?」
「気にしないでください」

 猫の姿で、僕の腕の中でわたわたと慌てるヒナギクさん。なんという眼福。
 その姿に外れかけの理性に勝つために、ヒナギクさんを抱きしめる腕に力を込めた。

「ヒナギクさん」
「う……な、何よ」
「理由がどうであれ……猫耳を着けてくれてありがとうございます。凄く嬉しいです」

 ヒナギクさんは大人しくなって、抵抗しなかった。
 それこそ借りてきた猫のように、しかし顔はそっぽに向けて小さく呟く。
 「喜んでくれた」と。

「………別に、ハヤテ君のために着けたわけじゃないんだから」
「それでも、ですよ」

 頬を染め、そう言ったヒナギクさんに、僕は思わず苦笑してしまった。
 彼女の嘘を証明する言葉を、僕はたった今彼女の口から聞いたというのに。
 本当、素直じゃない人である。

「本当に……可愛い人ですね」

 僕の言葉には答えず、ヒナギクさんはつーんとそっぽを向いたまま。
 目を合わせてくれない。

 その姿はまさに猫のようで、本当に可愛いなぁと思いつつ、僕は彼女に言った。

「大好きすぎて困りますので、責任とってくださいね」
「………バカ。それって私の台詞よ、バカハヤテ君」

 可愛い憎まれ言を言いながらも、僕の口付けにしっかりと答えてくれるヒナギクさんは、本当に愛らしい、僕のツンデレな彼女。


「………本当に可愛かった……かにゃ?」
「………………」



 理性崩壊しました。



End

拍手[32回]

PR
どうも皆様関ヶ原です。
明日からテストなので更新、ちょっと出来そうにないです。
申し訳ない!
せめてと言いますか、昔書いた小説を完全リメイクしたものを載せようと思います。
読んだ人もいるかもしれませんが……。

テストが終わり次第、どんどん小説書いていきたい……。

それではこの辺で!
ではどうぞ~☆




『White date』




 3月14日、ホワイトデーとなる本日の遊園地は、大勢のカップルたちで賑わっていた。

「凄い人ね……」
「やっぱり皆、考えることは同じでしたね……」

 数多のカップル、その一組であるハヤテとヒナギクも、その人で溢れる入り口に立っていた。
 手にはフリーパス券。

「うぅぅ……すいません、考えが安直すぎました」
「大丈夫よ。 さ、中に入りましょ?」

 ホワイトデーのお返しに何かしたいと考えたハヤテが目にしたのは、新聞の広告に挟まっていたこの遊園地の一日フリーパス券だった。
 なんでも最近リニューアルしたらしく、そのお祝いとしてフリーパス券が宣伝チラシとともに同封されていたのだ。

 最も根底にあるのは顧客確保のためだろうが、ハヤテにとって損はないので存分にフリーパスを使わせていただこうと思ったのだが。


「……やっぱり中も人だらけですね」


 その結果がこれだった。
 肩を落とすハヤテに、ヒナギクが苦笑を浮かべながら慰めの言葉をかける。

「で、でも遊園地ならこのくらい人がいないと面白くないわよきっと!」
「そうですか…? 無理してませんか?」

 沈んだ目をヒナギクに向けるハヤテだったが、ヒナギクは「そんなことない!」と首を横に振り、言った。

「全然! だってハヤテ君とのデートなんだもん!」

 本心からの言葉だった。
 ここまで人がいるとは流石に考えていなかったが、ヒナギクにしてみればそんなことは些細なことでしかなかった。

 電話を貰い、デートをしようと言われた時の衝撃に比べれば。
 嬉しさの余り、ハヤテとの電話の後ベッドで思い切り跳ね回った位なのだ。

「だから、一緒に楽しんで……? ……駄目?」
「―――っぶぐ……!?」

 だからお願い、と上目でハヤテを見上げると、ハヤテが突然鼻を押さえてそっぽを向いた。

「? ハヤテ君?」
「い、いやなんでもないです……」
「え? で、でも」
「何でもないです! デートを楽しむための対価だと考えればこんなもの……!」
「?」


 なんだか良く分からないが、とりあえずデートは続いてくれるようなのでヒナギクはホッとした。


「それじゃあ、思い切り遊びましょうか」
「うん!」


 ハヤテと手をとって、ヒナギクは子供のように園内を走りだした。 




 …




 人で溢れる園内で、果たして満足に遊べるのだろうかと思ったが、意外にも多くのアトラクションを楽しめた。
 パンフレットを覗けば、どうやらこの遊園地のアトラクションの数の多さは日本でも指折りらしく、それが幸いして一つのアトラクションに集客することがあまりなかったようだ。


「いや~遊びましたねぇ」
「やっぱり遊園地は楽しいわ」
「そうですね。僕も予想以上に楽しめました」
「特にあれ……なんだっけ? あのお馬さんが回るやつ!」
「……ひょっとしてメリーゴーランドですか?」
「そうそれ! あれ凄く面白かった!」


 何より高度が低いアトラクション(子供用等)も数が多くて、高所恐怖症のヒナギクにとってこれほどありがたいこともなかった。
 今まで乗ってきたアトラクションについて、瞳を輝かせながら楽しそうに話すヒナギク。
 小さな子供のようにはしゃぐ彼女の姿を見て、ハヤテは連れて来て良かったと思う。

「さて……あと一つくらいは乗れますね」
「え? もうそんな時間?」

 辺りを見ればすっかり日は落ちていて、帰る客の姿もちらほら見られ始めた。
 自分たちのそろそろ帰らなければならないだろう。

「うぅ……もう少し遊びたいなぁ」
「また来ましょう、ヒナギクさん」

 物足りなさそうな表情を浮かべるヒナギクに、苦笑しながらハヤテが答える。
 確かにハヤテももっと遊びたかったが、あまり遅くなるとヒナギクの両親も心配するだろう。

「何回でも来れるんですから」
「……本当? 約束なんだから」
「ええ。勿論です」

 その言葉に笑顔で頷くと、ヒナギクは「わかった」と言って立ちあがった。

「じゃあ……最後はあれに乗りたいな」

 そして彼女は指差す。
 定番といえば定番の、観覧車を。

「え? でもヒナギクさん、大丈夫なんですか?」
「大丈夫、ずっとハヤテ君に抱きついてるから。だから行きましょ?」

 高所恐怖症の彼女を気遣うハヤテだったが、どうやら自分の理性に気を使う必要がありそうだった。




 …




「うわぁ……」

 観覧車から見下ろす街並みは、絶景だった。
 家々、街々から溢れる光が一つの景色を作っている。
 ハヤテの腕に包まれながら、ヒナギクはその光景に感嘆の言葉を漏らした。

「本当に綺麗ですね……」
「うん……」

 ヒナギクはしばらくその光景に目を奪われていたが、観覧車が最高度に達しそうな頃、ふと呟いた。

「ハヤテ君と見る景色って、本当に綺麗なの」
「え?」
「ハヤテ君が隣で私に見せてくれる景色は本当に綺麗で、全然色褪せないの」

 顔をハヤテの方へと向けて、ヒナギクは笑顔で言う。


「だから、ありがとう」
「ヒナギクさ―――」


 ハヤテの言葉は言い終わる前に、ヒナギクの唇によって遮られる。


「……いきなりは反則だと思います」
「えへへ…だってしたかったんだもの」

 唇を離し向けられた、ヒナギクの幸せそうな表情。
 それが何だか照れくさくて、車窓から見える絶景へとハヤテは視線を移す。


「ふふっ…。ハヤテ君、照れてる」
「……うるさいです」


 外では街が彩るイルミネーションが相変わらず輝いている。
 その光一つ一つを背景に。


「ヒナギクさん」
「ん」


 今度はハヤテの方から、ヒナギクの唇へと口付けしたのだった。

 恋人たちの3月14日は、鮮やかな光たちに包まれて、まるで観覧車が回るかのように、静かにゆっくりと過ぎていく。




End

拍手[15回]

どうも、関ヶ原です。
まさかの二日連続更新。私もびっくりです。
今回は前回書いた『ツンデレな彼女』の二作目です。
フォレストページの方でシリーズ化の要望があったので、試しに描いてみたんです。
前作の文章を大幅に変えて書いているので、似ているところも少しはあるのかな?
前作と比べてみるのも面白いかもしれません。

最近設置した拍手のほうにも感想を送ってくださると嬉しいです。

それでは長話になるのもなんなので……それではどうぞ~☆





 ツンデレ、という言葉を皆さんは知っているだろうか。
 普段はツンツンしているが、二人きりの時などには急にしおらしくなってデレる。
 大雑把に言えば、そういうものをツンデレと呼ぶ。
 もっと分かりやすく言えば、好きな子には素直になれない可愛い生物のことである。
 つまり―――

「な、何よ?」
「いや……」
「べ、別にハヤテ君のためにこんな格好してるわけじゃないんだから!」

 僕の目の前で、何故か巫女服を着ているヒナギクさん。
 そんな彼女のことを、世間一般にはツンデレと呼ぶのだ。





『ツンデレな彼女~帰ってきたヒナギクver.~』





「……今度はどうして巫女なんでしょうか?」

 前回と全く同じ出だしにも気にしないで、僕の口からはそんな言葉が飛び出していた。
 生徒会室の扉を開けた僕のすぐ眼前に立っていた巫女さんに、僕はとりあえず聞いてみることにした。


 今度は一体何を吹き込まれたのか、と。


 二度目になるが、ヒナギクさんは誰から見ても常識人。
 ヒナギクさんは神社の娘さんでもないし、そもそもここは学校内。
 巫女服を普段から着るような趣味も持っていないのだ。
 ヒナギクさんが自ら好んで巫女服を着るわけがない。

「(今回は誰なんだろうな……)」

 前回同様、自然と、受動的に答えは絞られてくる。
 この間は花菱さんから言われたのだった。僕がナース服が好きなのだと。
 あながち間違いではなかったのだが、思いっきりそれを信じたヒナギクさんがナース服を着ていたのだった。

 おかげでナース服に包まれたヒナギクさんの肢体が頭から離れな……ゲフンゲフン。

 閑話休題。

 さて、今回は誰に騙されたのだろう、と僕が考えていると、ヒナギクさんが今回も慌てた様子で弁解してきた。

「こ、これは理沙が勝手に……! 理沙の神社今人手が足りないらしくて私が手伝うことなって今日はその時に借りる巫女服のサイズ調整のためで……っ!」
「はぁ……」
「べ、別にハヤテ君が巫女服萌えだって聞いたから理沙に借りたわけじゃないんだからね!?」


 思わず拍手したくなるような、必死の言い訳が飛んできた。
 それなりに説得力を有している当たり、流石はヒナギクさんだと思う。嘘だって言うのはバレバレなのだけれど。

「でも大体事情は分かりました」

 今回は朝風さんonlyらしい。
 複数犯の犯行と読んでいたのだが、どうやら外れてしまったようだ。
 一応犯人は複数犯と考えていた一人だったのだが。

 それよりも二回目となる今回なのだが、いったい彼女たちは僕が巫女さん萌えだとか、そんな情報をどこから聞いてくるのだろう?
 部屋に盗聴器でもしかけられているのではないだろうか?と本気で心配になってくる。

「誰にも言っていないはずなんだけどな……」

 そう呟いて、眼前の巫女さんに視線を移す。
 巫女服……いや、別に嫌いというわけじゃないのだけれども。
 むしろはえぬきど真ん中ストライクだったりするけれども。

「しかし……」

 巫女服を身に纏い、頬を赤らめもじもじするヒナギクさんを見て僕は苦笑した。

 ヒナギクさんは案外その場に流されやすい人だ、ということをヒナギクさん自身がこの間に自覚したと思っていたのだが、今回も見事に口車に乗せられるとは。
 恐らく最初は拒否していたのだろうが、朝風さんに説得力のある言葉を言われて頷いてしまったのだろう。

『マリアさんから聞いた確かな情報』みたいなことを言えば、ヒナギクさんも警戒レベルを下げざるを得ないだろうから。
 朝風さんのことだ。あらかじめ衣装を用意しておいてヒナギクさんに話を持ちかけたに違いない。
 段々と朝風さんに言い包められていく彼女の姿が、目に浮かぶ。

 以外に単純だからなぁヒナギクさん……。
 だがしかし。そんなところが彼女の持ち味だと僕は思う。

「いや、本っ当に可愛いですね、ヒナギクさん」
「にゃ!?」

 だって、そのおかげで彼女のこんなに可愛い姿を目に出来るのだから。
 顔を茹蛸のように真っ赤にしたヒナギクさんに、僕は言葉を続ける。

「だって、僕が巫女さん萌えだからという理由で、その服を着てくれているわけでしょう?」
「だ、だから違うって言ってるじゃない! 理沙の神社の手伝いをするために着てるわけで別にハヤテ君のためだなんて……」
「仮にサイズを測るためだとしても、肝心の朝風さんがいないじゃないですか」

 うっ、と言葉に詰まるヒナギクさん。

「も、もう測り終わったから帰ったのよ!」
「でも普通着替えますよね? 終わったのにまだその服を着ているのはどうしてですか?」
「そ、それは……」

 ちょっといじわるかな、と思わなくもないが、そんなことは心底どうでもいい。
 理由はなんであれ、ヒナギクさんが巫女服を着てくれたことに意義がある。
 ヒナギクさんが言葉に詰まっている間に、僕はヒナギクさんを抱きしめた。

「ひゃうっ!?」
「なんというか、本当にヒナギクさんが愛しくて発狂しそうなんですけど」
「い、いきなりは反則よ! というか発狂って何!?」
「気にしないでください」

 巫女さんの姿で、僕の腕の中でわたわたと慌てるヒナギクさん。なんという眼福。
 その姿に外れかけの理性に勝つために、ヒナギクさんを抱きしめる腕に力を込めた。

「ヒナギクさん」
「う……な、何よ」
「理由がどうであれ……その服を着てくれてありがとうございます」

 ヒナギクさんは大人しくなって、抵抗しなかった。
 借りてきた猫のように、しかし顔はそっぽに向けて小さく呟く。
 「やっぱり巫女さんが好きなんじゃない」と。
 ヒナギクさんの呟きを僕は聞き逃さなかった。

「………別に、ハヤテ君のために着たわけじゃないんだから」
「それでも、ですよ」

 頬を染め、そう言ったヒナギクさんに、僕は思わず苦笑してしまった。
 彼女の嘘を証明する言葉を、僕はたった今彼女の口から聞いたというのに。
 本当、素直じゃない人である。

「本当に……可愛い人ですね」

 素直になってもいいんじゃないですか?と目で訴えるが、ヒナギクさんはつーんとそっぽを向いたまま。
 目を合わせてくれない。
 これが普段だったのなら落ち込むだろう僕だが、だがしかし。
 今彼女がそんな態度をとったところで、彼女の可愛さに拍車をかけているだけに過ぎない。

 本当に可愛いなぁと思いつつ、そっぽを向くヒナギクさんの顔を無理やりこちらに向かせ、僕は彼女に言った。


「大好きすぎて困りますので、責任とってくださいね」
「………バカ。それって私の台詞よ、バカハヤテ君」


 可愛い憎まれ言を言いながらも、僕の口付けにしっかりと答えてくれるヒナギクさんは、本当に愛らしい、僕のツンデレな彼女。




End

拍手[22回]

どうも、皆様こんばんわ。
関ヶ原です。
なんとか五作目完成。
目標達成です。

しかし今回の小説……ネタに困ったのか、過去最大級でワケのわからない話になった感が否定できません。
書いていて本当思いました。これ大丈夫なのか?と。
しかし時間的にも書き直すのは厳しかったし、かといって良いネタがそうそうホイホイ出てくるわけでもないので(そこまで優秀な頭脳は持ってないので)このまま一気に書き上げました。

どうぞご了承を……。

それでは十一月最後の作品、どうぞ~☆





 秋も段々去りはじめ、冬が少し頭を出しはじめた十一月最後の日。
 すっかりと舞い散った枯れ葉の上を、私とハヤテ君は歩いている。
 足を一歩前に出す度に、数多の枯れ葉たちがくしゃり、くしゃりと音を立てた。
 その音を聞きながら、私はふと思う。

 枯れ葉とは何だか、人のようだなぁと。





『枯れ葉』





「ねぇハヤテ君」
「はい?」

 私の声に、ハヤテ君が立ち止まりこちらを見る。

「どうかしましたか?ヒナギクさん」
「枯れ葉ってさ、人に似てると思わない?」
「は?」

 ハヤテ君は私の言った言葉がよく分からないようで、はて、と首を傾げた。

「すいません、言っている事がよく分からないんですが……」
「いいの、分からないのが普通だから」

 申し訳なさそうな表情を浮かべるハヤテ君に、苦笑しながら私は言う。

「ただね、枯れ葉ってさ、ようは寿命を迎えたから地面に落ちるわけじゃない?」
「ええ、そうですけど」
「寿命を迎えたから落ちるって、なんか人間みたいじゃない」

 私の言葉に、今度はハヤテ君が苦笑する番だった。

「はは……そういうことなんですか」
「言ったじゃない、分からないのが普通って」

 寿命を迎えたら、どんな生物も生を失う。
 寿命を迎えたから葉も生を失った。

 これが人間のようだなんて、よく言えたものだと自分でも思う。
 ハヤテ君が苦笑するのも無理はない。
 私自身、自分に苦笑してしまったのだから。

 本当に何を言っているのだろう、私は。
 ハヤテ君に視線をやる。
 彼は私の言葉を聞いて、どう思っているのだろう。
 私がこんなことを思っているなんて聞いて、変に思っていないのだろうか。
 そう考えると、少し不安になる。

「でも……成るほど確かに、言われてみればそうかもしれませんね」
「え?」

 しかし、ハヤテ君の口から出たのは意外な言葉だった。

「寿命を迎えたから落ちる。うん、本当に人間みたいに思えてきますね」
「いや、分けわかんないわよ?」

 うんうん、と頷いているハヤテ君に、私は若干戸惑ってしまった。

「だって葉っぱと人よ?生物は生物でも、まるで違うし……。私たち、酸素作れないし……」
「でも、葉が散った後の枝には新たな芽が出来ますよね」
「え?」
「葉っぱ自体は確かに枯れて死んでしまうかもしれません。でも、その後にしっかりと新しい芽を残しているわけですから、これはある意味人間と一緒ですよね」
「………あ」

 気が付かなかった、そんなこと。
 自分が言った言葉なのに、自分でもワケが分からないような言葉だったのに。
 ハヤテ君の一言によって、私の言葉は随分と納得のできるような言葉に変わった。

「人間も寿命で死にます。けれど人は、子孫を残して血を繋いでいくわけです。枯れ葉が枝に芽を残していくのも同じことだと思いませんか?」
「お……思う。不思議だけれど、そう思うわ……」
「だから……ヒナギクさんの言葉は凄く詩的で、神秘的だと思いますよ」
「あ、ありがとう……。そんな風に言ってもらえるなんて思ってなかったから、その……嬉しいわ」
「こちらこそ、素敵な言葉をありがとうございます」

 ハヤテ君に笑顔で礼を言われ、不覚にも顔に血が上ってしまった。
 そんな笑顔、反則よ……。

「あ……。もうこんな時間なのね」

 恥ずかしくなってハヤテ君から視線を逸らした私はそこで、辺りがだんだん暗くなり始めていることに気づいた。
 思った以上に話し込んでいたらしい。
 ハヤテ君もそのことに気づいたようで、冷えると悪いから、と私に手を差し出した。

「本当だ。だんだん冷えてきますよ、これから」
「そうね。急に気温が下がると思う」
「じゃあ……そろそろ帰りましょうか」
「えぇ」

 細いけれど、長くて綺麗な手。
 執事をやっているとは思えないように、綺麗で繊細な手を私は手に取った。

「ふふ。ハヤテ君の手、あったかい」
「ヒナギクさんの手も、凄く暖かいですよ」

 互いに見つめあい、にっこりと笑い合いながら私たちは歩き出した。


「ねぇハヤテ君」


 枯れ葉たちが立てる音を聞きながら、私は口を開く。
 今度は足を止めずに、ハヤテ君が問い返す。

「はい、何ですか?」

 優しい声色で返されたハヤテ君の言葉に、私は、呟くようにその言葉を言った。

「私たちも……この枯れ葉みたいになれるのかしら」
「………さて、どうでしょうか?それは僕たちしか分からないんじゃないですか?」

 ちょっと楽しそうにハヤテ君は応えて、「ただ」と言葉を繋げる。

「僕としてはその未来は大歓迎なんですけれど」
「枯れ葉のような未来?」
「ええ。枯れ葉のような未来です。勿論、一人で枯れて散っていくのはゴメンですけどね」


 その言葉に少しだけ噴き出してしまった。なるほど、確かにそれはゴメンだ。

「そうね、私もそう思うわ」
「だから……枯れ落ちるまで、一緒にいましょう」


 一人で散るのは嫌だから、ハヤテ君の言葉に私は笑顔で頷いた。
 この先ずっと、二人枯れて落ちるまで一緒にいよう、と。



 繋ぐ手に力を少しだけ込めて、私たちはまた一歩、また一歩と枯れ葉道を歩き出す。




 十一月最後の日。

 枯れ落ちた葉っぱたちが作る道がヴァージンロードに見えてしまった、そんなどうしようもない私だった。
 本当に今日は、苦笑が止まることはなさそうである。




End

拍手[0回]

どうも、関ヶ原です。
何とか四作目完成しました。
今回、こんな話になったのはツンデレが書きたい、と私が衝動的に思ったからでして……。
あれ?ツンデレってこれでいいの?
とか結構書き終わった後に思っていたり(汗
ヒナギクってぶっちゃけツンデレなのか?
俺にはもう可愛い生き物にしか見えな(ry
とまぁ、今回もgdgdな話になっていると思いますが、どうか読んでくださいまし^^

あと一作。何を書こうか絶賛お悩み中です。
それではどうぞ~☆





 ツンデレ、という言葉をは皆さんは知っているだろうか。
 普段はツンツンしているが、二人きりの時などには急にしおらしくなってデレる。
 大雑把に言えば、そういうものをツンデレと呼ぶ。
 もっと分かりやすく言えば、好きな子には素直になれない可愛い生物のことである。
 つまり―――

「な、何よ?」
「いや……」
「べ、別にハヤテ君のためにこんな格好してるわけじゃないんだから!」

 僕の目の前で、何故かナース服を着ているヒナギクさん。
 そんな彼女のことを、世間一般にはツンデレと呼ぶのだ。





『ツンデレな彼女』





「どうしてナースなんでしょうか?」

 生徒会室の扉を開けた僕の目の前に突然現れたナースさんに、僕はとりあえず尋ねる。
 ヒナギクさんは常識人。
 思いつきでナース服を生徒会室で着用する趣味は持っていないはずなのだから。
 そもそも、ヒナギクさんがナース服を持っているわけなどないのである。

「(これは誰かにからかわれたなぁ……)」

 ということは、自然と答えは絞られてくる。
 というか、ヒナギクさんをこうも上手く騙せる人間など、思い当たる人物は検討が付くのだが。

 さて、今回は誰に騙されたのだろう、と僕が考えていると、ヒナギクさんが慌てた様子で弁解してきた。

「こ、これは美希たちが勝手に……!動画撮影のためにどうしても必要だって言われたからで……決してハヤテ君がナース服が大好きだって聞かされたから着てるわけじゃないのよ!?」
「はぁ……」

 成る程、やはり花菱さんたちだったか。
 予想が見事的中した所で、僕がナース服を好きだとか、どこからその話を聞いたのか花菱さんたちに小一時間問い詰めたい。

 いや、別に嫌いというわけじゃないのだけれども。

「しかし……」

 恥ずかしそうに言葉を発すヒナギクさんに、僕は苦笑した。
 ヒナギクさんは案外その場に流されやすい人だと思っていたが、ここまでとは。
 恐らく最初は拒否していたのだろうが、花菱さんたちにゴリ押しされたのだろう。
 少しくらいなら……と思い始めたら、その時点でヒナギクさんの敗北は決定したようなものだ。

 段々と花菱さんたちに言い包められていく彼女の姿が、目に浮かぶ。
 でもまぁ、しかし。

「可愛いですね、ヒナギクさん」
「なっ!?」

 しかしだ。

 僕の言葉に顔を真っ赤にしたヒナギクさんに、僕は言葉を続ける。

「だって、僕がナース服が好きだからという理由で、その服を着てくれているわけでしょう?」
「だ、だから違うって言ってるじゃない!美希たちに騙されて……」
「僕がナース服が好きだ、と聞かされたから着たんでしょ?」

 うっ、と言葉に詰まるヒナギクさん。
 一応僕はナース服が好きなので、花菱さんたちの言葉は間違っていないのだけれども、そんなことはこの際どうでもいい。

 問題は、僕のためにヒナギクさんがナース服を着てくれたことにある。

「なんというか、本当にヒナギクさんが可愛くて仕方がないんですけど」
「ううううう~~~~」

 しかも、素直に肯定しないところがまた、なんとも言いがたい彼女の可愛さだ。
 相変わらずお顔が真っ赤なヒナギクさんを、僕は思わずぎゅうっと抱きしめる。

「ありがとうございます」

 ヒナギクさんは、抵抗しなかった。
 抵抗せず僕の腕に大人しく収まって、しかし顔はそっぽに向けて小さく呟く。

「………別に、ハヤテ君のために着たわけじゃないんだから」

 わかっているくせに、と僕はそんなヒナギクさんに苦笑した。
 ここまできて、まだ言うか。
 本当、素直じゃない人である。

「本当に……可愛い人ですね」

 そろそろ素直になってもいいんじゃないですか?と目で訴えるが、ヒナギクさんは目を合わせてくれない。
 でも。


「心の底から、そんなヒナギクさんが大好きです」
「………ハヤテ君のバカ」


 僕が寄せた唇にしっかりと自分の唇を重ねてきたヒナギクさんは、本当にツンデレな、僕の愛する彼女。




End

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