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関ヶ原の書いた二次小説を淡々と載せていくブログです。 過度な期待はしないでください。
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大変お待たせしました、新作です。
当然CPはハヤヒナですよみなさーん!
今回は春が近い、ということで、新学年になるヒナギクの心境を書いてみました。
まぁ、原作のヒナはそんな事思わないんですけどね(汗)
ほのぼのとした雰囲気は出せてるかな?と思っていたり…。
良かったら感想お願いしますね、次回への参考になりますから。
それでは、どうぞ~♪




 三月も終わりだというのに、東北地方では雪が降った地域があるらしい。
 そんな新聞の記事に目を通しながら、ずずず、と私にしては珍しく、朝のコーヒーを啜る。



 朝の白皇学院の時計塔――生徒会室の大きな窓からは、そんな新聞記事とは全く正反対に、春の訪れを感じさせる暖かな日差しが射している。

 もうすぐ、春がやってくる。




『生徒会長の憂鬱』





「春……か」

 暖かな季節が来ることに喜びを覚える反面、少しメランコリな気分になって、私――桂ヒナギクは小さくため息をついた。

「もう受験なのよねぇ…」

 憂鬱な気分の原因は、それ。『受験』だ。
 春――即ち新年度が始れば、私たちは三年生になる。
 ここ白皇学院は進学校故、九割強の生徒が進学へ向けて今以上に勉強に励むことになる。
 現に、違う学校の歩も、勉学に集中して予備校に通うらしい。

 ともなれば、今までのように楽しく友人と遊ぶ機会も減ってしまうだろう。



「……なんか、寂しいな」


 それが、寂しい。
 いつも仕事をサボっていた馬鹿三人も、ハル子や愛歌さんも、ナギも、そして……ハヤテ君も。
 己の道を進むために、皆それぞれ頑張っていく(ナギは違うかもしれないが)。
 あの三人が頑張る姿を見れるのならば、それは嬉しいことだ。


「…あ~もう!」


 そんな、嬉しさと寂しさの狭間に立たされ、私はがしがしと髪をかき回した。
 そして、この見慣れた生徒会室を見回す。


「ここも…寂しくなるのかしら」


 もう少しで今の生徒会は任期を終える。
 新しい生徒会に向けての仕事も、これからやってくるはずだ。
 となれば、私がこの席でコーヒーを啜る日々も、もう少ししかない。


 別の寂しさが広がる。


「はぁ……」


 二度目の、ため息。
 そう、新年度になれば、変わっていく。
 生活も、勉強も、生徒会も、何もかも。
 それが当たり前なのだ、とは頭ではわかっていても、


「…本当、私って子供だわ…」


 それが嫌だった。
 わかっている、これは単なる私の我侭でしかないことくらい。

 それでも、嫌だった。





「――まぁ確かに、ヒナギクさんは子供っぽいですけど」

「!?」



 そんなことを考えて自己嫌悪に陥っていたものだから、突然掛けられた声に、私はひどく驚いた。
 首を痛めそうな勢いで声の方を向くと、たった今考えていた、大好きな彼の姿があった。


「ハヤテ君!?どうしたのこんな朝早くに!?」

「いえ…なんとなくですけど、時計塔に登りたくなりまして」


 登ってみたらヒナギクさんが思いつめた顔をしていましたので、と私の問いにハヤテ君は笑顔で答える。


「(み、見られた……!!)」


 羞恥で顔に熱が上る。悪戯がばれた子供のような心境だった。

 見られたくない部分を、よりにもよって、好きな人に見られるとは――!!


 穴があったら入りたい、そんな私の様子を見てハヤテ君はくすりと笑った。



「でも…、皆同じだと思います」
「――え…?」
「皆、今ある日常が大好きなんだと思います」


 ハヤテ君の言葉に、私は目を見張る。


「皆…?」
「はい、皆。僕も、お嬢様も、瀬川さんたちも」
「ハヤテ君も…?」


 私の言葉に、ハヤテ君は笑顔で頷いた。
 当たり前じゃないですか、と。


「僕だって今の日常が大好きです。だって、数年前の僕には考えられないくらいに幸せなものですから。失いたくない、と思うのは当然じゃないですか」
「で、でも…三年生になったら、それも変わるわ…!」
「そうですね、そうなります。ですけどそれを拒むことは、できないですよね」
「それは……そう、だけど…」


 あぁ、今の私は本当に子供だ。
 容姿端麗、文武両道、頼れる生徒会長なんかじゃない。
 我侭を親に諭される、小さな小さな子供。


「でも…やっぱり…寂しい」


 こんな私を、ハヤテ君は優しく抱きしめてくれた。
 身体が、優しい温もりに包まれる。


「じゃあ、僕が傍にいますよ」
「……え?」


 掛けられた声は、それよりもさらに優しかった。
 何を、と聞き返す言葉は、ハヤテ君の唇によって妨げられた。


「ヒナギクさんが寂しがらないように、僕が一生、傍にいます」
「ハヤテ君……」
「だから寂しがらないでください」


 もう一度、ハヤテ君が顔を寄せてくる。



「………うん。約束なんだから」



 その言葉を胸に響かせながら、私は静かに目を閉じた。








 …







 三月も終わりだというのに、東北地方では雪が降った地域があるらしい。
 朝の白皇学院の時計塔――生徒会室の大きな窓からは、そんな新聞記事とは全く正反対に、春の訪れを感じさせる暖かな日差しが射している。
 もうすぐ、春がやってくる。
 春――即ち新年度が始れば、私たちは三年生になる。

 新年度が始れば、全てが変わっていく。



 それが、嫌『だった』。



 ――でも。





「あ、メール…。美希たちから」
「なんて?」
「残り少ない二年生を楽しまないか…って…」
「それはいいですね♪」
「………」



 今では、こう思う。



「…あはは!何これ」
「? どうかしましたか?」
「『三年なっても、遊びまくろう』だって!」



 変わるものもあるけれど、変わらないものがある。




「はは、花菱さんたちらしいじゃないですか」
「うん!本当に…馬鹿なんだから」
「ええ。ですからしっかり、返信しましょうね」
「もちろん」





 それはきっと―――。





「『その前に仕事をしなさい!』……っと」
「あれ?そんなんでいいんですか?」
「いいの。……だって寂しくないから」





 三月も下旬の、生徒会室で。
 大好きな人の隣で、私は笑顔で送信ボタンを押した。




 ――もうすぐ春が、やってくる。






End






ハヤテ「ていうか久しぶりの更新なのに、文章でワケ分からない表現がありますね」
ヒナギク「仕方ないのよ。『久しぶり』なんですもの」
ハヤテ「なるほど……逃げたんですね」
ヒナギク「それは言わないお約束よ。………それより、さ、ハヤテ君」
ハヤテ「はい?」
ヒナギク「『一生傍にいる』…って、その…つまり…」
ハヤテ「―――っ!!あ、あれはですね、その……!!」
ヒナギク「………ふ、ふつつかものですけど……その、よろしくお願いします……あ、『あなた』」
ハヤテ「…………!!!(ぶしゃあぁぁぁぁぁ)」
ヒナギク「あっあなた!?鼻血が……!!」

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新生活の準備でなかなか更新できない、関ヶ原です。
今回の更新は、旧サイトから持ってきたもの、関ヶ原が書いた珍しいシリアスものです。
基本的に俺はシリアスとか、死ネタは好きじゃないのですが、違った方面からも小説を書いていこうと思って書いたのがこれです。
いつもの小説と比べ、かなり違和感があるかと思います。
小説、というよりかは短文なのですが、どうぞ~。





『ペルソナ』





 私は嘘つきだ。
 仮面を被り、違う自分を演じている醜い道化師。

 そんな自分が嫌いだ。
 でも止められない。

 そんなだから。

 今日も変わらず、仮面を付けてあの人の前に現れる。



 …



「あ、おはようございますヒナギクさん」
「おはようハヤテ君」

 朝、教室にて。
 二学年になり、大好きな彼と同じクラスになれたのに、気持ちを隠して今のような普通なやり取りをしている私。
 本当は出会い頭に抱き着いてやりたいくらいなのに、もう一人の私がそれを拒む。

 想いをぶつけたいのに、好きだといいたいのに。


 ――オマエハマタヤクソクヲヤブルノカ。


 そういわれてしまうと、尻込みをしてしまう。
 全ては意地っ張りな私の所為。
 自分の気持ちをぶつける勇気がなかった私が招いたこと。



 ――それは最近なのに、遠い日のように感じる、月が綺麗な夜だった。

 観覧車のてっぺんで、彼の事を私よりも、ずっと前から好きだった女の子と交わした約束。


 彼女が『落とす』か、私が『告白される』か。


 何故私も、攻めの姿勢でいかなかったのだろうと、今は物凄く後悔している。
 彼女が行動を起こす度に、私の心は悲鳴をあげるから。

 彼を盗らないで。私の前から大好きな人を連れていかないでと、切なさと、それを言えない悔しさで胸が苦しくなる。

 あまりにも悔しくて、あまりにも情けなくて。


「………ハヤテ君」


 人前では決して流せない涙を、夜な夜なシーツに染み込ませているのだ。

 今日もいつもと変わらない。
 『友達』のハードルを越えることの無い一日。
 彼の名前を呼ぶ度に、彼の顔が浮かぶ。


 好きといいたい。
 抱きしめてもらいたい。


 でもそれは、彼が私の気持ちに気付いてくれない限り叶わない夢、願望。
 そしてそれが叶う確率はかなり低いのだ。

 そう思っただけでまた涙は渇く事なくシーツに染みを作っていく。
 だから今だけは涙を流すことは躊躇わない。
 歯を食いしばって、声を殺して泣いて。
 涙を流し尽くして、泣き疲れて。


「………ダイスキ、なのぉ……!」


 彼の事を想いながら眠りについて、彼との幸せな夢を見る。



 …





 そして朝になり、また一日が始まり。



「おはようございます、ヒナギクさん」
「おはよう、ハヤテ君」



 私の気持ちに気付いてくださいと願いながら、私は今日もペルソナを被る。




End

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これも旧サイトの作品です。
ですが添削等をやっていたら、本来のものよりも短くなってしまいました(汗)
そんなほとんど新作に近くなってしまった作品ですが、どうぞ~♪





 七色の輝きを放つ虹。
 その一色一色がとても綺麗で、虹を見かけるとしばらく魅入っていた。



『虹』



 雨上がりの校舎はどこか違って見えた。
 地面にはいくつもの水溜りが伺え、そのいくつもの水面には虹が映っている。
 その虹を見ながら、傍らを歩く彼女は言った。

「綺麗よね~、虹って」
「そうですねぇ」

 水面に映る虹の本体は、夕方のオレンジ色の背景に七色の曲線を描いていて、美しい。
 僕は彼女の言葉に空返事をしつつ、彼女を横目で見た。

「………綺麗、です」

 虹ではなく、横目で見た彼女に対し、思わず言葉が零れた。

「本当に、綺麗です」

 オレンジの光に照らされた彼女は、虹をも凌駕するくらいに美しかったから。
 明るい桃色の髪も、白く整った顔も、意思の強い琥珀の瞳も、オレンジに染まっている。

「綺麗…」
「そうですね…」

 正直な話、彼女のほうがずっと美しかった。
 横目で見たにも拘らず、その姿に見とれてしまった僕は、彼女に相変わらず空返事。

「…なんか、どうでもいいかんじね?」

 話しかけられて気が付けば、不満そうな顔が、僕の顔を覗き込んでいた。
 彼女はどこか上の空な反応をした僕が不満だったらしい。
 その綺麗な琥珀の瞳はデフォルメで三角につりあがっている。

「な…!そ、そんなことないですよ…?」
「…ウソ」
「ホ、ホントですってば」

 むむむ、と唸る彼女が可愛くて、胸が高鳴る。
 彼女の顔が直視出来ずに目を横にそらしたら、あろうことか、彼女がずいっ、と身を乗り出してきた。

「な……っ。ナナナンデショウカ……!?」

 彼女と僕の顔のその距離、数センチ。
 僕の目に映る彼女の薄ピンクな唇。
 その唇が薄らと開き、言葉を発す。

 ―――ば か

 その直後に飛んできた、小さな痛み。

「痛っ!」

 手に痛みを感じたと思ったら、彼女の細い指がぎゅうっと僕の手の皮を抓っていた。

「私の話、聞いてなかった罰よ」

 ふふん、としてやったりな表情を浮かべた彼女に、僕は「敵わないなぁ」と苦笑。

「確かに、痛い罰ですね」
「これにこりたらちゃんと話聞きなさい」
「はは。わかってますよ」

 でもやられっ放しも面白くないので、最後の最後に反撃しようと、僕は思った。

「ヒナギクさん」
「ん? 何、ハヤテ君?」

 そんなわけで、立ち止まり振り返った彼女に、告げる。

「触れない虹よりも、こうして話したり、抱きしめたりできるヒナギクさんの方がずっと綺麗ですよ」
「――――――!!」

 彼女にとってもこれは不意打ちに違いなかっただろう。
 顔を真っ赤に染め上げた後、先ほどの表情から一転、悔しそうな表情が顔に表れている。

「………ズルイ」
「貴女が言いますか?」

 そんな彼女の言葉を笑って返答しながら、僕はその美しい彼女の手をとる。
 僕の言った言葉に偽りはない。
 本気で思ったからこその言葉だ。

「……帰りましょうか、虹よりも綺麗なヒナギクさん♪」

 悪戯っぽく言った言葉には、不機嫌そうな、けれどもどこか嬉しそうな返事が返ってきた。

「………バカ」


 その言葉に満足そうに僕は頷いて、僕は言う。


「バカでいいですよ。本心ですから」
「~~~~!!バカバカバカ!!!」


 その言葉にぼひゅっ、と顔を真っ赤にした彼女の手を引いて、虹がかかるオレンジの景色の中を、僕は再び歩き出した。



End

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俺が三年前、初めて書いたハヤヒナ小説。
関ヶ原の小説は、ここから始りました。
まぁ処女作だけあって文章も酷く、読んでいて「うわぁ…」と呟いてしまう程でした。
これも再編集して、UPしました。
といっても稚拙な文章には変わらないのですが(汗)
それではどうぞ~♪





『陽だまりの下で』




 太陽の光が暖かくなりはじめた昼休み。
 綾崎ハヤテは一人、学校の桜の木の下にいた。
 いつも一緒にいるナギは、読みたい漫画があるからということで学校を休んでいる。
 ハヤテは相変わらずの主人の様子にため息をしつつ一人、学校へきていた。

「…はぁ。お嬢様がいないと学校も何だか…」

 心地よい日差しに照らされながらハヤテは一人呟く。

「…張りがないというか…」

 執事になったばかりの頃はナギの行動に振り回されっぱなしだった(まぁそれは今でもかわらないが)ため、そのナギがいないとなんだか調子が狂う。

 ……毎度毎度は勘弁願いたいが。

 そうした矛盾を感じる中、昼食を食べ終えたハヤテは、特にやることがなく、かといって帰るわけにもいかないので、こうやって寝転んでいるわけなのである。

「いい天気だなぁ…」

 本日は晴天ナリ。
 見上げる空は雲一つない青空が広がっている。
 陰りのない澄み切った蒼と春の陽気は、嫌でも人を眠りの世界へと誘う。
 それは、ハヤテも例外ではなかった。

「こんないい天気…。お嬢様も部屋にいないで外で遊べばいいのに――」

 木陰に入り、空の蒼さと心地よい風を感じながら、ハヤテはゆっくりと瞼をとじる。

「(そう言えば授業……もう少しで始まる――)」

 数分後、気持ちの良さそうな寝息が聞こえてきた。



 …



「(――ん…?)」

 睡魔の世界から、ハヤテは頭に暖かいものを感じて目を覚ました。

「(あれ…?いつのまに寝ちゃったんだろう…?)」
 まだ覚醒に至らない脳を何とか動かし、ハヤテは重たい目蓋を僅かに開けた。

 すると。


「―――――っ!?」

 薄らと開けた眼前に飛び込んできた光景に、ハヤテは思わず息を呑んだ。

「(な、な、ななな……!?)」

 覚めきってない頭が一気に覚醒。
 その光景に、まだ自分は夢を見ているのでは、と錯覚してしまった。

「(な、何で……)」

 まぁ、それも仕方がないといえば仕方がなかった。
 何故なら。
 うっすらと目を開けたハヤテが見たのは、美しい桜色の髪と――、

「(ヒ、ヒナギクさんが…!?)」

 ――想いを寄せていた少女の顔だったからだ。

「(というか、もしかしてこの頭に当たる素晴らしい感触のものは―――!!)」

 何故想い人がここにいるのか、その疑問を遥かに凌駕してしまう状況に自身が置かれている事に、ハヤテは頭がパンクしそうになった。

 ハヤテはヒナギクに、いわゆる『膝枕』をされていた。

 予想することすらなかった状況に、ハヤテの心臓が高鳴る。

「(うわ…凄い柔らかい…)」

 頭から湯気が出そうだった。
 正直言って、理性が持つ自信がなかった。
 それでもハヤテは、何とか起きていることを悟られないように寝たふりを続けつつ、ヒナギクのひざ枕を堪能する。

 ……想い人が自ら膝を提供してくれているのだ。堪能せずにどうする。

 生まれたときから不幸がバッドステータスとして認識されないハヤテは、正に今幸せの絶頂だった。
 果報は寝て待て、というが、寝ていたら本当に願ってもない幸福が訪れた。

 好きな人から膝枕をしてもらえる、という幸福が。

 ――だが、次のヒナギクの行動は、そんなハヤテの幸せ指数を限界突破させることになる。

「(うわー、なんでこんな柔らかいんだろ…?ってか僕、幸せ過ぎて死んだりしな――んん!?)」

 ハヤテの思考を遮ったのは、唇に当たる柔らかなモノ。というか、この状況ではヒナギクの唇以外ありえない。

 なんてことはない。ヒナギクがハヤテにキスをしたのだ。

「(な…な…)」

 突然のヒナギクからのキスに、声を上げるわけもいかず、そして柔らかいヒナギクの唇の感触にハヤテはもう考える力を無くしていた。
 ただ、幸せ過ぎて死んでしまうことを割と本気で懸念していた。
 数秒…、数十秒過ぎて、ヒナギクはすでに起きているハヤテに気付くことなく唇を離した。
 唇を離したヒナギクの顔はこれ以上ないほど赤く、また幸せに満ち溢れているように見える。

「(ヒナギクさん、真っ赤だ…)」

 キスによる酸欠と嬉しさに意識が朦朧とする中、ハヤテはヒナギクの顔を見て思う。

 “ヒナギクさんはなぜ自分にキスをしたのか”

 と、いうか何故ここにいて、膝枕?
 想い人とキスをすることが、嬉しくないわけがないし、現に幸せの絶頂にいたといっても過言ではない。
 キスされた瞬間もそりゃあ幸せで飛び上がりそうだったし、頭も本当に『ぱ―――ん!』といきそうだった。
 だがそんな、知恵熱と別な熱に頭がどうにかなりそうだった半面、冷静な部分で考えてみるとどう考えても戸惑いを覚える。

 そもそも、自分達は恋人ではない。
 ヒナギクのことは好きであっても、ただの片思い。

 自分は借金執事で、彼女は才色兼備の生徒会長の関係だ。
 到底、いくら好きになろうが叶わない恋なのだと…そう、思っていた。
 思っていたからこそ、こんなに動揺してしまう。
 ヒナギクは自分を好きなのではないか、そんな確信のない期待を抱いてしまうから。

「(なんなんだ…)」

 期待したい、でも確信がない。
 そのもどかしさの波に揺らされ、ハヤテはもうどうしたらいいか分からなかった。
 何をすれば、何を言えばいいのか。

 キスの名残が、想いが、ハヤテの胸を燻らせる。
 春の日差しがより眩しくなる中、迷う彼を答えに導いたのは、結局は彼女だった。


「――好き」


 期待と戸惑いの葛藤の中、ハヤテの耳に飛び込んできた声。
 聴き間違えるはずが無い、彼女の声。

「―――!」

 ハヤテの身体を、何かが貫いた。
 ハヤテの頭を優しく地面に下ろし、ヒナギクは走り去っていく。
「…そういうことか…」
 残されたハヤテはぽつり、そう呟き、
「彼女も同じだったのか…」
 喜びに身体を震わせる。
 釣り合いなんか関係なかった。
 自分は彼女を想って、彼女も自分を想ってくれていた。
 ならば、自分のすべき事はもうわかっているんじゃないか。
 不安に足を踏みとどませていては、駄目なのだ。
 踏みとどめた一歩を、踏み出すこと。
 『想いを伝える』こと。

「―――よしっ!」


 ハヤテは頬にビンタを一発くらわせて立ち上がった。
 決意を抱き、目指す先は言うまでもない。こっそりと背中を押してくれた彼女の元へ。

 先走る気持ちを押さえ付け、ハヤテは一歩を踏み出した。
 その一歩は、しっかりと地を踏み、この陽だまりの下を、駆けて行く。


 少年と少女の物語が始るまで、あと少し。



End











ハヤテ「ところで、なんでヒナギクさんはあそこに?というかなんで膝枕?というか授業は?」

ヒナギク「……ハヤテ君が寝てたのを見かけて…気持ち良さそうで、起こしたらかわいそーかなーって思いながら寝顔見てたら、なんか授業とかどうでもよくなっちゃて…」

ハヤテ「……膝枕は?」

ヒナギク「昼休みにね、美希たちが『男の子の夢は膝枕だ』って言ってたの思い出して…」

ハヤテ「………キ、キスは?」

ヒナギク「…………さ、察しなさいよ、バカ……」

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どうも、関ヶ原です。
最近は忙しくて、あまり筆が進まず、仕方なしに携帯のメール画面に小説をチビチビ書いている生活を送っています。
早く落ち着きたいな…。
新作をお待ちの方、申し訳ありませんがもうしばらく辛抱を(汗)
今回は旧サイトからの転載です。
……といっても乗せる前にもう一度俺が編集し直したので、所々変わっている点も多々あります。
作品が出来るまではこういう風な形の更新となるかと。
それではどうぞ~♪





『弁当』




「ハヤテとヒナギクはいつ結婚するのだ?」
 淡々と続く日常の、天気の良い日であった。
 見た目はツンデレ、思考はニートな我らが三千院ナギ嬢が、ふとそんな事を言った。

「………はい?」
「ちょ…いきなり何言いだすの、ナギ!」
 突拍子な発言はいつもの事だが、あまりにダイレクトなその問いに、件の二人は顔が朱くなる。
 今日は平日、此処は白皇学院。
 ハヤテとヒナギクが付き合い出して約一年、つまりハヤテ達が高校三年生となったある日の、昼休みの会話である。
「というか、なんでいきなりそんな事を…?」
 頬の熱が引かぬまま、ハヤテは、持っていた弁当箱を置いてナギに呟く。
「気にするな。私がそんなこと言うのはハヤテも知っているだろ?」
「自覚あったんですか…?」
「自覚はあってもやめられないことも、この世にはあるのだ」
 ハヤテの呟きに答えたところで、ナギの視線は置かれたハヤテの弁当へと移る。
 ハヤテの弁当は、ヒナギクの手づくりだ。
 その弁当を見て、ナギはぽつり、言葉を放つ。
「……それにしても、豪華なんだな」
 何が、とは、当然弁当の中身。
 鮮やかに彩られた具材の数々は、料理音痴のナギから見てもとても手が込んでいるとわかるくらいだ。
 自分の弁当もマリアが作る事だけあってかなり豪華なのだが、なんというか、その…。
 ヒナギクの作る弁当からは、得体のしれないピンク色のオーラが放たれている(ような気がした)。
「ハヤテの弁当はいつもこうなのか?」
 ハヤテが自分の弁当を持たなくなってから大分経つのはわかっていたが、まさかここまで豪勢だとは思わなんだ。
 ナギの問いに、ハヤテは恥ずかしげに答えた。
「まぁ…、…その、毎日美味しくいただいています」
「…あ、ありがとうハヤテ君」
 ハヤテの言葉に嬉しそうにヒナギクは笑う。
「……バカップルめ」
 弁当を褒められてこんなに嬉しそうに出来るヒナギクを、まだナギは理解できなかった。
 というより、恥ずかしそうに、でもさりげなくいちゃつく二人がカンに障る。
「(何故私から振った会話で、固有結界(Unlimited-Hayahina-Works)発生しなければならないのだ)」
 固有結界というのは、簡単に言えば他者の介入を許さない、バカップルが作り出す二人だけのピンク色の空間である。
 それは周りの人間に、羨望と苛立ちと嫉妬を与える、恐ろしいものだ。
 当然の如く、近くにいるナギは大変面白くない。
 というわけで、恨みとからかいを存分に込めた言葉を、ナギは放った。
「…ふぅん。ヒナギクの花嫁修行は順調というわけか」
「なぁ―――っ!?」
 ナギの言葉に、ハヤテとの世界にいたヒナギクは現実に引き戻された。
 冒頭よろしく、顔は真っ赤。
「な…ななななな…」
 ヒナギクは言葉を発しようにも、恥ずかしさのあまり上手く口が開けないらしい。
 そんなヒナギクの顔に、「ざまぁみろ」と口元を引き上げながら、ナギは話を続ける。
「だって…、ご飯の上に桜田楽がハートマークで乗っている様な弁当、『愛妻弁当』と言わずに何と言うのだ?それに、こーんな豪勢なおかず、全て手作りだろ。私でもわかるぞ」
 持つ箸でハヤテの弁当から品を頂戴し、口に運んだ。
 途端、口の中に広がる旨味。
「……うむ。やはり、こんなに旨い弁当が愛妻弁当でないはずがない」
「あ、あうあうあう……」
 仕返しが成功したからか、満足そうに頷いて、ナギは二人を見た。
 ヒナギクは勿論、ハヤテも恥ずかしいようで俯いている。
「ナギ…。貴女わざと言ってるでしょ…」
「何の事なのだ?」

 上目で恨みがましく睨んでくるヒナギクに、ニッコリ笑ってナギは言う。

「新婚気分を味わわせてやろうとする私の気遣い、遠慮しないで受け取るがいい」
「やっぱりわざとじゃないの――――!!!」

 自分の一言にさらに真っ赤になった二人を見て、ナギはとうとう堪えられずに、大声で笑ったのだった。

「あははは!!独り身の前でイチャつきやがった罪、とくと味わうのだ!!」
「いつ私たちがそんなそぶり見せたのよ!?」
「胸に手をあてて考えろ!!バーカバーカ!!」
「バカって言ったほうがバカなんだから―――!!」
「お前は小学生か!」
「見た目も小学生に言われたくないわよ!!」
「なっ…!お前だって小学生並みの胸のくせに!!」
「―――っ!もう怒った!ナギ!そこに正座しなさい!!」
「誰がするかっ!!」


 少女たちの声が、昼下がりの学院に響き渡る。
 その少女たちを傍観していたハヤテは、まるで仲の良い姉妹の喧嘩を見ているような、ほのぼのとした気持ちで呟いた。

「………平和だなぁ…」

 弁当の話からいつの間にか身体的な事で言い合っている彼女たちも、彼女たちの声をBGMにしながら再び弁当を食べ始めたハヤテもまた、この日常に劣らず平和なのであるに違いない。
 暖かな日差しはそんな彼らを、世界を照らす。
 つまり、文字通り。


 世は常に事もなし。
 


End











ハヤテ「この話、タイトルとあまり関係ないですよね」
ヒナギク「あまりいいオチ考えられなかった結果でしょ」
ナギ「お前ら他人には厳しいのな」

拍手[1回]

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プロフィール
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関ヶ原
HP:
自己紹介:
ハヤヒナ小説とかイラスト書いてます。
皆様の暇つぶし程度の文章が今後も書ければいいなぁ。

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